2020年1月21日火曜日

2020年1月21日 日経夕刊2面 (就活のリアル )内定辞退は礼を尽くして メールだけでは軽すぎる

上田晶美氏による「就活実務編」です。自身が開発した「内定辞退セット」に、まず言及している。
内定辞退の際には、「自分なりに内定をもらったありがたみをよく考えて、それを断る重みを肝に銘じ、礼を尽くして辞退すればよい。それにはメールだけでは軽すぎる。」とし、「社会人への第一歩としてメールではなく手紙を出そう。」というのである。

この考え方は結構であるが、そうしなければならないとは思えない。「メールもスルー」というのは、入社の意思が確認できないから論外である(そもそも、こんな学生に内定を出したのが間違い)だが、普段は書いたこともない手紙を学生に書かせようとするのは、過剰な対応ではないか。
企業の方だって、学生を不採用にする時には、「今後のご活躍をお祈りします」という「お祈りメール」で済ませる時代である。学生の方も、メールで何ら差支えないのではないか。
「電話に出ない」というのは、当たり前であって、私だって出ない。電話であれこれと翻意を促すのは、キャッチセールスみたいなものだが、実のところ、内定辞退による自分の成績や追加の負担を気にする人事担当者の思惑によるものであることも多いだろう。仮に、翻意したところで、入社後にネチネチいじめられるリスクもある。
要するに、今の時代、メールでよいと思うが、その文面は注意して書き、内定をもらった感謝と、自分なりに他の道に進む決意を丁寧に伝えればよいであろう。それに対して、「分かりました。頑張って下さい。」と返ってこないような企業なら、内定辞退は大正解であろう。
2020年1月21日 日経 朝刊 9面 損保ジャパン系証券、企業型DCにロボアド
2020年1月10日 日経 朝刊 2面 "企業型確定拠出年金、老後資金に大きな差

高コスト投信なお 商品見直し進まず"

「損保ジャパン日本興亜DC証券は企業型の確定拠出年金(DC)でロボットアドバイザーを導入する」という記事である。「企業型DCの加入者がアプリ上で4項目の質問に回答すると、リスク許容度に応じて資産配分や運用商品の組み合わせを提示する。」という。

一方、2020年1月10日の記事は、「選べる商品は企業ごとに格差が激しく、老後資金に大きな影響を及ぼしかねない。」というもので、「企業型で高コスト投信が除外されないまま加入者が買い続けている」要因の一つとして、「運用商品の選定にかかわる運営管理機関(運管)の姿勢」をあげている。「大企業には低コストの商品を提示するが、力の弱い中小企業には出し惜しみする」(中堅上場企業)との指摘が多かった、とのことである。また、県立広島大学の村上恵子教授は「取引先金融機関の商品に偏る傾向もみられ、加入者の利益が最重要視されていない可能性を感じた。今も変わらないようだ」と指摘しているとのことである。

運用商品の選択に悩む加入者は多いと思うので、当然出てくるサービスではある。ただし、運営管理機関は、特定の運用商品の推奨や排除は禁止されている。その点はどうなのかということが気になる。
また、そもそも、2020年1月10日の記事のように、運営管理機関自体が金融機関であるから、自社系列の投資信託などを優先提示しているのではないかという危惧もある。制度創設時には、運用商品を提供する金融機関は運営管理機関から外すべきであるとの声も上がったが、そうなると運営管理機関のなり手がなくなるのではないかとの意見が出て、容認されることとなった経緯がある。ロボットやAIのアドバイスといっても、基本的に仕組みが透明であるわけではなく、人間の恣意が入る可能性もあるから、注意する必要があるだろう。
2020年1月21日 朝日 朝刊 21面 年金のギモン、学生が考えた もらえる額は? 共働きや単身も試算

この記事は、2019年12月7日に開催された第4回 ユース年金学会の模様を紹介したものである。
http://www.pension-academy.jp/youth/
ユース年金学会は、私も所属している日本年金学会が「次代を担う若者たちが年金についてどのように考え、どのような方策を望むか生の声を聴く貴重な機会」として開催しているもので、提唱した慶応大の駒村康平教授が記事でおっしゃっておられるように、「未来に利害関係を持つ若い世代が双方向で考えることが大事」である。
記事で取り上げられているのは2チームであるが、発表したのは5チームである。今年は、ペーパーレス化ということで、発表要旨だけでなく、発表スライドも掲載されているので、関心のあるものには、是非目を通していただきたい。
個人的には、記事にもある愛知県立大の『政府は公的年金の財政方式をどのように説明してきたのか ―白書からの考察』が、一番興味深かった。
2020年1月21日 朝日 朝刊 13面 (インタビュー)ラディカルにいこう

米国の政治経済学者グレン・ワイル氏に対するインタビュー記事である。「私有財産も、1人1票も、廃止しよう」として、「34歳の学者がその前提や常識に疑問を突きつけ、世界で論争を呼んでいる。」という。その主張の根底にあるのは、「技術の進歩に社会制度が追いついていない。デジタル時代に見合う制度に革新すべきです」というものである。
そのための方策の一つとして、「私有財産の廃止」を掲げる。「私有財産は独占」として、「企業や個人はその資産の利用権を市場で売り買いする」ものとしている。「共有資産の利用料として集めた税金を、ベーシックインカムなどの形で全員に還元することでさらに平等になる。」というのである。
また、政治投票における「1人1票」も問題とし、「有権者に一定のポイントを配り、それを元手に票を『買う』仕組み」を提唱している。「関心や切実さに応じて、特定の議題に複数の票を投じられるようにします。」というのである。
その他、「一般市民が移民の身元を引き受けて利益を得る仕組み」も提唱しているそうであるが、「ラディカルな構想で社会の目指すべき姿を示し、人々を触発することが欠かせません」というのである。

氏の著書を読んだことはないし、そもそも氏の存在を知らなかったので、適切な論評ができる気はしないが、記事から感じた事を述べてみたい。
唐突過激に見える「私有財産の廃止」は、よく考えてみると興味深い。「利用料」は、問題となっている財産への課税である。世界的に、所得に対する課税が行き詰まり、代替策として消費に対する課税が強化されてきているが、財産に対する課税を強化しないと公平にはならないが、一国内で対応することは難しくなっている。利用料」は、財産の保有者ではなく、利用者に課税するものであるから、この難点を解決する可能性がある。また、金持ちによる子孫への財産移転による富の偏在、貧困の連鎖の抑止につながる可能性もある。
「1人1票」ではなく、複数ポイントの付与も興味深い発想だが、かえって特定の利権のための集ポイント運動が激化して混乱しないのかという気もする。
何より大事なのは、既存の仕組みが行き詰まっているのだから、一から考え直してみようという姿勢だろう。過去のしがらみのない若者だからできることであり、未来を変革して切り開いてきたのは、いつも若者なのだから、耳を傾ける必要があろう。