★今回の論点:オンライン教育の効用と課題
2020年5月9日 朝日夕刊1面 ●オンライン授業、大学手探り 参加人数超え入れず
この記事は、「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて学内への立ち入りを禁止する全国の大学が、続々とオンライン授業を始めている。…だが、4月に先行した大学ではトラブルも発生。どんな課題が見えてきたのか。」というものである。
「文部科学省が4月23日現在で集計したところ、全国の大学の99%がオンライン授業を「実施」「検討中」としていた。だが、4月に始めた大学では「動作が遅い」「授業に参加できない」といったトラブルが相次いだ。全国大学生活協同組合連合会が4月に実施したアンケートでは、オンライン授業中に通信が「かなり途切れ、ストレスを感じる」「時々途切れる」と回答した学生は4割近くに達した。」とのことである。
加えて、「オンライン授業を行う上でのもう一つのネックは、学生の通信環境だ。昭和女子大(東京都)の高木俊雄准教授のゼミ生による同大学生へのアンケートでは、回答者155人のうち98%は自宅にネット環境が整っているとしたが、「通信制限がない」は55%にとどまった。」としている。
「そんな中、こうした動きと一線を画すオンライン授業をしているのが、共愛学園前橋国際大(前橋市)だ。今月7日から、文字・文書資料が中心で通信負荷の低いシステムを活用している。学生の1割程度が動画配信を中心とした授業を受けられる環境にない、と見込むためだ。」という学校もある。「(1)テレビ会議システムなどを使う同時双方向型(2)授業の動画などを学生が好きな時間に受講するオンデマンド型(3)テキスト配信型がある。」が、大森昭生学長は「モバイル端末の入手も難しい状況で、無理を強いて取り残される学生を生まないことを第一に考えた。データ容量を気にせずスマホで双方向性を担保できるのが大きい」としているそうである。
今回のコロナ・ショックで明るみに出たのは、感染症対策と情報機器の活用において、日本は世界で大きく後れをとっているという事実である。前者については、一向に増えないPCR検査が、やろうとしても機器と人員が圧倒的に不足していることが明るみにでた。
そして、後者については、はかどらないテレ・ワークに加えて、オンライン教育での、この惨憺たる有様を見て、絶句した人も多いのではないだろうか。そこには、マリオ・ブラザーズなどのテレビゲームで世界を席巻した面影すらない。
この状態で、IT人材が不足しているなどと企業が言っているのが笑わせる。そもそも、新卒一括採用で、協調性重視の仲良しグループを形成してきた帰結が、この有様なのである。専門家の育成・処遇を怠ってきたツケは大きい。
そして、大学教育の現場でも、目を覆う混乱が生じている。教員の中には、パソコンの操作すら覚束ないのではないかと思える人もいる。オンライン教材と聞けば、自分が俳優みたいになって動画配信する必要があると思い込んでいる人もいる。
もっとも、企業や大学ばかりではない。東京都が毎日発表していた新型コロナの感染者数が誤っていたのは、各保健所からのFAX連絡が未着や重複だったからでそうである。もう何年も前に、米国の年金研究者と話をしていた時、日本ではFAXを日常的に使っていると伝えると、目を丸くして驚き、米国ではスミソニアン博物館まで行かないと見られないのではないかと言っていたのが、冗談とはほど遠い現実だったのだと思い起こされる。
日本を訪れる外国人が、無料のWIFIが少ないことに困惑し、有料の通信網の金額の高さに驚愕していたことが、実は日本の後進性の証なのだということが、あからさまになった今後、果して、どのように社会を変革すればよいのだろうか。
新型コロナが、幕末の黒船、第二次世界大戦での敗戦に続く、未曾有の危機であるが大きなチャンスでもあるという契機になるのかどうかは、これからの我々日本人一人ひとりの取り組みにかかっている。
2020年5月9日土曜日
2020年5月8日金曜日
2020年5月8日 日経夕刊9面 ●在宅就活、学生奮闘 志望見つめ直す機会に ウェブ面接に戸惑い
2020年5月10日 朝日朝刊1面 ●就活一変、戸惑う学生 コロナで説明会オンライン化
2020年5月10日 朝日朝刊1面 ●就活一変、戸惑う学生 コロナで説明会オンライン化
最初の記事は、「新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛が求められるなか、来春卒業の学生たちが「在宅就活」に奮闘している。」というものである。
「対面での面接や会社説明会が軒並み延期や中止となり、自宅で戸惑いながら「ウェブ面接」や情報収集に取り組む。慣れない環境に企業側も手探りだが、志望先を見つめ直す機会にと前向きに捉える学生もいる。」としている。
「就職情報会社のディスコ(東京)が3月下旬に全国の企業を対象に実施した調査によると、新型コロナの影響でウェブ面接を導入した企業は24.1%で、もともと実施予定だった企業と合わせて36.0%に上った。ウェブセミナーを実施した企業は半数を超えた。一方で対面での面接を延期した企業は少なくない。」とのことである。
