2020年1月21日火曜日

2020年1月21日 朝日 朝刊 13面 (インタビュー)ラディカルにいこう

米国の政治経済学者グレン・ワイル氏に対するインタビュー記事である。「私有財産も、1人1票も、廃止しよう」として、「34歳の学者がその前提や常識に疑問を突きつけ、世界で論争を呼んでいる。」という。その主張の根底にあるのは、「技術の進歩に社会制度が追いついていない。デジタル時代に見合う制度に革新すべきです」というものである。
そのための方策の一つとして、「私有財産の廃止」を掲げる。「私有財産は独占」として、「企業や個人はその資産の利用権を市場で売り買いする」ものとしている。「共有資産の利用料として集めた税金を、ベーシックインカムなどの形で全員に還元することでさらに平等になる。」というのである。
また、政治投票における「1人1票」も問題とし、「有権者に一定のポイントを配り、それを元手に票を『買う』仕組み」を提唱している。「関心や切実さに応じて、特定の議題に複数の票を投じられるようにします。」というのである。
その他、「一般市民が移民の身元を引き受けて利益を得る仕組み」も提唱しているそうであるが、「ラディカルな構想で社会の目指すべき姿を示し、人々を触発することが欠かせません」というのである。

氏の著書を読んだことはないし、そもそも氏の存在を知らなかったので、適切な論評ができる気はしないが、記事から感じた事を述べてみたい。
唐突過激に見える「私有財産の廃止」は、よく考えてみると興味深い。「利用料」は、問題となっている財産への課税である。世界的に、所得に対する課税が行き詰まり、代替策として消費に対する課税が強化されてきているが、財産に対する課税を強化しないと公平にはならないが、一国内で対応することは難しくなっている。利用料」は、財産の保有者ではなく、利用者に課税するものであるから、この難点を解決する可能性がある。また、金持ちによる子孫への財産移転による富の偏在、貧困の連鎖の抑止につながる可能性もある。
「1人1票」ではなく、複数ポイントの付与も興味深い発想だが、かえって特定の利権のための集ポイント運動が激化して混乱しないのかという気もする。
何より大事なのは、既存の仕組みが行き詰まっているのだから、一から考え直してみようという姿勢だろう。過去のしがらみのない若者だからできることであり、未来を変革して切り開いてきたのは、いつも若者なのだから、耳を傾ける必要があろう。

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