2020年2月13日 日経夕刊7面 (十字路)景気後退下の人手不足
りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員による論説である。「日本経済に新たな現象が起きようとしている。景気後退下の人手不足である。」が、「一般的に企業の業況が悪化すれば、人手不足はある程度解消するが、今の日本にその経験則は当てはまらない。結果として、景気の後退と人手不足が同時進行するという、過去に経験のない局面に突入する。」という。
それは、「近年の人手不足が景気とは別要素の影響を受けているからだろう。団塊の世代による本格リタイアが始まったのが2012年。新卒者の減少も重なり、この頃から企業の人手不足が一気に深刻化した。」というのである。
そして、「景気後退下では企業の余裕がなくなり、人手不足に対しても打つ手が限られる。おのずと求人を断念する企業や、設備投資による省人化を見送る企業が増えるはずだ。」と続けている。
そして、「業績の悪化に人繰りの悪化も加われば、やはり倒産の増加が連想される。」とし、「真っ先に中小企業の倒産や廃業の急増に警戒が必要となる。特に、4月を境にした情勢の変化には注意すべきだ。」と結んでいる。
景気後退の中で、特に中小企業の倒産や廃業には注意する必要があるが、それ以外の特殊性の話は、腑に落ちない。「企業の業況が悪化すれば、人手不足はある程度解消する」のが今回は当てはまらないというロジックに、説得性があるように思えない。
「近年の人手不足が景気とは別要素の影響を受けているからだ」という認識には、違和感がある。人手不足の最大の要因は、やはり好景気ではないのか。
「新卒者の減少」は、少子高齢化の進展の中で、ずっと続いている。それでも、2007年のリーマン・ショックによる不況で、就職氷河期が到来した。団塊の世代は、1947年~1949年に生まれであり、一般的な定年60歳に到達したのは、2007年~2009年頃であり、「団塊の世代による本格リタイアが始まったのが2012年」というのも、事実とは異なる。
もっとも、公的年金の支給開始年齢の引き上げで、高齢者の退職は65歳に向けて引き上げ中である点には、考慮が必要であるが。
雇用の調整弁としては、非正規労働者が、真っ先に首を切られた。同一労働同一賃金の動きが出てきてはいるが、当面、そのような動きは続くであろう。「景気後退下の人手不足」が、真に技能を持つ人材のことであれば、その通りであろうと思うが、一般的な労働力の事を言うのであれば、「見立て違い」と思わざるを得ない。
もっと深刻なのは、「設備投資による省人化」が、好景気の中でも着々と進んできていることの方で、真に考慮すべきは、「好景気の中での人員余剰」なのではないかというのが、AI革命の影響を考え、格差の拡大を懸念する識者の見立てではないか。
2020年2月13日木曜日
2020年2月13日 日経朝刊3面 (米大統領選2020)格差是正 若者が支持 民主第2戦サンダース氏勝利
2020年2月13日 日経朝刊33面 (経済教室)格差是正、停滞脱出のカギ
「米大統領選の民主党候補指名争いは、第2戦の東部ニューハンプシャー州予備選を制した左派のバーニー・サンダース上院議員(78)が先行する展開となった。」というのが最初の記事である。「勝利の原動力は若者の支持だ。米メディアの出口調査によると、18~29歳の51%、30~44歳でも36%の支持を得て他候補を引き離した。」という。
「サンダース氏は全米で1.5兆ドル(約165兆円)の残高がある学生ローンを政府が負担して全額免除すると表明。国民皆保険も公約に掲げ、富裕層や企業への増税で10年で14兆ドルの財源を確保すると主張する。格差への不満と将来不安が強まる低中所得層には、「民主社会主義者」を自称するサンダース氏の構想が魅力的に映る。」としている。
「とはいえ、大規模増税を伴う同氏の政策には党内主流派の反発も強い。」とし、「サンダース氏の急進的な政策に心酔する支持者は、穏健派の候補が勝った場合、本選では投票にいかないリスクを抱えている。左派と中道派の二極化が進む民主の指名争いは混迷を深めそうだ。」と結んでいる。
一方、後者の「経済教室」欄での記事は、慶大の小林慶一郎客員教授によるもので、「政府の過剰債務を解消するには歳出カット、増税、インフレなど様々な方法があり、どれを選ぶかで、国民のどの階層がコストを負担することになるかが大きく変わる。政府の過剰債務は、将来のコスト負担について巨大な不確実性を国民にもたらし、経済に非効率を作り出す。」という書き出しである。
そして、「通常の理論モデルで考えると、日本の政府債務は国内総生産(GDP)の240%を超え、税収の割引現在価値を大幅に上回っているので、インフレが起きるはずだと予想される。」が、「増税や歳出削減が将来起きるだろう」と国民が思っている限り、デフレや低インフレが続いてもおかしくはない。」とし、「負担増大が予想されれば企業は投資をためらうだろう。消費者が増税を予期すれば、貯蓄を増やし、消費を減らそうとする。こうして経済は停滞する。」としている。
その上で、経済学的分析を踏まえ、「格差の拡大は、個人の不確実性を増やし、長期停滞(マイナス金利とほぼ同じ)を引き起こす。」としている。そして、「実質金利をプラスにすることが経済の正常化だとしたら、そのためには所得格差を軽減する必要がある。言い換えれば、個人が人生で直面する不確実性を減らし、結果として社会全体の所得配分の不平等を緩和することが重要である。」としている。