「ディスコの武井房子上席研究員は「ウェブ上でのやりとりには限界があり、人柄を重視する日本の新卒採用の現場で今後も導入が進むかは分からない」とみる。学生にとっては時間や場所の制約が小さく、企業との接点を増やせる利点があるとし「自分の知らない業界や企業にも積極的に目を向け、有意義な就職活動に生かしてほしい」と話す。」と結んでいる。
後の記事は、「例年夏にかけて本格化する大学生の就職活動が、新型コロナウイルスの影響で様変わりしている。会社説明会は軒並み中止され、対面での面接試験もめどが立たない。オンラインでの選考が急速に広がるなか、学生たちを支える大学も対応に追われている。」というものである。
「就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが各地で予定していた合同企業説明会も5月末まで中止になった。多くの企業は対面での説明会や面接を取りやめ、オンライン選考に切り替えている。」としている。「この前まで売り手市場だったのに、一気に採用が抑制されないかが気がかりだ」との学生の声も掲載されている。
大学側でも、金沢工業大のテレビ会議システムを使った履歴書の添削、明治大でのオンライン会議システムでのグループ相談会、近畿大でのホームページにウェブ採用に関する記事の掲示、神田外語大でのオンラインでの「OBOG交流会」、などの動きが出てきているそうである。
一方、「就職情報会社の学情が4月1~10日、来春卒業予定の大学生・大学院生を調べたところ、就職活動をしていない学生が34・9%と前年より21・6ポイント増えた。」という。「リクルートキャリアの調査によると、来春卒業する大学生の4月1日時点の就職内定率は31・3%と過去最高を更新する一方、企業側には採用活動を後ろ倒しにする傾向も出ている。」ともしている。
最後は、法政大の児美川孝一郎教授の「先輩と同じペースで考えなくていい。大事なのはまず落ち着くこと。冷静に対応してほしい」とのコメントで結んでいる。
まず、「この前まで売り手市場だったのに」とか「先輩と同じペース」といった甘い考え方は捨てることである。「高い内定率」という報道も一部にあるが、あくまでもコロナ・ショックより前の状況であり、何の参考にもならないので、焦る必要はない。
だが、「就職活動をしていない学生」の割合が高いのは、気がかりである。大学や企業が開催してくれる説明会やセミナーなどに参加することだけが就活ではない。そもそも、そのような受け身の就活の機会は激減している。大事なのは、自分自身で業界や企業の研究をし、興味を持った企業にホームページ上からアプローチしてみるといった積極的な行動である。この際に、大企業を中心にすることは、オススメしない。大企業には、同じように考える学生からのアプローチが急増しているはずで、採用担当者もイチイチ取り合ってはいられないから、公式の採用の日程や手法で進めていくはずだからである。
今の時期は、規模に関わりなく、関心の持てる企業に接触し、あわよくば内定を得ることに注力すべきである。そううまく運ぶとは思えないが、自分で行動して結果を生み出すことは、今後の就活においても貴重な経験になる。
焦る必要はないが、何もせずに無為に時を過ごしてはならない。そのことは、講義の受講なども含めた日常生活の万端に通じることである。
2020年5月6日水曜日
2020年5月6日 日経朝刊1面 ●学費減免 2割満たず 国立大5校のみ 支援拡充が急務 30大学調査
2020年5月6日 日経朝刊23面 ●政府や大学、生活困窮の学生に支援 米・カナダには規模見劣り
2020年5月9日 朝日朝刊3面 ●困窮学生に10万円、要望 公明 文科相検討「思いは同じ」
最初の記事は、「新型コロナウイルスの影響でアルバイト先を失うなどした学生に対する主な大学30校の経済的支援で、学費の減免措置を取っているのが国立大5校にとどまることが分かった。緊急事態宣言の延長を受け、安倍晋三首相は「アルバイト学生への支援」を明言したが、主要国と比べて支援策は十分とはいえない状況だ。」というものである。
「日本経済新聞が5日までに全国の国公立大と私立大のうち学生数上位の各15校に学費の減免制度について聞いたところ、30校中、制度の新設・拡充を決めたのは、東京大や大阪大など国立大5校と全体の2割に届かず、私立大は1校もなかった。」とのことである。
「大学生(昼間部)約290万人のうち8割強がアルバイトに従事している。」状況の中、「経済的に困窮し退学を検討していると答えた学生は全体の20.3%に達した。」ということで、「首相は4日の記者会見で、学生への支援について「与党の検討を踏まえ速やかに追加的な対策を講じる」と述べており、追加の経済対策の焦点に浮上しつつある。」と結んでいる。
次の記事は、最初の記事を受けたもので、「政府は4月に始まった低所得世帯向けの学費減免制度の対象に、新型コロナで家計が急変した世帯を加え、2020年度補正予算に7億円を計上した。追加措置として授業料の納付猶予や減免を大学に要請し、対応した大学への助成などが浮かんでいる。」としている。
その上で、「ただ、世界に目を向けると、支援の規模は十分とは言えない。米国は生活に困窮する学生に、各大学を通じて総額100億ドル(約1兆円)を援助する政策を決めた。カナダも総額約6900億円の支援計画を公表しており、5月から8月まで月10万円を給付する。」とのことである。
