2020年3月18日水曜日

2020年3月18日 日経夕刊6面 障害年金、上乗せの条件は? 厚年の加入中に初診日

質疑応答形式の記事で、「50代会社員で4月からは自営業となります。体調に違和感があり、退職したら病院で診てもらおうと考えていましたが、知人から「それでは年金が減るかもしれない」と言われました。どういうことでしょうか。」という質問に、社会保険労務士の望月厚子氏が回答するという形のものである。
まず、「公的年金は定年退職後などの生活を支える「老齢年金」のほかに、公的年金へ加入中などに重い病気やケガに見舞われるリスクに対応する「障害年金」もある」とし、「障害年金の額は原因となる病気などについて初めて医師の診察を受けた日、「初診日」にどの公的年金に入っていたかで違いが生じる」ことを述べている。
そして、「初診日が会社員として厚生年金に加入している期間であれば、年金請求は退職後でも審査に通れば、障害厚生年金が障害基礎年金に上乗せされます。一方、退職して自営業となり、初診日が国民年金の加入者に変わった後だと障害基礎年金のみとなる」としている。
金額等については、「障害基礎年金の額は障害が最も重い1級は約98万円で、年齢条件などを満たす子がいれば約22万円などの加算があります。障害厚生年金は1級なら厚生年金の報酬比例部分の1.25倍となり、条件を満たす配偶者がいれば加給年金が加算されます。これが障害基礎年金と合計されるので支給額が増えます。障害厚生年金は障害が比較的軽い3級でも年金があるうえ、3級よりさらに軽い場合も一時金の制度があります。障害基礎年金は1.2級の年金のみですから、支給の可能性も広がります。」としている。
また、「障害年金の対象の病気などには、がんや認知症なども含まれます。それらの病名だけで障害認定されるわけではなく、国が定めた基準に該当する障害状態にあるかが審査されますが、一般に思われるより対象の幅は広いといえます。」とし、「障害年金の制度をきちんと知り、健康不安や自覚症状があるなら在職中の早い時期に診察を受けるほうが安心でしょう。」と結んでいる。

制度の概要については記事の通りであるが、より詳しくは、次で確認するとよい。
https://www.nenkin.go.jp/pamphlet/kyufu.files/LK03-2.pdf
https://www.nenkin.go.jp/pamphlet/kyufu.files/04.pdf
同じ障害年金でも、障害基礎年金と障害厚生年金とでは、保護の考え方に違いがある。障害基礎年金は、「国民年金制度は、日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」(国民年金法第1条)にあるように、国民全体を保護するものであるが、障害厚生年金は、「この法律は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」(厚生年金保険法第1条)となっており、労働者(及びその遺族)を保護するものとなっている。
その違いの表れとして、障害厚生年金においては、記事にあるように、障害の程度が軽い「3級でも年金があるうえ、3級よりさらに軽い場合も一時金の制度」があるわけである。
ただ、1985年の基礎年金創設によって、厚生年金は基礎年金の上乗せの制度とされている。また、働き方の多様化により、労働契約の形をとらずに働いている人も増えている。公的年金において、「国民」と「労働者」とを、どのように区分して取り扱うのかは、今後の大きな課題と考えられる。
なお、障害年金受給者についての最新の資料は次で、情報公開の頻度には問題があると思われる。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12501000-Nenkinkyoku-Soumuka/0000075345.pdf
米国のコロナ・ショックに対する財政対応を、記事で見てみよう。
2020年3月18日 朝日夕刊1面 米、1兆ドル財政出動案 財務長官「米国人に直ちに小切手送付を検討」
2020年3月18日 日経夕刊1面 米、1兆ドル経済対策案 現金給付や給与税免除
2020年3月19日 朝日朝刊3面 米、財政出動1兆ドル検討 危機対応、リーマン規模
2020年3月19日 日経朝刊1面 米、1人1000ドル給付も 1兆ドル経済対策案 与野党、市場にらみ攻防
2020年3月19日 日経朝刊3面 米、短期決戦の巨額経済対策 「雇用維持が先」の声
2020年3月19日 日経夕刊1面 米、現金給付5000億ドル 経済対策案 企業支援にも5000億ドル
2020年3月21日 朝日朝刊4面 1人1200ドル給付 中小に3000億ドル 米、経済対策原案
2020年3月21日 日経朝刊3面 米、現金給付1人1200ドル 共和案
2020年3月24日 日経朝刊2面 米2兆ドル対策、協議難航 大統領選へ駆け引き
2020年3月26日 日経朝刊3面 米与野党、2兆ドル対策合意 過去最大 企業支援に9000億ドル
2020年3月28日 日経朝刊3面 米、企業・個人に安全網 2兆ドル経済対策成立へ
2020年3月28日 朝日夕刊6面 米、2兆ドル超対策成立 史上最大、経済下支え 新型コロナ
2020年3月28日 日経夕刊1面 米2兆ドル経済対策成立 新型コロナ 下院議長「追加策を検討」
2020年3月29日 朝日朝刊8面 2兆ドル超経済対策、成立 米国、史上最大の財政出動 新型コロナ

