2020年4月14日火曜日

2020年4月14日 日経夕刊2面 ●(就活のリアル)コロナで企業の採用は 決して氷河期ではない

就活理論編担当の雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏による解説である。
「就活をめぐる風景が、ここ1~2カ月で一変した。言うまでもないが、コロナウイルス禍によるものだ」とし、「就活生、その親、そして大学関係者はあまりの急変に面食らっているのではないか。以下、本年の就活がどのようなものになっていくかを、ざっと話していきたい。」というものである。
その上で、「新卒採用というのは、企業にとってかなり大きな経営事項の一つだ。だから採用人数やそれにかかる予算、プロセス設計などは相当早くから決めている」が、今回のコロナウイルス禍が「重大なものだと本気になって認識したのは、1月20日に中国の習近平主席から公式な発表があってからだろう」とし、「抜本的な採用削減までは踏み込めない企業が多いと読む。各所に調整して採用計画を大幅に見直しができないからだ」と言う。
結論として、「採用数は減少するが、激減とまではいかないだろう。それはすなわち、今までのバブル的な採用売り手市場が終わっただけで、決して氷河期ではない。普通に戻るだけだと思っている。」としているのである。

海老原氏の考察には含蓄があり、「なるほど」と思うことが多いが、今回については、見立て違いであろう。コロナ・ショックの衝撃は、もはやリーマン・ショックの比ではなく、就職氷河期に突入するのは、まず間違いないと思う。
氏の考察の論拠は、日本企業の採用計画の硬直性ということであるが、平時ならばともかく、この非常時に採用計画を見直さない企業は、まずあり得ない。今春に入社予定であった人についてさえ、内定取消や自宅待機が続発している状況である。
また、日本企業の行動の中に、「横並び」がある。本来、企業の採用計画は、自社の業務遂行上の必要性を最優先して決定すべきものであるが、常に他社の動向を窺っているのが、日本企業の体質である。コロナ・ショックによって業績急降下の業界や企業からは、当然に、採用計画の大幅見直しが出て来るであろう。そのことは、必ず他社にも飛び火する。これは、オイル・ショックやリーマン・ショックの際にも発生した歴史的状況であり、今回が例外である兆しは窺われない。こうした風土は、トイレットペーパーの買い占め騒動に見られるような日本人気質にも根差している面があるように思われる。
そもそも「空前の人手不足」ということで発生していた昨年度までの売り手市場にも、同様の横並び意識が関わっていたものと思われる。海老原氏は、この記事でも言及している下記の4ケ月前の記事で「遠からず不況が来る可能性がある」と警告し、その通りになったわけだが、氏の見立てが今回は違っていると思うのは、氏の想定していた「不況」が経済サイクルの循環の中のものであったのに対し、今回のコロナ・ショックは、それこそ百年に1回程度の「大恐慌」に当たるものである点である。これを、各国首脳は、「戦争」とまで表現し、安倍首相も「第三次世界大戦」と述べたという。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/01/20200128NY02.html
就活に臨む学生は、絶対に油断してはならない。世界中の万人にとって、このコロナ・ショックは、未曾有の危機なのである。