最後は、「桜美林大の小林雅之教授(教育社会学)は「今後の社会を担う若者のため、政府は大学と連携すべきだ。現在の支援制度を周知した上で、減免制度の受給基準を緩和することを検討してほしい」と強調する。幅広い学生に対し、学費減免や返済不要の奨学金を迅速に行き渡らせることが求められている。」と結んでいる。
最後の記事は、与党内の公明党の動きである。「公明党の斉藤鉄夫幹事長は8日、萩生田光一文部科学相と会談し、新型コロナウイルスの感染拡大で生活が苦しくなった大学生らに1人10万円の現金給付を求める提言書を手渡した。斉藤氏によると、萩生田氏は「思いは同じだ。早急にやりたい」と述べ、前向きな姿勢を示したという。」としている。
「対象は、外国人留学生を含む専門学校生や大学生、大学院生で、住民税が非課税となる収入水準の学生や学業や生活のためアルバイトが必要な学生の最大50万人を想定する。予算規模は500億円の見通しで、1次補正予算の予備費を充てることを軸としている。」としている。
コロナ・ショックが、様々な影響を及ぼしている。学業や生活に困窮する学生への対応も、一つの大きな課題である。しかし、一方で、事業者への家賃補助の話も出てきている。どこまでの広がりがあり、事後的に、どれだけの影響が残るのか、計り知れない。
政府の対応を見ていると、モグラ叩きの様相に思える。最低限の生活保障という憲法にも明記されている責務への対応が、これまで蔑ろにされてきたことが露呈した、と言えるのではないだろうか。
もっとも、「言うは易く、行うは難し」ということではある。「無い袖は振れない」ということで、最終的には財源、すなわち国力の問題になる。だが、迷走する場当たり対応を見ていると、当座の救援と、将来への投資が、明確に区別して意識されてはいないのではないかという気がしてならない。
例えば、大学生への学費等の支援は、何故に正当化されるのであろうか。世間には、大学まで行ける人は恵まれているという感情もあり得るだろう。また、別の例として、利幅の薄い商いをしている商店などと、1本数万円という高級酒を提供している銀座の店とでは、補償といっても一律に考えられるものではないという面もある。
「給付」は、所詮、将来の税金で賄うしかない。何故、すぐに「給付」の話になるのか、まったく理解できない。ただで貰えるものなら、何でも誰でも欲しい、というのが人情だろう。しかし、そうやってばらまけば、将来にツケがくるのが明らかである。
そこで出てくるのが、困っている人に限定して給付する、という考え方である。確かに、これなら国民の理解は得やすい。ところが、最大の問題は、「誰が困っているのか」の認定である。そこに、人手や手間をかけると、迅速な支給に到らず、費用もかさむことになる。
その点で、「全国民1人10万円支給」は、正しい政策転換であるが、何故に、これを非課税にするのか、まったく理解できない。野党が主張するように課税対象にすれば、高所得者は辞退するかもしれず、辞退しなくても後で応分の税負担を求めることができる。
もっと真剣に考えるべきは、最後のセーフティートとされる生活保護の積極的活用である。私は、生活保護を貸付方式に転換し、もっと利用しやすくすべきだと、ずっと主張してきた。
生活保護で、当面の生活資金が得られるようにできれば、命の心配はなくなる。そうすれば、新型コロナ終息後の生活に向けての計画も、落ち着いて考えることができるようになるだろう。その意味で、貸付方式の生活保護は、恩恵・慈善的なものではなくなり、将来への投資と位置付けられるものになる。
今回のコロナ・ショックで、改めて、ベーシック・インカムの検討の必要性が認識されている。その検討にあたっては、貸付方式の生活保護も視野に入れる必要があると確信する。
2020年5月6日 日経朝刊23面 ●政府や大学、生活困窮の学生に支援 米・カナダには規模見劣り
2020年5月9日 朝日朝刊3面 ●困窮学生に10万円、要望 公明 文科相検討「思いは同じ」
最初の記事は、「新型コロナウイルスの影響でアルバイト先を失うなどした学生に対する主な大学30校の経済的支援で、学費の減免措置を取っているのが国立大5校にとどまることが分かった。緊急事態宣言の延長を受け、安倍晋三首相は「アルバイト学生への支援」を明言したが、主要国と比べて支援策は十分とはいえない状況だ。」というものである。
「日本経済新聞が5日までに全国の国公立大と私立大のうち学生数上位の各15校に学費の減免制度について聞いたところ、30校中、制度の新設・拡充を決めたのは、東京大や大阪大など国立大5校と全体の2割に届かず、私立大は1校もなかった。」とのことである。
「大学生(昼間部)約290万人のうち8割強がアルバイトに従事している。」状況の中、「経済的に困窮し退学を検討していると答えた学生は全体の20.3%に達した。」ということで、「首相は4日の記者会見で、学生への支援について「与党の検討を踏まえ速やかに追加的な対策を講じる」と述べており、追加の経済対策の焦点に浮上しつつある。」と結んでいる。
次の記事は、最初の記事を受けたもので、「政府は4月に始まった低所得世帯向けの学費減免制度の対象に、新型コロナで家計が急変した世帯を加え、2020年度補正予算に7億円を計上した。追加措置として授業料の納付猶予や減免を大学に要請し、対応した大学への助成などが浮かんでいる。」としている。
その上で、「ただ、世界に目を向けると、支援の規模は十分とは言えない。米国は生活に困窮する学生に、各大学を通じて総額100億ドル(約1兆円)を援助する政策を決めた。カナダも総額約6900億円の支援計画を公表しており、5月から8月まで月10万円を給付する。」とのことである。