まず、3月18日の夕刊1面で、朝日・日経ともに、米トランプ政権と米議会が17日(現地)に「個人へ現金を直接配る措置を含め、1兆ドル(約107兆円)規模を視野に入れた大型の財政出動の検討に入った」ことを伝えている。
続く3月19日の報道では、「トランプ大統領は1人当たり1000ドルを目安に3月中にも現金給付する案を主張、給与税の減免も検討する」(日経朝刊1面)、「ムニューシン財務長官が「米国人に直ちに小切手を送ることを検討する」とし、2週間以内に給付したいとの意向を表明」(朝日朝刊3面)を伝えている。ただし、「野党・民主党には休業対策など雇用安全網の充実を求める声も強く、与野党協議では政策の優先順位が問われそうだ」(日経朝刊3面)とし、また、「野党・民主党は現金給付から高所得層を除外するよう求めており、対象や規模を巡って政権と与野党の調整が続いている」(日経夕刊1面)としている。
さらに、3月21日の報道では、共和党原案「年間所得7万5千ドル(約840万円)未満の米国民1人当たり1200ドルの現金給付」(朝日朝刊4面、日経朝刊3面)が報じられている。その後の報道では、「野党・民主党が企業の救済策に反対し、採決が遅れる可能性」(日経3月24日朝刊2面)が指摘されていたが、「トランプ米政権と与野党の議会指導部は25日未明に最終合意」(日経3月26日朝刊3面)と伝えられている。
そして3月28日には、「法案成立の見通し」(日経朝刊1面)から、法案成立(朝日夕刊6面、日経夕刊1面)の報道に到っている。
最後の朝日3月29日朝刊8面では、「米国で27日、史上最大規模の2兆ドル(約220兆円)超の経済対策が決まった」とし、「我が国への戦時レベルの投資だ」(共和党の上院トップ、マコネル院内総務)との認識の下で、経済対策として、「家族4人の平均的世帯当たり計3400ドルの給付や、雇用支援のための中小企業向け融資(予算規模約3500億ドル)、失業給付の拡充(2500億ドル)、航空産業などの産業支援(5千億ドル)などが柱」の対応が行われたとしている。

まさに、怒涛の10日間であるが、さすがに米国の決断は早いと思わざるを得ない。翻って我が国では、4月7日の緊急事態宣言後ですらも、自粛要請を求める施設の調整に手間取り、東京都による緊急事態措置の発表は4月10日にずれ込んだ。新型コロナは時間との闘いとされている中での時間の浪費であるが、国側には、施設に対する自粛要請は2週間後という意見が強かったそうだから、驚くというより呆然とする。この危機感のなさは、一体何なのだろう。有事立法とか、憲法を踏みにじる対応をしておきながら、最も肝心な国民の命を守るという責務への自覚が、まるで感じられない。
話を米国に戻すと、確かにスピーディな対応であるが、このコロナ・ショックでは、米国の現行制度の脆弱さが露呈している。一つは、言うまでもなく、公的医療の不備である。トランプ政権では、新型コロナ検査を無償としたが、感染していた場合、適切な医療が受けられる保証は、どこにもない。高額な民間保険に入っていなければどうにもならないし、入っていても治療費は高額にのぼるとされている。シカゴなどでは黒人の死亡率は白人の5倍とのことだが、これは医療アクセス格差を反映しているのであろう。
もう一つは、早急な現金給付が行われた裏側には、失業給付が貧弱な面があるようである。このことは、上記の記事の中でも、野党・民主党の「休業対策など雇用安全網の充実を求める声」にも現れている。この現金給付は、まるで「ベーシック・インカム」みたいとする論評があったが、その裏には、欧州と比べて貧弱な雇用安全網があるわけである。
最後に、所得制限について触れておきたい。「金持ちに配る必要があるのか」という反発は分かる。しかし、このような緊急対策では、何よりもスピード感が求められる。いちいち所得審査をしていたのでは、対応が遅れ、手遅れになりかねない。金持ちであろうと、住民登録を元に、一律の給付を行えばよいのでないか。そして、後で年間所得に対する課税で対応すればよいのではないか。日本でも所得制限の話があるが、馬鹿げている。バラマキだと声高に非難する人には、アホな事ばかり言っていないで知恵を出せ、と言いたいところである。