2020年2月13日木曜日

2020年2月13日 日経朝刊3面 (米大統領選2020)格差是正 若者が支持 民主第2戦サンダース氏勝利
2020年2月13日 日経朝刊33面 (経済教室)格差是正、停滞脱出のカギ 

「米大統領選の民主党候補指名争いは、第2戦の東部ニューハンプシャー州予備選を制した左派のバーニー・サンダース上院議員(78)が先行する展開となった。」というのが最初の記事である。「勝利の原動力は若者の支持だ。米メディアの出口調査によると、18~29歳の51%、30~44歳でも36%の支持を得て他候補を引き離した。」という。
「サンダース氏は全米で1.5兆ドル(約165兆円)の残高がある学生ローンを政府が負担して全額免除すると表明。国民皆保険も公約に掲げ、富裕層や企業への増税で10年で14兆ドルの財源を確保すると主張する。格差への不満と将来不安が強まる低中所得層には、「民主社会主義者」を自称するサンダース氏の構想が魅力的に映る。」としている。
「とはいえ、大規模増税を伴う同氏の政策には党内主流派の反発も強い。」とし、「サンダース氏の急進的な政策に心酔する支持者は、穏健派の候補が勝った場合、本選では投票にいかないリスクを抱えている。左派と中道派の二極化が進む民主の指名争いは混迷を深めそうだ。」と結んでいる。

一方、後者の「経済教室」欄での記事は、慶大の小林慶一郎客員教授によるもので、「政府の過剰債務を解消するには歳出カット、増税、インフレなど様々な方法があり、どれを選ぶかで、国民のどの階層がコストを負担することになるかが大きく変わる。政府の過剰債務は、将来のコスト負担について巨大な不確実性を国民にもたらし、経済に非効率を作り出す。」という書き出しである。
そして、「通常の理論モデルで考えると、日本の政府債務は国内総生産(GDP)の240%を超え、税収の割引現在価値を大幅に上回っているので、インフレが起きるはずだと予想される。」が、「増税や歳出削減が将来起きるだろう」と国民が思っている限り、デフレや低インフレが続いてもおかしくはない。」とし、「負担増大が予想されれば企業は投資をためらうだろう。消費者が増税を予期すれば、貯蓄を増やし、消費を減らそうとする。こうして経済は停滞する。」としている。
その上で、経済学的分析を踏まえ、「格差の拡大は、個人の不確実性を増やし、長期停滞(マイナス金利とほぼ同じ)を引き起こす。」としている。そして、「実質金利をプラスにすることが経済の正常化だとしたら、そのためには所得格差を軽減する必要がある。言い換えれば、個人が人生で直面する不確実性を減らし、結果として社会全体の所得配分の不平等を緩和することが重要である。」としている。
そして、「それには、根本的な社会保障制度の改革が必要だろう。新しい社会保障制度は、最新のテクノロジーを駆使することによってあらゆる階層の個人の社会的包摂を目指すものになる。長期停滞からの脱却は金融政策だけの問題ではない、というべきではないだろうか。」と締めくくっている。

まず、米大統領選については、すでに別のブログで論評したところである。サンダース上院議員が勝ち進むのかどうかが注目だが、米国民に巣くう「赤の恐怖」の克服ができるのかどうかも注目点であろう。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200209AA01.html
米大統領選でも争点となっている「格差」について、様々な角度から検討されるようになった。上記の「経済教室」欄での論説も、その一つである。経済学的分析については専門外なので論評できないが、議論の広がりについては興味深い。
ただ、「個人の所得格差の拡大が長期停滞の一因」なのだとしても、その所得格差の是正の手段を考察しなければ、単なる学術評論になってしまうのではないか。「根本的な社会保障制度の改革」も、何をどうすべきと考えているのか、イメージが湧かない。
その点では、政策を競う米大統領選の方策は明確である。学生ローンの全額免除、国民皆保険、富裕層や企業への増税は、格差の縮小につながることは確実である。一方で、格差是正のための大規模増税が、景気を悪化させ、結局、格差の縮小の足かせになるのではないかという論点もある。よく言われるのは、パイの公平な分け方も大事だが、パイを大きくすることも大事だということである。
そう考えると、なかなか先行きが見えないことになる。だが、格差に押しつぶされそうになる大衆が増えると、体制の転換が起きることも、歴史の教訓である。専制君主から民主政治に、果して人類は進歩してきたのかどうか。独裁色を強めるトランプ大統領、プーチン大統領あるいは習近平出席といった各国のリーダーの状況が、民主主義の限界を示すものなのかどうか、現在の社会・政治情勢は、そうした根源的な問いかけにもつながっている。

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