最後は、「桜美林大の小林雅之教授(教育社会学)は「今後の社会を担う若者のため、政府は大学と連携すべきだ。現在の支援制度を周知した上で、減免制度の受給基準を緩和することを検討してほしい」と強調する。幅広い学生に対し、学費減免や返済不要の奨学金を迅速に行き渡らせることが求められている。」と結んでいる。
最後の記事は、与党内の公明党の動きである。「公明党の斉藤鉄夫幹事長は8日、萩生田光一文部科学相と会談し、新型コロナウイルスの感染拡大で生活が苦しくなった大学生らに1人10万円の現金給付を求める提言書を手渡した。斉藤氏によると、萩生田氏は「思いは同じだ。早急にやりたい」と述べ、前向きな姿勢を示したという。」としている。
「対象は、外国人留学生を含む専門学校生や大学生、大学院生で、住民税が非課税となる収入水準の学生や学業や生活のためアルバイトが必要な学生の最大50万人を想定する。予算規模は500億円の見通しで、1次補正予算の予備費を充てることを軸としている。」としている。
コロナ・ショックが、様々な影響を及ぼしている。学業や生活に困窮する学生への対応も、一つの大きな課題である。しかし、一方で、事業者への家賃補助の話も出てきている。どこまでの広がりがあり、事後的に、どれだけの影響が残るのか、計り知れない。
政府の対応を見ていると、モグラ叩きの様相に思える。最低限の生活保障という憲法にも明記されている責務への対応が、これまで蔑ろにされてきたことが露呈した、と言えるのではないだろうか。
もっとも、「言うは易く、行うは難し」ということではある。「無い袖は振れない」ということで、最終的には財源、すなわち国力の問題になる。だが、迷走する場当たり対応を見ていると、当座の救援と、将来への投資が、明確に区別して意識されてはいないのではないかという気がしてならない。
例えば、大学生への学費等の支援は、何故に正当化されるのであろうか。世間には、大学まで行ける人は恵まれているという感情もあり得るだろう。また、別の例として、利幅の薄い商いをしている商店などと、1本数万円という高級酒を提供している銀座の店とでは、補償といっても一律に考えられるものではないという面もある。
「給付」は、所詮、将来の税金で賄うしかない。何故、すぐに「給付」の話になるのか、まったく理解できない。ただで貰えるものなら、何でも誰でも欲しい、というのが人情だろう。しかし、そうやってばらまけば、将来にツケがくるのが明らかである。
そこで出てくるのが、困っている人に限定して給付する、という考え方である。確かに、これなら国民の理解は得やすい。ところが、最大の問題は、「誰が困っているのか」の認定である。そこに、人手や手間をかけると、迅速な支給に到らず、費用もかさむことになる。
その点で、「全国民1人10万円支給」は、正しい政策転換であるが、何故に、これを非課税にするのか、まったく理解できない。野党が主張するように課税対象にすれば、高所得者は辞退するかもしれず、辞退しなくても後で応分の税負担を求めることができる。
もっと真剣に考えるべきは、最後のセーフティートとされる生活保護の積極的活用である。私は、生活保護を貸付方式に転換し、もっと利用しやすくすべきだと、ずっと主張してきた。
生活保護で、当面の生活資金が得られるようにできれば、命の心配はなくなる。そうすれば、新型コロナ終息後の生活に向けての計画も、落ち着いて考えることができるようになるだろう。その意味で、貸付方式の生活保護は、恩恵・慈善的なものではなくなり、将来への投資と位置付けられるものになる。
今回のコロナ・ショックで、改めて、ベーシック・インカムの検討の必要性が認識されている。その検討にあたっては、貸付方式の生活保護も視野に入れる必要があると確信する。
2020年5月2日土曜日
2020年5月2日 日経朝刊17面 年金 繰り下げで増やす 貯蓄や収入確保が前提
ねんきん定期便を見て「年金が少ない。間違っているのでは」という56歳の会社員の事例をベースに、「繰り下げ受給」の制度を解説するものである。
「通常は65歳からの受給開始を66歳以降に遅らせると、1カ月につき0.7%金額が増える。現在の上限である70歳を選べば最大42%増になる。60歳を過ぎてもできる、国も後押しする年金の増やし方だ。しかも2022年4月からは上限年齢が75歳に上がる見通し。そうなれば年金額は最大で84%も増える計算だ。」としている、
また、「65歳を過ぎてもらい始めたら利用できない。だが、年金受給者でも受取額を増やしたい人は、当然いる。もっと幅広く使える増額法はないか。」ということに対しては、「厚生年金に入って長く働くことだ。厚生年金の上限は原則70歳なので、65歳を過ぎて年金をもらっていても、加入して働けば増額が可能だ。」としている。
加えて、記事の補足で、「60歳まで前倒しも可能」とし、「繰り上げ受給」にも触れている。「コロナ禍で収入が減ったシニアが繰り上げの相談にくるようになった」(ある社会保険労務士)とのことで、「当面の生活費を補うためとみられるが、年金は受給を始めると原則変更できない。減った金額が一生続くことも知っておきたい。」と結んでいる。
