2020年2月5日水曜日

2020年2月5日 日経朝刊1面 働くシニアの年金減額、22年4月から縮小 制度改正、就労を後押し

下記のブログで取り上げた「70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする法改正案」閣議決定に関するものであるが、この記事の焦点は、「在職老齢年金」の見直しに当たっている。
 https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200204NY01.html
「現在は賃金と年金の合計額が月28万円を超えると年金が減る。2022年4月からはこの基準を月47万円に上げる。」という改正案である。この「在職老齢年金」による年金減額は、60歳から65歳までの厚生年金被保険者にかかるものであるが、「厚生年金の受給開始を65歳に上げる時期に差があるため、対象者は男女で異なる。男性は1957年4月2日~61年4月1日生まれ(58~62歳)、女性は57年4月2日~66年4月1日生まれ(53~62歳)で将来の年金が増える可能性がある。」ということである。
ただし、公的年金の財政的には、「年金支給額は約3千億円増えその分は将来世代の年金が減る。」としている。

「働けば年金が減る」という在職老齢年金制度は、少子高齢化の急速な進展を背景とした高齢者の就労促進という国策に、まったくそぐわない。そのため、厚生労働省は、65歳以上の在職老齢年金制度(高在労)についても、減額対象所得の引き上げを検討したのだが、月額62万円では高過ぎると言われ、月額50万円に下げても、そんな高給者の年金を増やす必要があるのかとの反発が大きく、結局、高在労の見直しはあきらめ、60歳から65歳未満の在職老齢年金制度(低在労)のみの改正案としたのである。
それでも、「働けば年金が減る」というのは、いかにもおかしい。一方で、高給者を優遇するのはおかしいというのも正論である。この矛盾を正すのは、年金制度の枠内では難しく、税制と連携した「税と社会保障の一体改革」が必要になるはずだが、今回の改正案では連携の気運は乏しく、結局は、空回りの議論に終わったといえよう。もっとも、低在労に見直しも大事な事だという指摘は多く、私もそう思う。
ともあれ、一般の国民にとって、65歳を超えて働くという状況は、これから始まるものである。「70歳現役社会」というのなら、「働けば年金が減る」という仕組みの見直しは必須であり、税制と連携した再度の検討が必要となるのも、そう遠い将来ではないだろう。

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