そして、「それには、根本的な社会保障制度の改革が必要だろう。新しい社会保障制度は、最新のテクノロジーを駆使することによってあらゆる階層の個人の社会的包摂を目指すものになる。長期停滞からの脱却は金融政策だけの問題ではない、というべきではないだろうか。」と締めくくっている。
まず、米大統領選については、すでに別のブログで論評したところである。サンダース上院議員が勝ち進むのかどうかが注目だが、米国民に巣くう「赤の恐怖」の克服ができるのかどうかも注目点であろう。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200209AA01.html
米大統領選でも争点となっている「格差」について、様々な角度から検討されるようになった。上記の「経済教室」欄での論説も、その一つである。経済学的分析については専門外なので論評できないが、議論の広がりについては興味深い。
ただ、「個人の所得格差の拡大が長期停滞の一因」なのだとしても、その所得格差の是正の手段を考察しなければ、単なる学術評論になってしまうのではないか。「根本的な社会保障制度の改革」も、何をどうすべきと考えているのか、イメージが湧かない。
その点では、政策を競う米大統領選の方策は明確である。学生ローンの全額免除、国民皆保険、富裕層や企業への増税は、格差の縮小につながることは確実である。一方で、格差是正のための大規模増税が、景気を悪化させ、結局、格差の縮小の足かせになるのではないかという論点もある。よく言われるのは、パイの公平な分け方も大事だが、パイを大きくすることも大事だということである。
そう考えると、なかなか先行きが見えないことになる。だが、格差に押しつぶされそうになる大衆が増えると、体制の転換が起きることも、歴史の教訓である。専制君主から民主政治に、果して人類は進歩してきたのかどうか。独裁色を強めるトランプ大統領、プーチン大統領あるいは習近平出席といった各国のリーダーの状況が、民主主義の限界を示すものなのかどうか、現在の社会・政治情勢は、そうした根源的な問いかけにもつながっている。
2020年2月13日 日経朝刊33面 (経済教室)格差是正、停滞脱出のカギ
「米大統領選の民主党候補指名争いは、第2戦の東部ニューハンプシャー州予備選を制した左派のバーニー・サンダース上院議員(78)が先行する展開となった。」というのが最初の記事である。「勝利の原動力は若者の支持だ。米メディアの出口調査によると、18~29歳の51%、30~44歳でも36%の支持を得て他候補を引き離した。」という。
「サンダース氏は全米で1.5兆ドル(約165兆円)の残高がある学生ローンを政府が負担して全額免除すると表明。国民皆保険も公約に掲げ、富裕層や企業への増税で10年で14兆ドルの財源を確保すると主張する。格差への不満と将来不安が強まる低中所得層には、「民主社会主義者」を自称するサンダース氏の構想が魅力的に映る。」としている。
「とはいえ、大規模増税を伴う同氏の政策には党内主流派の反発も強い。」とし、「サンダース氏の急進的な政策に心酔する支持者は、穏健派の候補が勝った場合、本選では投票にいかないリスクを抱えている。左派と中道派の二極化が進む民主の指名争いは混迷を深めそうだ。」と結んでいる。
一方、後者の「経済教室」欄での記事は、慶大の小林慶一郎客員教授によるもので、「政府の過剰債務を解消するには歳出カット、増税、インフレなど様々な方法があり、どれを選ぶかで、国民のどの階層がコストを負担することになるかが大きく変わる。政府の過剰債務は、将来のコスト負担について巨大な不確実性を国民にもたらし、経済に非効率を作り出す。」という書き出しである。
そして、「通常の理論モデルで考えると、日本の政府債務は国内総生産(GDP)の240%を超え、税収の割引現在価値を大幅に上回っているので、インフレが起きるはずだと予想される。」が、「増税や歳出削減が将来起きるだろう」と国民が思っている限り、デフレや低インフレが続いてもおかしくはない。」とし、「負担増大が予想されれば企業は投資をためらうだろう。消費者が増税を予期すれば、貯蓄を増やし、消費を減らそうとする。こうして経済は停滞する。」としている。
その上で、経済学的分析を踏まえ、「格差の拡大は、個人の不確実性を増やし、長期停滞(マイナス金利とほぼ同じ)を引き起こす。」としている。そして、「実質金利をプラスにすることが経済の正常化だとしたら、そのためには所得格差を軽減する必要がある。言い換えれば、個人が人生で直面する不確実性を減らし、結果として社会全体の所得配分の不平等を緩和することが重要である。」としている。
そして、「それには、根本的な社会保障制度の改革が必要だろう。新しい社会保障制度は、最新のテクノロジーを駆使することによってあらゆる階層の個人の社会的包摂を目指すものになる。長期停滞からの脱却は金融政策だけの問題ではない、というべきではないだろうか。」と締めくくっている。
まず、米大統領選については、すでに別のブログで論評したところである。サンダース上院議員が勝ち進むのかどうかが注目だが、米国民に巣くう「赤の恐怖」の克服ができるのかどうかも注目点であろう。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200209AA01.html