長生きのリスクを考えると、一生もらえる公的年金の受給開始を遅らせて増額年金を受給することは、有力な選択肢になる。ところが、実際に「繰り下げ受給」を選択する人の割合は、非常に少ない。
上記資料の繰下げの12ページには、「利用率は概ね約1%程度」と記されている。
利用率が低い理由の一つとして、現在の60歳以上の人の中には、65歳まで特別支給の厚生年金を受け取っている人が多く、65歳時点で本則の厚生年金および基礎年金の受給の選択を行う必要が生じた際に、そのまま受給を続けようとする向きが多いことが考えられる。
また、厚生年金の受給を遅らせた(繰り下げた)場合、配偶者分の加給年金も受給できなくなるので、その影響を考える必要があるという点もある。さらに、共働きの場合には、配偶者の遺族年金に及ぼす影響の考慮も必要になる。
このように複雑であるため、年金事務所で確認する必要があるのだが、日本年金機構のパンフレットを見ても、どうしていいかは分からないだろう。
これは、個々のケースで違いが生じるためであるが、繰下げ受給を推奨する政府の立場と、慎重な物言いが必要となる現場の感覚との間には、ズレがあることにはなる。
一番選択しやすいのは、65歳まで支給されていなかった基礎年金の繰り下げであろう。これなら、それまでの生活費に組み込まれていなかったわけであるから、対応しやすい。
なお、一生減額が続く「繰り上げ受給」の選択者は減ってきていたが、記事にあるような、新型コロナの影響があるとすると気がかりである。年金の「繰り上げ受給」は、最後の手段でなければならないが、「年金は破綻するから早くもらわないと損」というような無責任なマスコミ報道を真に受ける人もいるであろう。このように高齢者を惑わす報道は、「年金詐欺」と言っても差し支えないものであると思う。
2020年4月30日木曜日
2020年4月30日 日経朝刊2面 ●(社説)「9月入学」は幅広い国民的な議論で
2020年4月30日 日経朝刊3面 ●9月入学 国際化に利点 米欧では主流、留学しやすく
2020年4月30日 日経朝刊3面 ●(きょうのことば)9月入学 東大が一時導入検討
最初の社説は、「新型コロナウイルスの感染拡大で学校の再開時期が見通せないなか、入学や始業の時期を9月に変更する案が政策課題として浮上してきた」ことを論じるものである。「国の会計年度や、企業の採用慣行との整合性がとれるかなど、社会的な影響は大きい」が、「秋入学が主流の海外の大学と足並みをそろえることで高等教育の国際化を進める好機だとの指摘もある。論点を整理し、教育現場の実情も踏まえた丁寧な議論を望みたい。」としている。
続く3面の記事では、「9月入学は国際競争力の向上や人材育成に利点がある。海外では秋入学が主流で、米国の一部の州や英国、フランスなどの欧州各国、中国が9月入学の体制を取る。日本のような4月入学は少数派だ。いまは海外の大学への留学や日本への留学生の受け入れには双方に時期の壁がある。これが撤廃できれば留学しやすくなり国際交流を促せる。」とし、「学生が海外で高水準の研究に触れれば、将来的に日本の競争力を高めることにつながる。留学をきっかけに海外での就職もしやすくなり、国際人材が増える。」と評価している。
「これまでは日本の採用制度が9月入学導入への大きな壁となってきた。最近は日本の企業も通年採用を取り入れるなど、環境は変化しつつある。」として、日立製作所、東芝、AGCなどの動きに触れている。
もちろん、課題もあり、公的資格試験のスケジュール、年度制を基準にした法令改正の見直しも必要となり、提言をした全国知事会では、慎重意見も出た、としている。
3面の「きょうのことば」では、社説も上記の記事も触れている東京大学の2011年の秋入学への移行検討案に言及している。この案は、結局、他大学が追随せず、実現しなかったが、「明治時代の初期は日本も9月入学だった。国の会計年度を4月からに切り替えたことなどから、大正時代にかけて4月入学に移行した」としている。
9月入学が急浮上しているのは、コロナ・ショックによる休校で、4月から9月までの年度前半について、多くの学校で、授業や講義が行われていない状況がある。設備などを整えることのできる学校は、次々とオンライン授業・講義に移っているが、対応できない学校の生徒・学生は置き去りとなっており、学習格差が深刻になってきている。9月入学の急浮上も、取り残されている学生からのSNSによる切実な訴えを一つの契機にしている。
制度を変える時は、必ず賛否が入り混じる。非常時を理由にする変更には、拙速であるという慎重論が必ず出て来るし、この社説でも、そんなニュアンスを匂わせている。それでもなお、全国知事会が提言に到った教育格差という実態は重い。
慎重論の背景には、もう一つ重大な日本人の心象がある。それは、サクラである。卒業・入学の時期に咲く桜は、いかにも新しい季節の到来を思わせる。なればこそ、明治時代の9月入学が4月入学に変更されても、すんなりと国民に受け入れられてきたのであろう。
何でも海外の状況に合わせる必要はないが、経済活動も教育研究もグローバル連携の中で進められている状況下では、学生の海外留学にすら負の影響を与えている4月入学を、この国難の時期に見直すことには大きな意味があるであろう。当然のことながら、影響を受ける世代への最大限の配慮が必要ではあるが。
2020年4月30日 日経朝刊3面 ●9月入学 国際化に利点 米欧では主流、留学しやすく
