2020年2月12日水曜日

2020年2月12日 日経夕刊6面 定年後の働き方とお金(中) 厚生年金、高収入で減額も

問答方式の記事で、「定年後も元気なうちはバリバリ働かないといけないと思ったんだけど、稼ぎすぎると年金が減らされてしまう」「会社員などが加入している厚生年金の月額と働いて得た給与などの月額の合計が一定の基準額を超えると、厚生年金が減ったり支給停止になったりする」という在職老齢年金を話題にしているものである。
「60代前半の基準額を28万円から47万円に引き上げる方針」や「65歳以降も働いて厚生年金の保険料を払う人について…毎年1回計算して年金額に反映する仕組みに変える」という「在職定時改定」が、法案として審議されることにも触れられている。
また、「年金の受給を遅らせるとお得」ということで、「働き続けていて年金収入に頼らなくていい人は、繰り下げて受給額を増やす手もある」「65歳時点の年金額を基準に受給を1カ月繰り下げるごとに0.7%増額する」として、繰り下げ支給の仕組みにも触れている。また、「年金の繰り下げをしたからといって在職老齢年金の基準額を気にしなくていいわけではない」とし、「減額された金額を基に将来の年金額が増額されるから」と注意点も明確である。
なお、この記事でのコメントで、社会保険労務士の森本幸人氏は、「最良の老後対策は夫婦で一年でも長く厚生年金に加入しながら働き、将来の年金額を増やすことでしょう」としつつ、「フリーランスで収入を増やしたりするのも手」とし、「働き長生きに備えるか、家族で話し合うことが重要です。」と結んでいる。

バランスの良い記事で、読者に親しみやすい問答形式で、この問題についての、ほとんどすべての事項に触れている。法改正の動向は、当ブログでも論評している。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200205NA01.html
注意を付け加えるとすれば、「年金の受給開始年齢は、自ら申請することで早めたり遅らせたりすることができる」という点であるが、「遅らせる」申請は必要ではない。「支給開始」を請求するだけであり、請求しなければ、自動的に遅らせたことになる。この選択を求める通知が65歳になった時点で日本年金機構から来るが、多くの人は、「もらえるものなら、今からもらった方がよい」と考えるようで、支給開始の選択をする傾向があるようである。
誤解があるのは、請求せずに遅らせたとしても、65歳から請求時点までの年金がもらえなくなるわけではない点である。各期の年金受給の時効期間は5年間であり、5年以内の分は、遡って一時金で支給される。このことを知っていれば、慌てて支給請求する必要はまったくなく、70歳までの5年間の間に、遡って増額前の年金を受給した方がいいの、それとも税額後の年金を今後受給した方がいいのかを、冷静に考えることができることになる。少なくとも、直ちに年金をもらい始めても、結局、低金利の預金とかにするのなら、年率4.2%で増加して死ぬまで支払われる年金の選択肢を持ったままの方がよいのではないか。
年金は、「知って得する」ということはあまりないかもしれないが、「知らないで損する」ことは少なくない。このような記事を契機として、自分に関係する年金については、自ら正しい知識を求めるようにした方がよいであろう。そのために、最も有益なのは、日本年金機構の各種のパンフレットである。
https://www.nenkin.go.jp/pamphlet/index.html
断片的な伝聞や、不安やお得情報と題すると売れる週刊誌などの情報を鵜呑みにすると、思わぬ落とし穴に落ちることもある。例えば、「年金は破綻するから、保険料は払わない方がいい」と書いている輩が、自分ではしっかりと年金保険料を支払っていることは、大いにあり得る。自分で調べ、考える努力を怠ってはならないことは、世間のすべてのことに当てはまるだろう。

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