米大統領選でも争点となっている「格差」について、様々な角度から検討されるようになった。上記の「経済教室」欄での論説も、その一つである。経済学的分析については専門外なので論評できないが、議論の広がりについては興味深い。
ただ、「個人の所得格差の拡大が長期停滞の一因」なのだとしても、その所得格差の是正の手段を考察しなければ、単なる学術評論になってしまうのではないか。「根本的な社会保障制度の改革」も、何をどうすべきと考えているのか、イメージが湧かない。
その点では、政策を競う米大統領選の方策は明確である。学生ローンの全額免除、国民皆保険、富裕層や企業への増税は、格差の縮小につながることは確実である。一方で、格差是正のための大規模増税が、景気を悪化させ、結局、格差の縮小の足かせになるのではないかという論点もある。よく言われるのは、パイの公平な分け方も大事だが、パイを大きくすることも大事だということである。
そう考えると、なかなか先行きが見えないことになる。だが、格差に押しつぶされそうになる大衆が増えると、体制の転換が起きることも、歴史の教訓である。専制君主から民主政治に、果して人類は進歩してきたのかどうか。独裁色を強めるトランプ大統領、プーチン大統領あるいは習近平出席といった各国のリーダーの状況が、民主主義の限界を示すものなのかどうか、現在の社会・政治情勢は、そうした根源的な問いかけにもつながっている。
2020年2月13日 日経朝刊19面 (大機小機)TOPIXは出直し的な改革を
「2019年末、金融審議会市場ワーキング・グループの市場構造専門グループが市場構造の在り方の検討結果を公表した。」なかで、「注目すべきはTOPIXの在り方である。」という論説である。
「我が国の株価インデックスはTOPIX一色といっても過言ではない。」が、「TOPIXを構成するのは東証1部上場の全銘柄だ。もともと上場資格が緩いうえに退出基準も甘い。企業価値を毀損したゾンビ企業さえ生き残ると酷評されている。」という状況である。
「一方、米国株の代表的なインデックスにS&P500種株価指数、MSCI USA、FTSE USAがある。それぞれ構成銘柄数は505、637、614だ。我が国の市場規模は米国の約7分の1しかないのに、TOPIXの構成銘柄数は2000超である。いかにも特異だ。」というのである。
「我が国の株式市場の停滞を懸念する声が多い。要因の一つは、投資家よりも企業側を向いた市場運営にあると指摘されている。市場活性化に向けた改革の第一歩は、報告書の指摘を待つまでもなくTOPIXの出直し的な改革を断行することである。」と締めくくっている。
うかつな事に、私は、TOPIXについての問題意識を持ってこなかった。米国にも種々のインデックスがあると言っても、やはりS&P500種株価指数が主体であるし、日本では、日経平均連動ファンドという、指数対象の225銘柄の株価の平均値という、およそインデックス運用とはかけ離れたものまである始末なので、TOPIX以外の指標に警戒感を持っていたのである。
ということで、遅まきながら、金融審議会市場ワーキング・グループの市場構造専門グループ報告書「令和時代における企業と投資家のための新たな市場に向けて」(2019年12月27日)に目を通してみた。
TOPIXについては、9・10ページで、とりあげられているが、記事の論説で、「金融審のワーキング・グループ報告書は、TOPIXに次のような注文を付けた。現在の不十分な浮動株定義を見直し、流通時価総額(浮動株時価総額)を基準にすること、銘柄数に上限を設け定期的に入れ替えること、構成銘柄と市場区分とは切り離すこと、独立性やプロセスの公平性が担保される運営に努めることなど、踏み込んだ内容である。」とされている通りである。
もっともな内容であり、報告書には、「経過措置等」を記されているが、可及的速やかな対応が求められると言えよう。
2020年2月12日水曜日
2020年2月12日 日経夕刊6面 確定拠出年金の終わらせ方 換金予定なら事前にリスク減
2020年2月13日 日経夕刊7面 (投信番付)海外REIT型に資金流入 毎月分配、シニアに人気
最初の記事は、Q&Aスタイルで、50代の会社員「企業型の確定拠出年金に加入しています。60歳になったら運用してきた資金はどうすべきでしょうか。」という質問に、ファイナンシャルプランナーの高橋忠寛氏が答えるという体裁である。
回答の方は、「60歳になりすぐ使う予定があるなら、50代から徐々に預金などリスクの低い商品中心に切り替えましょう。換金するタイミングで急な相場変動が起き、想定した金額を受け取れないリスクを減らすためです。」という常識的なものである。
「しばらく手を付ける予定がないのであれば、株式中心のままの運用の継続を勧めます。最長で70歳まで非課税で運用できます。その後は一般の課税口座に移して運用するのも手です。」ともし、受給の仕方には、一時金と年金とがあるが、「現状では一時金受け取りを選ぶ人が大半です。」とし、「一時金で受け取った資金をきちんと管理することは安心した老後生活にとって不可欠です。」としている。
一方、後の記事は、「海外の不動産投資信託(REIT)に投資するファンドへ資金が戻りつつある。」というもので、「半年で最も資金が流入したのは「ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし)」の750億円強。同期間の騰落率は6.9%だった。毎月分配型は資金を取り崩しながら運用するシニア層中心に根強い人気がある。」としている。