2020年4月30日 日経朝刊3面 ●(きょうのことば)9月入学 東大が一時導入検討
最初の社説は、「新型コロナウイルスの感染拡大で学校の再開時期が見通せないなか、入学や始業の時期を9月に変更する案が政策課題として浮上してきた」ことを論じるものである。「国の会計年度や、企業の採用慣行との整合性がとれるかなど、社会的な影響は大きい」が、「秋入学が主流の海外の大学と足並みをそろえることで高等教育の国際化を進める好機だとの指摘もある。論点を整理し、教育現場の実情も踏まえた丁寧な議論を望みたい。」としている。
続く3面の記事では、「9月入学は国際競争力の向上や人材育成に利点がある。海外では秋入学が主流で、米国の一部の州や英国、フランスなどの欧州各国、中国が9月入学の体制を取る。日本のような4月入学は少数派だ。いまは海外の大学への留学や日本への留学生の受け入れには双方に時期の壁がある。これが撤廃できれば留学しやすくなり国際交流を促せる。」とし、「学生が海外で高水準の研究に触れれば、将来的に日本の競争力を高めることにつながる。留学をきっかけに海外での就職もしやすくなり、国際人材が増える。」と評価している。
「これまでは日本の採用制度が9月入学導入への大きな壁となってきた。最近は日本の企業も通年採用を取り入れるなど、環境は変化しつつある。」として、日立製作所、東芝、AGCなどの動きに触れている。
もちろん、課題もあり、公的資格試験のスケジュール、年度制を基準にした法令改正の見直しも必要となり、提言をした全国知事会では、慎重意見も出た、としている。
3面の「きょうのことば」では、社説も上記の記事も触れている東京大学の2011年の秋入学への移行検討案に言及している。この案は、結局、他大学が追随せず、実現しなかったが、「明治時代の初期は日本も9月入学だった。国の会計年度を4月からに切り替えたことなどから、大正時代にかけて4月入学に移行した」としている。
9月入学が急浮上しているのは、コロナ・ショックによる休校で、4月から9月までの年度前半について、多くの学校で、授業や講義が行われていない状況がある。設備などを整えることのできる学校は、次々とオンライン授業・講義に移っているが、対応できない学校の生徒・学生は置き去りとなっており、学習格差が深刻になってきている。9月入学の急浮上も、取り残されている学生からのSNSによる切実な訴えを一つの契機にしている。
制度を変える時は、必ず賛否が入り混じる。非常時を理由にする変更には、拙速であるという慎重論が必ず出て来るし、この社説でも、そんなニュアンスを匂わせている。それでもなお、全国知事会が提言に到った教育格差という実態は重い。
慎重論の背景には、もう一つ重大な日本人の心象がある。それは、サクラである。卒業・入学の時期に咲く桜は、いかにも新しい季節の到来を思わせる。なればこそ、明治時代の9月入学が4月入学に変更されても、すんなりと国民に受け入れられてきたのであろう。
何でも海外の状況に合わせる必要はないが、経済活動も教育研究もグローバル連携の中で進められている状況下では、学生の海外留学にすら負の影響を与えている4月入学を、この国難の時期に見直すことには大きな意味があるであろう。当然のことながら、影響を受ける世代への最大限の配慮が必要ではあるが。
2020年4月28日火曜日
2020年4月28日 日経夕刊2面 ●(就活のリアル) 就活環境、来年は悪化の恐れ 「氷河期」ほどは落ち込まず
就活理論編で、雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏による論説である。
「来年の就活に関しては今年より悪化するものになるはずだ。それは、リーマン・ショック後の状況に似るだろう。」としながらも、「どの数字を見ても、リーマン後は90年代から2000年の氷河期世代ほどは落ち込んでいないのだ。」としている。
そして、「その理由はいくつか挙げられる」とし、「30~50歳世代の採用がそれほど多くないので、余剰人員が少ない」「55~65歳世代の採用が多かったので、定年退職者が多い」「氷河期の採用絞り込みがその後の企業体力低下につながったことへの反省がある」などを挙げている。
そして、「体感的には好況期はいくらでも有名企業に入れて、不況になると就職自体が難しいと感じるかもしれないが、それは間違いだ。好況期には確かに、自分の実力よりも一つ格上の企業に入れる。そして不況期には志望ランクを一つ下げねばならない。ただそれは、いずれも通常期よりも多少上下するだけだ。天国から地獄に急降下するわけではない。そこを忘れないでほしい。」と結んでいる。
この論説は、その前の2020年4月14日付日経夕刊2面の「(就活のリアル)コロナで企業の採用は 決して氷河期ではない」の注意事項を述べたというより、率直に言えば、意見変更を図ったものと思われる。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/04/20200414NY02.html
すなわち、「決して氷河期ではない」として学生に安心感を与えるには、ほど遠い状況であることを踏まえて、厳しい状況であることを知らしめようとしたものと思われる。
それでも、2000年の氷河期世代ほどではなく、「天国から地獄に急降下するわけではない」としているわけだが、学生相手であることに鑑みれば、いささか甘過ぎる注意喚起ではないかと思われる。
