2020年4月28日火曜日

2020年4月28日 日経夕刊2面 ●(就活のリアル) 就活環境、来年は悪化の恐れ 「氷河期」ほどは落ち込まず

就活理論編で、雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏による論説である。
「来年の就活に関しては今年より悪化するものになるはずだ。それは、リーマン・ショック後の状況に似るだろう。」としながらも、「どの数字を見ても、リーマン後は90年代から2000年の氷河期世代ほどは落ち込んでいないのだ。」としている。
そして、「その理由はいくつか挙げられる」とし、「30~50歳世代の採用がそれほど多くないので、余剰人員が少ない」「55~65歳世代の採用が多かったので、定年退職者が多い」「氷河期の採用絞り込みがその後の企業体力低下につながったことへの反省がある」などを挙げている。
そして、「体感的には好況期はいくらでも有名企業に入れて、不況になると就職自体が難しいと感じるかもしれないが、それは間違いだ。好況期には確かに、自分の実力よりも一つ格上の企業に入れる。そして不況期には志望ランクを一つ下げねばならない。ただそれは、いずれも通常期よりも多少上下するだけだ。天国から地獄に急降下するわけではない。そこを忘れないでほしい。」と結んでいる。

この論説は、その前の2020年4月14日付日経夕刊2面の「(就活のリアル)コロナで企業の採用は 決して氷河期ではない」の注意事項を述べたというより、率直に言えば、意見変更を図ったものと思われる。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/04/20200414NY02.html
すなわち、「決して氷河期ではない」として学生に安心感を与えるには、ほど遠い状況であることを踏まえて、厳しい状況であることを知らしめようとしたものと思われる。
それでも、2000年の氷河期世代ほどではなく、「天国から地獄に急降下するわけではない」としているわけだが、学生相手であることに鑑みれば、いささか甘過ぎる注意喚起ではないかと思われる。
就活をする学生にとっては、自分達が生まれたばかりの2000年と比較されても、まったく実感が湧かないであろう。2007年のリーマンショックにしたところで、かろうじて先輩などからの体験談が耳に入るかどうかということであろう。
つまり、学生の比較対象は、ほんの数年前の就活天国だった時であろう。だとすれば、間違いなく、「天国から地獄に急降下する」ことになる。
学生にとっては、昨年までの就活スケジュールや先輩の体験談が、まったく役に立たない状況である。この状況で、焦ったり浮足立ってみても、まったく益はないわけであるから、海老原氏には、それを落ち着かせようとする意図はあるのだろうと思う。
しかし、就活戦線は、間違いなく、熾烈化する。それに備える一番の対策は、WEB面接のノウハウの習得なども大事だが、本業である学業関連の学習を進めることであろう。それには、大学が準備する講義だけでなく、就活で必要となる筆記試験対策の学習も含まれる。
採用数を厳選する時、客観的な指標の一つとなるのが、筆記試験の成績である。だから、公務員試験で筆記試験の成績の比重が高いわけだが、民間企業でも、その傾向が強くなることが考えられる。たとえ、結果的に筆記試験の重みが少なかったとしても、学習したことが無になることはない。「自身の成長のための努力」、実は、それこそが最も人生で重要なことなのではないか。