毎月分配型でも、「普通分配金の割合を示す分配金健全度も改善し、元本を払い戻す特別分配金を支払うファンドは減っている。」とのことだが、「老後の備えなど将来に向けた長期の資産形成を考える場合、運用収益の一部を分配金として毎月支払う毎月分配型への投資は複利効果の恩恵を最大限に得られないので留意しておきたい。」と結んでいる。
毎月分配型の問題点については、下記のブログで指摘したところである。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200202NA02.html
「元本を払い戻す特別分配金」は論外で、それで運用手数料をとっているのは、悪質な詐欺行為に等しい。
なお、「為替ヘッジなし」の「海外の不動産投資信託(REIT)」の場合には、為替差損が先送りされる可能性がある。本来、為替変動が大きい商品が、「毎月分配」などという安定配当に向いているはずはない。購入者は、そのことを理解していないのではないか。
一方で、毎月分配型が「シニア層中心に根強い人気」なのは、日本で私的企業年金が行き詰まっている証左でもある。「現役期は確定拠出年金で運用」→「退職後は毎月分配型投信で受給」というパターンが定着してきているわけである。
そのことの何が問題なのか、という人もいるだろう。確定拠出年金制度が創設される前は、税制適格退職年金制度(適年)が広範に普及しており、現役期の運用は、一括して企業が責任を負っていた。適年が廃止された主因の一つは、「年金に結び付いていない」ということだったが、今の確定拠出年金も、年金に結び付いていないことは同じではないか。
この点は、社会保障審議会の企業年金・個人年金部会でも課題とされ、確定拠出年金で蓄積された資産を、企業年金連合会が実施している「通算企業年金」に移せるようにすることも課題とされたが、実現していない。確定拠出年金制度の中で年金給付を望む場合には、結局、個人年金商品を購入することになるが、割高であり、拠出終了後の税制優遇は、制度の管理手数料も取られて魅力が薄いので、一時金で流出しているわけである。
適年の廃止で、企業年金の加入者は、中小企業を中心に500万人減った。自己責任での運用を迫られる確定拠出年金への中小企業の移行は少なく、大企業でも、多くの加入者は、損失を恐れて元本確保型の運用を選択している。それでは老後資金の形成につながらないという大義名分の下で、加入者本人が投資商品を選択しない場合に、金融機関が手数料を稼げる投資信託を自動選択することも緩和された。
従業員・加入者の利益を重視する私的年金改革は、このところ行われておらず、公務員が税制優遇を享受できる個人型確定拠出年金(イデコ)への対象者拡大と加入期間延長が、このところの「企業年金・個人年金改革」の中核である。日本の私的年金は、少子高齢化の進展の中で、その期待される役割を果たせる方向に向かっているようには思えない。
2020年2月13日 日経夕刊7面 (投信番付)海外REIT型に資金流入 毎月分配、シニアに人気
最初の記事は、Q&Aスタイルで、50代の会社員「企業型の確定拠出年金に加入しています。60歳になったら運用してきた資金はどうすべきでしょうか。」という質問に、ファイナンシャルプランナーの高橋忠寛氏が答えるという体裁である。
回答の方は、「60歳になりすぐ使う予定があるなら、50代から徐々に預金などリスクの低い商品中心に切り替えましょう。換金するタイミングで急な相場変動が起き、想定した金額を受け取れないリスクを減らすためです。」という常識的なものである。
「しばらく手を付ける予定がないのであれば、株式中心のままの運用の継続を勧めます。最長で70歳まで非課税で運用できます。その後は一般の課税口座に移して運用するのも手です。」ともし、受給の仕方には、一時金と年金とがあるが、「現状では一時金受け取りを選ぶ人が大半です。」とし、「一時金で受け取った資金をきちんと管理することは安心した老後生活にとって不可欠です。」としている。
一方、後の記事は、「海外の不動産投資信託(REIT)に投資するファンドへ資金が戻りつつある。」というもので、「半年で最も資金が流入したのは「ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし)」の750億円強。同期間の騰落率は6.9%だった。毎月分配型は資金を取り崩しながら運用するシニア層中心に根強い人気がある。」としている。
毎月分配型でも、「普通分配金の割合を示す分配金健全度も改善し、元本を払い戻す特別分配金を支払うファンドは減っている。」とのことだが、「老後の備えなど将来に向けた長期の資産形成を考える場合、運用収益の一部を分配金として毎月支払う毎月分配型への投資は複利効果の恩恵を最大限に得られないので留意しておきたい。」と結んでいる。
毎月分配型の問題点については、下記のブログで指摘したところである。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200202NA02.html
「元本を払い戻す特別分配金」は論外で、それで運用手数料をとっているのは、悪質な詐欺行為に等しい。
なお、「為替ヘッジなし」の「海外の不動産投資信託(REIT)」の場合には、為替差損が先送りされる可能性がある。本来、為替変動が大きい商品が、「毎月分配」などという安定配当に向いているはずはない。購入者は、そのことを理解していないのではないか。
