2020年1月27日月曜日

2020年1月27日 日経朝刊19面 男女平等、日本は過去最低 上野千鶴子氏に聞く

「世界経済フォーラムが2019年末に発表したジェンダー・ギャップ指数で、日本は153カ国中、過去最低の121位となった。下落する一方の日本に今、何が必要なのか。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)の上野千鶴子理事長に話を聞いた。」というインタビュー記事である。
まず、ランキングが2018年の110位から大きく下がったことについて、理事長は、「悪化したのではなく、変化しなかったのです。諸外国が大きく男女平等を推進している間、日本は何もしなかった。だから結果として順位を下げたのです」とし、例として、「国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)が日本に出す勧告」で、「選択的夫婦別姓などを早くから指摘されているのに何もしない。」ことも上げている。
次に、「女性活躍推進法などの法整備は進みました。」という指摘に対しては、「罰則規定がないので実効性がありません。…法律を作った効果はゼロといえます」と「罰則規定が必要」とし、「こんな骨抜きの法律に対してメディアも鈍感すぎます」と皮肉っている。
続いて、「2020年に女性管理職を30%にするという目標も達成は難しそう」という点については、「最初に聞いたときはなぜ50%じゃないの?と思いました。」「他の国は強制力のあるクオータ制を導入して社会を変えてきました。」のに、「日本では『クオータ制は日本の風土に合わない』と否定的」だが、その「言葉が意味するのは『合理的な説明ができない』ということです。」としている。
また、「この状況から脱するには何が必要か」については、「家事や育児など女性が外で働くことを妨げている負担をアウトソーシングする必要があります」と明解な答えである。
そして、「女性の側の抵抗も根強いのでは」との疑問には、「インフラが変われば、意識はあっという間に変わります。それを痛感したのは介護保険。」で、「導入時には『自宅に他人を入れるなんてとんでもない』と否定的」だったのが様変わりとしている。また、「育児を家事労働者に委託」するには、「北欧のように公共サービスにするか、米国のように市場化するか。日本は後者に舵(かじ)を切り始めています。実現には安い労働力の確保が必要ですし、階層格差が前提です」としている。
次いで、「育児休業の期間を延ばすなどの施策」に対しては、「育児休業ははあまりいい制度とは思いません。」とし、「乳児と24時間向き合う"べったり休業"」になるので、「父親の取得を義務化すべき」とし、「スウェーデンも導入時には反対する男性もいたけれど、やったら大歓迎でした」としている。
最後の「働く女性は3000万人を超えましたが、6割が非正規雇用です。男女の賃金格差も大きな問題です。」との指摘には、「シンプルな解決方法があります。最低賃金を全国一律で1500円にすること。年2000時間で300万円の収入になります。この年収額は夫婦の関係を変える分岐点です。パートナーの年収が300万円を超えると生活水準が変わり、お互い相手が辞めないように、という力学が働きます」と解説策を示している

以上のインタビュー内容を踏まえて、取材に当たった女性面編集長の中村奈都子氏と南優子氏は、「海外は同じ問題を解決するため、過去にあらゆる方法をとってきた。成功例はいくつもあるから、後発の日本は外国の成功・失敗に学べばいい」と上野氏は話すが、「風土とはなにかを明らかにし、どうしたいのか議論する場を広げたい。」と結んでいる。

報道対象の報告書は、「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report)2020」である。地域・国別のランキングは表3(26・26ページ)に掲載されており、日本については、31ページに概要が、201・202ページに詳細が掲載されている。
その内容については、記事でも記述しており、「ランキングは4つの分野で構成される。日本は教育(91位)、健康(40位)に対して経済(115位)、政治(144位)が著しく劣るのが特徴だ。さらに詳しく見ると、政治における「閣僚の男女比」(139位)と「国会議員の男女比」(135位)、経済分野での「管理職の男女比」(131位)に行き着く。改善ポイントははっきりしている。」ということになっている。
ジェンダー研究の第一人者である上野氏の指摘は的確かつ明確で、このような人を女性問題担当大臣にすれば、話は一挙に進むような気がする。だが、「政権与党に本気で変える気がない」のだから、どうしようもないとも思う。
女性面編集長らは、「風土」の議論が必要なようなコメントをしているが、そもそも、反対には合理的理由がないのであるから、それは反対論者の思う壺であろう。ちゃんと進める気があるのなら、分野ごとに並べてみて、日本のランキングが低い部分について、各国の施策を並べ、日本でできている点・いない点を整理してみればよい。
東アジアでの日本の順位は18位/20国で、中国や韓国にも抜かれて実質ビリとも言える状況である。この状況で、「風土」などと言い出せば、世界中の笑い者だろう。