2020年1月18日土曜日

2020年1月18日 日経 朝刊 11面 NTT、非正規・正社員の手当平等に 労組はベア2%要求へ

「NTTは4月から非正規社員の手当を正社員と同じ基準で支給する」という記事である。「4月から深夜などに勤務シフトを変更した際に支給している手当や、災害時の復旧作業の手当などを全組合員に支給する。」「このほか19年7月から順次、非正規社員も慶弔休暇などを取得できるようにした。」というもである。

同じ労働者である以上、「同一労働同一賃金」は当然の事である。記事の深夜手当や災害復旧作業手当、あるいは慶弔休暇などは、当たり前の事で、これまで支払われてこなかったことに呆れる。しかし、そうした差別が、組合が強いと言われるNTTでも、当然の労使慣行だったわけである。
日本は、国際労働機関(ILO)の8つの基本労働条約のうち、「強制労働の廃止」(105号条約)と「雇用と職業における差別待遇の禁止」(111号)の2条約に批准していない。111号条約が雇用に関する差月待遇を禁止しているのである。
口では従業員重視と言う経営者は少なくないが、このお粗末な現状が、日本の現実である。
2020年1月18日 日経 朝刊 3面 (きょうのことば)生産年齢人口 経済成長・社会保障支える

「生産年齢人口」とは、「生産活動を中心となって支える人口」のことで、「経済協力開発機構(OECD)は15~64歳の人口と定義している」ものである。日本では、少子化が問題シされているが、「国連の資料によると、世界の生産年齢人口は2020年時点で50億8000万人。新興国を中心とする人口増で、50年には61億3000万人と20%増える見通しだ。」ということである。
記事では、人口が減少している日本において、「生産活動を持続して社会保障制度も維持するためには、女性や高齢者の社会進出が求められるほか、外国人労働者の受け入れなども課題となる。ロボット技術などを活用して作業を自動化したり、負担を軽減したりする取り組みも始まっている。」としている。

生産年齢人口が増加することで経済成長が押し上げられる効果は、「人口ボーナス」と呼ばれている。一方、減少することによる逆効果は、「人口オーナス」(onus、重荷)と呼ばれている。ただ、人口が増えれば経済成長率が高くなり、減れば低くなるというような単純なものではない。貧しい国での人口増の負担は、口減らしという悲劇につながることもある。
先進国が人口減少となっても、世界全体での人口は増加する見込みである。1972年にローマクラブが発表した報告書『成長の限界』は、人口増加率と経済成長率が持続すれば,食糧不足,資源の枯渇,汚染の増大によって地球と人類は 100年以内,おそらく 50年以内に成長の限界に達し,人口と工業力の制御不可能な減少という破滅的結果が発生せざるをえないと警告した。その警告は、環境問題などに見られるように、現実の危機となっている。
経済成長と人類の存続の問題は、グレタさんが危機感をもって訴えたもので、各国が自国第一主義をとれば破滅的結果になることを警告したものである。だが、現状、地球の未来は、明るくない。
2020年1月18日 日経 朝刊 1面 中国経済、高齢化の影 昨年6.1%成長に減速 迫る「団塊」退職、しぼむ内需
2020年1月18日 日経 朝刊 2面 (社説)中国は「国進民退」改め安定成長めざせ

「中国経済に少子高齢化の影が忍び寄ってきた」ことに関する記事である。「2019年の実質国内総生産(GDP)成長率は6.1%にとどまり、18年から0.5ポイントも縮小した。米国との貿易戦争が主因だが、生産年齢人口の減少による個人消費の弱含みも無視できない。」としている。
その背景には、「中国では1564歳の生産年齢人口は13年の10億人をピークに減り始めた。一人っ子政策で出産を抑えたため、総人口に占める生産年齢人口の比率は10年に75%まで上昇し、日本(ピーク時に70%)よりも高い。」という点がある。また、「60歳定年が中国では厳格に実施されており、仮に1559歳を生産年齢人口とすると22年からは毎年約1千万人(約1%)ずつ減る。」という状況もあるようである。
「未富先老(豊かになる前に老いる)」という言葉が現実問題となっており、「19年には中国社会科学院が「公的年金の積立金が35年に底をつく」との試算を公表した。」とのことである。

一方の社説は、この状況に対して、「中国が発表する公式統計には常に水増し疑惑が付きまとってきた」として、実態は、さらに厳しいのではないかと推測し、「国有企業の優遇と民業の厳しさを意味する「国進民退」」を改めるように求めている。

世界経済を牽引してきたとされる中国だが、その内実は、記事のように盤石なものではない。一方、「一人っ子政策」が批判されるが、国が貧しい状態の中では、養える国民の数にも限度がある。日本でも、太平洋戦争時の「産めよ、増やせよ」から、戦後は一転して「産児制限」が実施されることになった。国の経済力と養える国民の関係の例は、幕末のペリー来航の際に、当時の日本で生じていた赤子の間引きや姥捨状況は、開国して貿易で国を豊かにすれば解消するのではないかとも言われていた。当時の国民数は3千万人程度とされているが、1億円にも膨れ上がった状況からすると、一定の真実かもしれない。
ともあれ、急成長に伴う歪みは、日本も経験したことである。少子高齢化の重荷に、どのように日本が対処するのかは、世界中が注目している。その対処が中国にも参考になるようであれば、それは日本の世界的貢献の一つとなるであろう。