一方で、毎月分配型が「シニア層中心に根強い人気」なのは、日本で私的企業年金が行き詰まっている証左でもある。「現役期は確定拠出年金で運用」→「退職後は毎月分配型投信で受給」というパターンが定着してきているわけである。
そのことの何が問題なのか、という人もいるだろう。確定拠出年金制度が創設される前は、税制適格退職年金制度(適年)が広範に普及しており、現役期の運用は、一括して企業が責任を負っていた。適年が廃止された主因の一つは、「年金に結び付いていない」ということだったが、今の確定拠出年金も、年金に結び付いていないことは同じではないか。
この点は、社会保障審議会の企業年金・個人年金部会でも課題とされ、確定拠出年金で蓄積された資産を、企業年金連合会が実施している「通算企業年金」に移せるようにすることも課題とされたが、実現していない。確定拠出年金制度の中で年金給付を望む場合には、結局、個人年金商品を購入することになるが、割高であり、拠出終了後の税制優遇は、制度の管理手数料も取られて魅力が薄いので、一時金で流出しているわけである。
適年の廃止で、企業年金の加入者は、中小企業を中心に500万人減った。自己責任での運用を迫られる確定拠出年金への中小企業の移行は少なく、大企業でも、多くの加入者は、損失を恐れて元本確保型の運用を選択している。それでは老後資金の形成につながらないという大義名分の下で、加入者本人が投資商品を選択しない場合に、金融機関が手数料を稼げる投資信託を自動選択することも緩和された。
従業員・加入者の利益を重視する私的年金改革は、このところ行われておらず、公務員が税制優遇を享受できる個人型確定拠出年金(イデコ)への対象者拡大と加入期間延長が、このところの「企業年金・個人年金改革」の中核である。日本の私的年金は、少子高齢化の進展の中で、その期待される役割を果たせる方向に向かっているようには思えない。
2020年2月12日 日経夕刊6面 定年後の働き方とお金(中) 厚生年金、高収入で減額も
問答方式の記事で、「定年後も元気なうちはバリバリ働かないといけないと思ったんだけど、稼ぎすぎると年金が減らされてしまう」「会社員などが加入している厚生年金の月額と働いて得た給与などの月額の合計が一定の基準額を超えると、厚生年金が減ったり支給停止になったりする」という在職老齢年金を話題にしているものである。
「60代前半の基準額を28万円から47万円に引き上げる方針」や「65歳以降も働いて厚生年金の保険料を払う人について…毎年1回計算して年金額に反映する仕組みに変える」という「在職定時改定」が、法案として審議されることにも触れられている。
また、「年金の受給を遅らせるとお得」ということで、「働き続けていて年金収入に頼らなくていい人は、繰り下げて受給額を増やす手もある」「65歳時点の年金額を基準に受給を1カ月繰り下げるごとに0.7%増額する」として、繰り下げ支給の仕組みにも触れている。また、「年金の繰り下げをしたからといって在職老齢年金の基準額を気にしなくていいわけではない」とし、「減額された金額を基に将来の年金額が増額されるから」と注意点も明確である。
なお、この記事でのコメントで、社会保険労務士の森本幸人氏は、「最良の老後対策は夫婦で一年でも長く厚生年金に加入しながら働き、将来の年金額を増やすことでしょう」としつつ、「フリーランスで収入を増やしたりするのも手」とし、「働き長生きに備えるか、家族で話し合うことが重要です。」と結んでいる。
バランスの良い記事で、読者に親しみやすい問答形式で、この問題についての、ほとんどすべての事項に触れている。法改正の動向は、当ブログでも論評している。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200205NA01.html
注意を付け加えるとすれば、「年金の受給開始年齢は、自ら申請することで早めたり遅らせたりすることができる」という点であるが、「遅らせる」申請は必要ではない。「支給開始」を請求するだけであり、請求しなければ、自動的に遅らせたことになる。この選択を求める通知が65歳になった時点で日本年金機構から来るが、多くの人は、「もらえるものなら、今からもらった方がよい」と考えるようで、支給開始の選択をする傾向があるようである。
誤解があるのは、請求せずに遅らせたとしても、65歳から請求時点までの年金がもらえなくなるわけではない点である。各期の年金受給の時効期間は5年間であり、5年以内の分は、遡って一時金で支給される。このことを知っていれば、慌てて支給請求する必要はまったくなく、70歳までの5年間の間に、遡って増額前の年金を受給した方がいいの、それとも税額後の年金を今後受給した方がいいのかを、冷静に考えることができることになる。少なくとも、直ちに年金をもらい始めても、結局、低金利の預金とかにするのなら、年率4.2%で増加して死ぬまで支払われる年金の選択肢を持ったままの方がよいのではないか。
年金は、「知って得する」ということはあまりないかもしれないが、「知らないで損する」ことは少なくない。このような記事を契機として、自分に関係する年金については、自ら正しい知識を求めるようにした方がよいであろう。そのために、最も有益なのは、日本年金機構の各種のパンフレットである。
https://www.nenkin.go.jp/pamphlet/index.html