就活をする学生にとっては、自分達が生まれたばかりの2000年と比較されても、まったく実感が湧かないであろう。2007年のリーマンショックにしたところで、かろうじて先輩などからの体験談が耳に入るかどうかということであろう。
つまり、学生の比較対象は、ほんの数年前の就活天国だった時であろう。だとすれば、間違いなく、「天国から地獄に急降下する」ことになる。
学生にとっては、昨年までの就活スケジュールや先輩の体験談が、まったく役に立たない状況である。この状況で、焦ったり浮足立ってみても、まったく益はないわけであるから、海老原氏には、それを落ち着かせようとする意図はあるのだろうと思う。
しかし、就活戦線は、間違いなく、熾烈化する。それに備える一番の対策は、WEB面接のノウハウの習得なども大事だが、本業である学業関連の学習を進めることであろう。それには、大学が準備する講義だけでなく、就活で必要となる筆記試験対策の学習も含まれる。
採用数を厳選する時、客観的な指標の一つとなるのが、筆記試験の成績である。だから、公務員試験で筆記試験の成績の比重が高いわけだが、民間企業でも、その傾向が強くなることが考えられる。たとえ、結果的に筆記試験の重みが少なかったとしても、学習したことが無になることはない。「自身の成長のための努力」、実は、それこそが最も人生で重要なことなのではないか。
就活理論編で、雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏による論説である。
「来年の就活に関しては今年より悪化するものになるはずだ。それは、リーマン・ショック後の状況に似るだろう。」としながらも、「どの数字を見ても、リーマン後は90年代から2000年の氷河期世代ほどは落ち込んでいないのだ。」としている。
そして、「その理由はいくつか挙げられる」とし、「30~50歳世代の採用がそれほど多くないので、余剰人員が少ない」「55~65歳世代の採用が多かったので、定年退職者が多い」「氷河期の採用絞り込みがその後の企業体力低下につながったことへの反省がある」などを挙げている。
そして、「体感的には好況期はいくらでも有名企業に入れて、不況になると就職自体が難しいと感じるかもしれないが、それは間違いだ。好況期には確かに、自分の実力よりも一つ格上の企業に入れる。そして不況期には志望ランクを一つ下げねばならない。ただそれは、いずれも通常期よりも多少上下するだけだ。天国から地獄に急降下するわけではない。そこを忘れないでほしい。」と結んでいる。
この論説は、その前の2020年4月14日付日経夕刊2面の「(就活のリアル)コロナで企業の採用は 決して氷河期ではない」の注意事項を述べたというより、率直に言えば、意見変更を図ったものと思われる。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/04/20200414NY02.html
すなわち、「決して氷河期ではない」として学生に安心感を与えるには、ほど遠い状況であることを踏まえて、厳しい状況であることを知らしめようとしたものと思われる。
それでも、2000年の氷河期世代ほどではなく、「天国から地獄に急降下するわけではない」としているわけだが、学生相手であることに鑑みれば、いささか甘過ぎる注意喚起ではないかと思われる。
就活をする学生にとっては、自分達が生まれたばかりの2000年と比較されても、まったく実感が湧かないであろう。2007年のリーマンショックにしたところで、かろうじて先輩などからの体験談が耳に入るかどうかということであろう。
つまり、学生の比較対象は、ほんの数年前の就活天国だった時であろう。だとすれば、間違いなく、「天国から地獄に急降下する」ことになる。
学生にとっては、昨年までの就活スケジュールや先輩の体験談が、まったく役に立たない状況である。この状況で、焦ったり浮足立ってみても、まったく益はないわけであるから、海老原氏には、それを落ち着かせようとする意図はあるのだろうと思う。
しかし、就活戦線は、間違いなく、熾烈化する。それに備える一番の対策は、WEB面接のノウハウの習得なども大事だが、本業である学業関連の学習を進めることであろう。それには、大学が準備する講義だけでなく、就活で必要となる筆記試験対策の学習も含まれる。
採用数を厳選する時、客観的な指標の一つとなるのが、筆記試験の成績である。だから、公務員試験で筆記試験の成績の比重が高いわけだが、民間企業でも、その傾向が強くなることが考えられる。たとえ、結果的に筆記試験の重みが少なかったとしても、学習したことが無になることはない。「自身の成長のための努力」、実は、それこそが最も人生で重要なことなのではないか。
2020年4月26日日曜日
2020年4月26日 日経朝刊3面 国民年金保険料を減免 コロナで収入急減なら
2020年5月2日 朝日朝刊4面 国民年金保険料の免除、減収者向け基準緩和
いずれの記事も同じ内容であるが、日経の記事は、制度実施前の動向報道であるのに対し、朝日の記事は制度実施に伴う案内記事である点に違いがある。
日経記事は、「厚生労働省は国民年金の保険料について、収入が大幅に減少した人を免除や猶予の対象にしやすくする。新型コロナウイルス感染症の影響が広がり、国内に約170万人とされるフリーランスなどで収入が急減するケースが増えているため、基準を緩めて支援する。」としている。
