2020年2月5日水曜日

2020年2月5日 日経朝刊7面 (中外時評)米国ゆがめる「赤の恐怖」

小竹洋之論説委員によるもので、「1950年2月9日、米南部ウェストバージニア州ホィーリング。ジョセフ・マッカーシー上院議員の有名な演説が、ソ連との冷戦に臨む米国に災いをもたらした。」という書き出しである。この「排斥的な扇動者の台頭によって、第2次世界大戦後の「赤狩り」は頂点に達する。ソ連の原爆開発や中国の共産化などに強い危機感を抱いた米国は「反共ヒステリー」の状態に陥り、曖昧な根拠で多くの要人を糾弾したのである。」としている。
そして、「マッカーシーの演説から70年。いまの米国は中国との新冷戦のさなかにある。」とし、「米国は国際テロ組織アルカイダによる2001年9月の同時テロにも過剰反応し、アフガニスタン・イラク戦争の泥沼にはまったといわれる。中国の影におびえるあまり、かつての過ちを繰り返してほしくはない。」と結んでいる。

この記事に描かれた「赤の恐怖(Red Scare)」をベースとした「赤狩り」は、多くの米国民の脳裏に染みついているようである。当時の状況は、それほどに熾烈だったと思われるが、その様子は、『ビッグコミックオリジナル』誌の山本おさむ氏の連載マンガ『赤狩り THE RED RAT IN HOLLYWOOD』にも、生々しく描かれている。
https://bigcomicbros.net/comic/akagari/
記事では、中国との冷戦の行方を気にしているが、「赤の恐怖」は今年2020年11月の米大統領選にも、大きな影を落としている。現在、民主党の予備選が行われているが、若者に大きな支持を得ているのが、バーニー・サンダース上院議員である。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200209AA01.html
しかし、急進左派とされる彼が、大統領になるのは難しいと見込まれている。共和党支持者の富裕層の抵抗もあるだろうが、最も大きな要素は、「左派」=「赤」=「恐怖」という短絡的な大衆の思考にあるように思われる。若者には、そのような桎梏がないから、純粋な応援ができるのだとも思われる。
ウソや職権乱用の塊でありながら、経済好調を背景に、弾劾裁判をも一蹴したトランプ大統領が、再選されるのかどうか。その振る舞いは、わが国の安倍首相の状況にもつながる。一部には、トランプ大統領が再選されるようなら、仲の良い安倍首相が続投した方がよいのではないかという声まである。
山本おさむ氏のマンガでは、「赤狩り」の一派は、当時の大統領選でニクソン候補を推し、対立するケネディ候補を失脚させようと動いたように描かれている。どこまで史実に忠実なのかは分からないが、「さも、ありなん」と思わせる展開である。だが、結局、ケネディ大統領が誕生することとなった。
トランプ大統領の再選を許すのか、それとも、「赤狩り」の桎梏を離れて、新たな大統領が誕生するのか、今度の米大統領選は、米国のみならず世界の今後の情勢を左右する。

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