断片的な伝聞や、不安やお得情報と題すると売れる週刊誌などの情報を鵜呑みにすると、思わぬ落とし穴に落ちることもある。例えば、「年金は破綻するから、保険料は払わない方がいい」と書いている輩が、自分ではしっかりと年金保険料を支払っていることは、大いにあり得る。自分で調べ、考える努力を怠ってはならないことは、世間のすべてのことに当てはまるだろう。
問答方式の記事で、「定年後も元気なうちはバリバリ働かないといけないと思ったんだけど、稼ぎすぎると年金が減らされてしまう」「会社員などが加入している厚生年金の月額と働いて得た給与などの月額の合計が一定の基準額を超えると、厚生年金が減ったり支給停止になったりする」という在職老齢年金を話題にしているものである。
「60代前半の基準額を28万円から47万円に引き上げる方針」や「65歳以降も働いて厚生年金の保険料を払う人について…毎年1回計算して年金額に反映する仕組みに変える」という「在職定時改定」が、法案として審議されることにも触れられている。
また、「年金の受給を遅らせるとお得」ということで、「働き続けていて年金収入に頼らなくていい人は、繰り下げて受給額を増やす手もある」「65歳時点の年金額を基準に受給を1カ月繰り下げるごとに0.7%増額する」として、繰り下げ支給の仕組みにも触れている。また、「年金の繰り下げをしたからといって在職老齢年金の基準額を気にしなくていいわけではない」とし、「減額された金額を基に将来の年金額が増額されるから」と注意点も明確である。
なお、この記事でのコメントで、社会保険労務士の森本幸人氏は、「最良の老後対策は夫婦で一年でも長く厚生年金に加入しながら働き、将来の年金額を増やすことでしょう」としつつ、「フリーランスで収入を増やしたりするのも手」とし、「働き長生きに備えるか、家族で話し合うことが重要です。」と結んでいる。
バランスの良い記事で、読者に親しみやすい問答形式で、この問題についての、ほとんどすべての事項に触れている。法改正の動向は、当ブログでも論評している。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200205NA01.html
注意を付け加えるとすれば、「年金の受給開始年齢は、自ら申請することで早めたり遅らせたりすることができる」という点であるが、「遅らせる」申請は必要ではない。「支給開始」を請求するだけであり、請求しなければ、自動的に遅らせたことになる。この選択を求める通知が65歳になった時点で日本年金機構から来るが、多くの人は、「もらえるものなら、今からもらった方がよい」と考えるようで、支給開始の選択をする傾向があるようである。
誤解があるのは、請求せずに遅らせたとしても、65歳から請求時点までの年金がもらえなくなるわけではない点である。各期の年金受給の時効期間は5年間であり、5年以内の分は、遡って一時金で支給される。このことを知っていれば、慌てて支給請求する必要はまったくなく、70歳までの5年間の間に、遡って増額前の年金を受給した方がいいの、それとも税額後の年金を今後受給した方がいいのかを、冷静に考えることができることになる。少なくとも、直ちに年金をもらい始めても、結局、低金利の預金とかにするのなら、年率4.2%で増加して死ぬまで支払われる年金の選択肢を持ったままの方がよいのではないか。
年金は、「知って得する」ということはあまりないかもしれないが、「知らないで損する」ことは少なくない。このような記事を契機として、自分に関係する年金については、自ら正しい知識を求めるようにした方がよいであろう。そのために、最も有益なのは、日本年金機構の各種のパンフレットである。
https://www.nenkin.go.jp/pamphlet/index.html
断片的な伝聞や、不安やお得情報と題すると売れる週刊誌などの情報を鵜呑みにすると、思わぬ落とし穴に落ちることもある。例えば、「年金は破綻するから、保険料は払わない方がいい」と書いている輩が、自分ではしっかりと年金保険料を支払っていることは、大いにあり得る。自分で調べ、考える努力を怠ってはならないことは、世間のすべてのことに当てはまるだろう。
2020年2月12日 朝日朝刊4面 メガバンク、企業年金見直し相次ぐ 確定給付の利率変動、実質減額に
「長引く低金利を受け、メガバンクが相次いで企業年金を見直している。三井住友銀行は6月から、みずほフィナンシャルグループ(FG)は10月から、確定給付年金の利率を変動型に改める方針。今の金利環境下では利率が下がるため、実質的な減額となる。」という記事である。
「三井住友銀行も終身年金分の給付利率を6月以降に変動制へ変える。」とし、「変更前に拠出した掛け金分は減額分を補う制度も導入する。」とのことである。「三菱UFJ銀行は11年から変動制へ切り替えたという。」としている。
「厚生労働省によると、確定給付型の導入企業は08年に36・4%あったが、18年に14・1%に減少。確定拠出型はこの間に6・0%から11・4%に増えた。確定給付型の給付利率を変動に改める流れも2000年代前半ごろから続いている。」と結んでいる。
少し不思議な記事である。みずほフィナンシャルグループのこの年金制度変更については、昨年2019年11月下旬に各紙やNHKが一斉に報じている。付加的価値があるとすれば、「メガバンクが相次いで」という点になるだろうが、ならば、三井住友銀行がメインの記事になるのではないか。
ともあれ、「給付利率を変動型」にしたということなのだが、そんなことは一般企業では当たり前の事で、正直、ここまで変更が遅かったのか、としか思えない。
