2020年2月12日水曜日

2020年2月12日 朝日朝刊4面 メガバンク、企業年金見直し相次ぐ 確定給付の利率変動、実質減額に

「長引く低金利を受け、メガバンクが相次いで企業年金を見直している。三井住友銀行は6月から、みずほフィナンシャルグループ(FG)は10月から、確定給付年金の利率を変動型に改める方針。今の金利環境下では利率が下がるため、実質的な減額となる。」という記事である。
「三井住友銀行も終身年金分の給付利率を6月以降に変動制へ変える。」とし、「変更前に拠出した掛け金分は減額分を補う制度も導入する。」とのことである。「三菱UFJ銀行は11年から変動制へ切り替えたという。」としている。
「厚生労働省によると、確定給付型の導入企業は08年に36・4%あったが、18年に14・1%に減少。確定拠出型はこの間に6・0%から11・4%に増えた。確定給付型の給付利率を変動に改める流れも2000年代前半ごろから続いている。」と結んでいる。

少し不思議な記事である。みずほフィナンシャルグループのこの年金制度変更については、昨年2019年11月下旬に各紙やNHKが一斉に報じている。付加的価値があるとすれば、「メガバンクが相次いで」という点になるだろうが、ならば、三井住友銀行がメインの記事になるのではないか。
ともあれ、「給付利率を変動型」にしたということなのだが、そんなことは一般企業では当たり前の事で、正直、ここまで変更が遅かったのか、としか思えない。
この記事を最初に見た時は、いよいよ「リスク分担型」の確定給付企業年金に切り替えたのか、と思ったが、そうではないようである。なお、三井住友銀行の「変更前に拠出した掛け金分は減額分を補う制度」というのは、「リスク対応掛金」の事ではないかと思われる。「リスク分担型」制度は、企業が掛金を多めに拠出する代わりに、運用が不振なら給付を減額する仕組みで、「リスク対応掛金」は、企業が掛金を多めに拠出して、運用不振に備えるものである。それらの仕組みの概要は、次の資料の40-45ページを参照されたい。
 https://www.mhlw.go.jp/content/10600000/000509684.pdf
「リスク分担型」制度は、企業に追加の掛金負担が基本的には生じないので、確定給付企業年金を退職給付会計の退職給付債務に計上しなくてもよいという極めて姑息な考え方から出てきたものであるが、労働組合の同意が得られにくいだけでなく、極めて複雑な制度である。労使のためになるとは到底考えられないものである。企業年金の制度設計を担う金融機関でも、まったく採用の動きがないことが露呈したと言えよう。
気がかりなのは、確定給付企業年金の採用企業が減少してきていることである。私は、この背景には、受給権者分の債務が加入者分との対比で増加しており、企業活動に寄与しない退職者分であることから、運用不振の場合の穴埋めが、株主にも現役の従業員にも、理解してもらえない点にあると思っている。ソニーが2018年10月に確定給付企業年金から全面的に確定拠出年金に移行するとの方針を発表した背景には、この点が大きいと思っている。その観点からすると、退職給付債務について、加入者分と退職者分とを区分していない現況は、企業の将来の動向を見る上で、不足があるともいえるであろう。
また、「確定拠出型」が増えているとしているが、中小企業では、元の退職金の規模が小さく投資教育の負担もあって、活用されていない。確定給付企業年金の方も、退職者の管理が必要になるため活用されておらず、税制適格退職年金の廃止によって、中小企業は企業年金から離脱した形になっている。中小企業を企業年金に復帰させるのが最大の課題であるはずだが、この点での検討や対応は、遅れている。

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