2020年1月20日月曜日

2020年1月20日 日経 朝刊 1面 「違反」残業なお300万人 月80時間超 人手不足、管理職の負担増

「大企業の残業に罰則付き上限が導入された20194月以降も月80時間超の残業をしている人が推計で約300万人に上ることが総務省の調査で分かった。」という記事である。
「働き方改革の動きが広がる中で統計上の残業が減らない理由の一つは、これまで隠れていた残業が表に出てきたためだ。」という。「もう一つは部下の残業時間を抑えたしわ寄せも受ける形で、管理職の労働時間が高止まりしているためだ。」ともしている。
そして、「生産性の向上を伴わずに残業時間だけを減らすと、働き手の手取り収入が減り、それが消費を下押しする構図に日本経済がはまりかねない。労働時間を厳しく管理するだけでなく、収益を高める生産性向上と一体的に進め、その果実を働き手にも還元する好循環をつくることが課題になる。」と結んでいる。

まず、「サービス残業」が論外であり、これまで時間管理が厳格に行われてこなかったことに一番の問題がある。時間を売っている労働者に対する経営者による搾取であり、もっと厳格に管理し、不払賃金の時効期間を延長し、ペナルティも強化すべきであろう。
管理職の残業について、不思議に思うのは、管理職には残業手当はつかないのではないか。もちろん、過労死対策から、管理職についても時間管理は必要であろう。だが、一般の従業員から管理職の方に残業が移ることが問題視されるのには違和感がある。そもそもの残業は管理職が一般の従業員に命じるものではないのか。時間やコストの管理が強化されて減る残業は、もともと管理職が命じるべき残業の範疇に入るべきものではなかったのではないか。管理職には業務や人員を適正に管理する義務があり、自分の「残業」が増えるのは、その管理がずさんだからであろう。同情すべき余地があるとは思えない。
最後に、「生産性の向上」は、残業時間の減少の影響にとどまらずに、「働き手の手取り収入」が減ることにつながり得る。所定内賃金を減らすことはできなくても、賃金の上昇抑制要因には、なり得る。「効率を上げると賃金が減る」というパラドックス的な現象に対しては、個々の従業員の労働の価値を引き上げていくしかないが、非正規労働者の多用に見られるように、企業では、むしろ「使い捨て労働」が蔓延している。これを抑止するための一つの方策は、最低賃金の引き上げによる賃金水準の底上げだが、日経新聞は、これに対して、生産性に見合った賃金という考え方を損なうものとして、反対してきた。
賃金を生産性に見合ったものにすることを徹底するなら、生活を維持する糧は、賃金以外に求めるしかない。それが、ベーシック・インカムの考え方であるが、そこまで踏み込まずに、残業減の影響だけを論じているのが、この記事の限界と言えるであろう。

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