この記事を最初に見た時は、いよいよ「リスク分担型」の確定給付企業年金に切り替えたのか、と思ったが、そうではないようである。なお、三井住友銀行の「変更前に拠出した掛け金分は減額分を補う制度」というのは、「リスク対応掛金」の事ではないかと思われる。「リスク分担型」制度は、企業が掛金を多めに拠出する代わりに、運用が不振なら給付を減額する仕組みで、「リスク対応掛金」は、企業が掛金を多めに拠出して、運用不振に備えるものである。それらの仕組みの概要は、次の資料の40-45ページを参照されたい。
https://www.mhlw.go.jp/content/10600000/000509684.pdf
「リスク分担型」制度は、企業に追加の掛金負担が基本的には生じないので、確定給付企業年金を退職給付会計の退職給付債務に計上しなくてもよいという極めて姑息な考え方から出てきたものであるが、労働組合の同意が得られにくいだけでなく、極めて複雑な制度である。労使のためになるとは到底考えられないものである。企業年金の制度設計を担う金融機関でも、まったく採用の動きがないことが露呈したと言えよう。
気がかりなのは、確定給付企業年金の採用企業が減少してきていることである。私は、この背景には、受給権者分の債務が加入者分との対比で増加しており、企業活動に寄与しない退職者分であることから、運用不振の場合の穴埋めが、株主にも現役の従業員にも、理解してもらえない点にあると思っている。ソニーが2018年10月に確定給付企業年金から全面的に確定拠出年金に移行するとの方針を発表した背景には、この点が大きいと思っている。その観点からすると、退職給付債務について、加入者分と退職者分とを区分していない現況は、企業の将来の動向を見る上で、不足があるともいえるであろう。
また、「確定拠出型」が増えているとしているが、中小企業では、元の退職金の規模が小さく投資教育の負担もあって、活用されていない。確定給付企業年金の方も、退職者の管理が必要になるため活用されておらず、税制適格退職年金の廃止によって、中小企業は企業年金から離脱した形になっている。中小企業を企業年金に復帰させるのが最大の課題であるはずだが、この点での検討や対応は、遅れている。
「長引く低金利を受け、メガバンクが相次いで企業年金を見直している。三井住友銀行は6月から、みずほフィナンシャルグループ(FG)は10月から、確定給付年金の利率を変動型に改める方針。今の金利環境下では利率が下がるため、実質的な減額となる。」という記事である。
「三井住友銀行も終身年金分の給付利率を6月以降に変動制へ変える。」とし、「変更前に拠出した掛け金分は減額分を補う制度も導入する。」とのことである。「三菱UFJ銀行は11年から変動制へ切り替えたという。」としている。
「厚生労働省によると、確定給付型の導入企業は08年に36・4%あったが、18年に14・1%に減少。確定拠出型はこの間に6・0%から11・4%に増えた。確定給付型の給付利率を変動に改める流れも2000年代前半ごろから続いている。」と結んでいる。
少し不思議な記事である。みずほフィナンシャルグループのこの年金制度変更については、昨年2019年11月下旬に各紙やNHKが一斉に報じている。付加的価値があるとすれば、「メガバンクが相次いで」という点になるだろうが、ならば、三井住友銀行がメインの記事になるのではないか。
ともあれ、「給付利率を変動型」にしたということなのだが、そんなことは一般企業では当たり前の事で、正直、ここまで変更が遅かったのか、としか思えない。
この記事を最初に見た時は、いよいよ「リスク分担型」の確定給付企業年金に切り替えたのか、と思ったが、そうではないようである。なお、三井住友銀行の「変更前に拠出した掛け金分は減額分を補う制度」というのは、「リスク対応掛金」の事ではないかと思われる。「リスク分担型」制度は、企業が掛金を多めに拠出する代わりに、運用が不振なら給付を減額する仕組みで、「リスク対応掛金」は、企業が掛金を多めに拠出して、運用不振に備えるものである。それらの仕組みの概要は、次の資料の40-45ページを参照されたい。
https://www.mhlw.go.jp/content/10600000/000509684.pdf
「リスク分担型」制度は、企業に追加の掛金負担が基本的には生じないので、確定給付企業年金を退職給付会計の退職給付債務に計上しなくてもよいという極めて姑息な考え方から出てきたものであるが、労働組合の同意が得られにくいだけでなく、極めて複雑な制度である。労使のためになるとは到底考えられないものである。企業年金の制度設計を担う金融機関でも、まったく採用の動きがないことが露呈したと言えよう。
気がかりなのは、確定給付企業年金の採用企業が減少してきていることである。私は、この背景には、受給権者分の債務が加入者分との対比で増加しており、企業活動に寄与しない退職者分であることから、運用不振の場合の穴埋めが、株主にも現役の従業員にも、理解してもらえない点にあると思っている。ソニーが2018年10月に確定給付企業年金から全面的に確定拠出年金に移行するとの方針を発表した背景には、この点が大きいと思っている。その観点からすると、退職給付債務について、加入者分と退職者分とを区分していない現況は、企業の将来の動向を見る上で、不足があるともいえるであろう。
また、「確定拠出型」が増えているとしているが、中小企業では、元の退職金の規模が小さく投資教育の負担もあって、活用されていない。確定給付企業年金の方も、退職者の管理が必要になるため活用されておらず、税制適格退職年金の廃止によって、中小企業は企業年金から離脱した形になっている。中小企業を企業年金に復帰させるのが最大の課題であるはずだが、この点での検討や対応は、遅れている。
2020年2月11日火曜日
2020年2月11日 日経朝刊15面 (一目均衡)「黒船」フィデリティの衝撃
「日本の資産運用ビジネスを変える」と意気込むフィデリティ証券の考え方や動向を取り上げたものである。同社は、「金融庁の認可を前提に、年内にも「投資助言代理業」として登録し、投資家1人ずつに運用をアドバイスする。」とのことであり、「取り扱いのある600本超の投信の手数料撤廃はその第1段階にすぎない。」という。
当たり前の戦略のように思うが、「証券・運用業界はざわついた。将来、日本の個人向け金融で手数料がとれるのはアドバイザリーのみとなり、「単純な売買の取り次ぎや執行は無料化に向かう」(日本資産運用基盤グループの大原啓一社長)という認識は広がりつつある。」のだという。
同社は、「第2段階では、すでに実績のあるロボットアドバイザリーツールも導入し、基本的な資産構成の提案や入れ替えを効率的にできるようにする。」そうで、「日本でもグローバル水準のサービスを持ち込む方針に切り替えた。」とのことである。
そして、「笛吹けど踊らず」だった日本の資産運用ビジネスが大きく動く気配がする、と論説は結んでいる。
改めて見てみると、日本で投資が一般化しなかったのは、当然に思える。「日本の個人金融ビジネスは現状、特殊な市場だ。中核となるべき低コストのインデックス(指数連動)型や日本株投信はそれほど成長せず、毎月分配型やレバレッジ型が幅をきかせる。」というのは、まともな投資の状況ではない。
「単純な売買の取り次ぎや執行」で手数料がとれるから、乗り替えと称して、必要もない有価証券の売買を投資家に勧めてきたのが、証券業界の体質であろう。当たり前のことを「黒船」と大騒ぎするのは、後進性を象徴するもので、投資鎖国の現状を物語る以外の何物でもない。
一方で、日本人は、「サービスは無料」と考えていると言われて久しい。細やかなサービスは、その質の分だけの対価に値する、という考え方は、今でもあまり浸透していないように思える。例えば、美味しい料理なら、どんどん値段を上げていってもよいという考え方に対し、そんなことをすれば庶民が食べられなくなるとして値段の引き上げを抑え、長く顧客になってもらうというような考え方が、根強くあるように思われる。
どちらの考え方にも理はあるが、商品やサービスの回転が非常に速くなっている現代では、長期的な関係に依存するだけではうまく行かないことも多いのではないだろうか。
ともあれ、市場の開放や拡大は、新たな商品やサービスを生み出す。それによる活性化が魅力を引き出し高めることは、投資市場においても例外ではあるまい。
「日本の資産運用ビジネスを変える」と意気込むフィデリティ証券の考え方や動向を取り上げたものである。同社は、「金融庁の認可を前提に、年内にも「投資助言代理業」として登録し、投資家1人ずつに運用をアドバイスする。」とのことであり、「取り扱いのある600本超の投信の手数料撤廃はその第1段階にすぎない。」という。
当たり前の戦略のように思うが、「証券・運用業界はざわついた。将来、日本の個人向け金融で手数料がとれるのはアドバイザリーのみとなり、「単純な売買の取り次ぎや執行は無料化に向かう」(日本資産運用基盤グループの大原啓一社長)という認識は広がりつつある。」のだという。
同社は、「第2段階では、すでに実績のあるロボットアドバイザリーツールも導入し、基本的な資産構成の提案や入れ替えを効率的にできるようにする。」そうで、「日本でもグローバル水準のサービスを持ち込む方針に切り替えた。」とのことである。
そして、「笛吹けど踊らず」だった日本の資産運用ビジネスが大きく動く気配がする、と論説は結んでいる。
改めて見てみると、日本で投資が一般化しなかったのは、当然に思える。「日本の個人金融ビジネスは現状、特殊な市場だ。中核となるべき低コストのインデックス(指数連動)型や日本株投信はそれほど成長せず、毎月分配型やレバレッジ型が幅をきかせる。」というのは、まともな投資の状況ではない。
「単純な売買の取り次ぎや執行」で手数料がとれるから、乗り替えと称して、必要もない有価証券の売買を投資家に勧めてきたのが、証券業界の体質であろう。当たり前のことを「黒船」と大騒ぎするのは、後進性を象徴するもので、投資鎖国の現状を物語る以外の何物でもない。
一方で、日本人は、「サービスは無料」と考えていると言われて久しい。細やかなサービスは、その質の分だけの対価に値する、という考え方は、今でもあまり浸透していないように思える。例えば、美味しい料理なら、どんどん値段を上げていってもよいという考え方に対し、そんなことをすれば庶民が食べられなくなるとして値段の引き上げを抑え、長く顧客になってもらうというような考え方が、根強くあるように思われる。
どちらの考え方にも理はあるが、商品やサービスの回転が非常に速くなっている現代では、長期的な関係に依存するだけではうまく行かないことも多いのではないだろうか。
ともあれ、市場の開放や拡大は、新たな商品やサービスを生み出す。それによる活性化が魅力を引き出し高めることは、投資市場においても例外ではあるまい。
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