「国民年金は自営業者やフリーランス、非正規社員などが加入する。加入者は約1500万人で、2020年度の保険料は月1万6540円。」で、「どんな人が免除・猶予の対象になるかは現在、2年前の所得で判断している。この場合、新型コロナによる影響を反映できないため、2月以後の月収が急減している人も対象に加える。」とのことである。
一方、「会社員らが加入する厚生年金も特例が設けられ、延滞金なしで保険料の納付猶予を受けられる。新型コロナの影響で売り上げが20%以上減少するなどした企業が対象だ。」としている。
朝日記事は、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で収入が減った人を対象に、5月1日から国民年金保険料の免除基準が緩和された。主な加入者の自営業者や非正規労働者、フリーランスは休業要請による影響を受けやすいためだ。学生を対象に納付を猶予する制度も合わせて緩和した。」というものである。
「大学や専門学校などの学生には、本人の前年所得が118万円以下なら国民年金保険料の納付が猶予される「学生納付特例」がある。今回、休業要請でアルバイトが減った学生もいることから、2月以降の所得が年間換算して118万円以下なら特例の対象にする。」としている。
詳しい案内は、日本年金機構に掲載されている。
「新型コロナウィルス感染症の影響による減収を事由とする国民年金保険料免除について」
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/0430.html
「【事業主の皆様へ】「厚生年金保険料納付猶予相談窓口」の設置について」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2020/202004/20200422.html
このような報道に触れた場合には、必ず、該当機関の情報をチェックするようにした方がよい。ただし、制度実施後でないと参照することはできない。
なお、「厚生年金保険料納付猶予」については、注意すべき点がある。事業主には、事業主負担分のみならず、従業員負担分についても納付の義務がある。納付猶予は、両方の保険料についての措置であるが、従業員分は徴収していながら、納付猶予を申請する事業主も多いと思われる。万一にも、納付猶予のままで企業が倒産すれば、従業員分の保険料も納付されていない状況になり、将来の年金額に反映されないリスクがある。したがって、従業員としては、給与明細をきちんと保管し、自分の保険料が事業主に徴収されていることを証明できる状況にしておく必要がある。
倒産といった場合のみならず、過去には、事業主が従業員分を納付せずにネゴばばしていたケースもあった。事業主に徴収されたことが証明できれば、年金額に反映することとなるので、気をつけるべきである。
2020年5月2日 朝日朝刊4面 国民年金保険料の免除、減収者向け基準緩和
いずれの記事も同じ内容であるが、日経の記事は、制度実施前の動向報道であるのに対し、朝日の記事は制度実施に伴う案内記事である点に違いがある。
日経記事は、「厚生労働省は国民年金の保険料について、収入が大幅に減少した人を免除や猶予の対象にしやすくする。新型コロナウイルス感染症の影響が広がり、国内に約170万人とされるフリーランスなどで収入が急減するケースが増えているため、基準を緩めて支援する。」としている。
「国民年金は自営業者やフリーランス、非正規社員などが加入する。加入者は約1500万人で、2020年度の保険料は月1万6540円。」で、「どんな人が免除・猶予の対象になるかは現在、2年前の所得で判断している。この場合、新型コロナによる影響を反映できないため、2月以後の月収が急減している人も対象に加える。」とのことである。
一方、「会社員らが加入する厚生年金も特例が設けられ、延滞金なしで保険料の納付猶予を受けられる。新型コロナの影響で売り上げが20%以上減少するなどした企業が対象だ。」としている。
朝日記事は、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で収入が減った人を対象に、5月1日から国民年金保険料の免除基準が緩和された。主な加入者の自営業者や非正規労働者、フリーランスは休業要請による影響を受けやすいためだ。学生を対象に納付を猶予する制度も合わせて緩和した。」というものである。
「大学や専門学校などの学生には、本人の前年所得が118万円以下なら国民年金保険料の納付が猶予される「学生納付特例」がある。今回、休業要請でアルバイトが減った学生もいることから、2月以降の所得が年間換算して118万円以下なら特例の対象にする。」としている。
詳しい案内は、日本年金機構に掲載されている。
「新型コロナウィルス感染症の影響による減収を事由とする国民年金保険料免除について」
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/0430.html
「【事業主の皆様へ】「厚生年金保険料納付猶予相談窓口」の設置について」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2020/202004/20200422.html
このような報道に触れた場合には、必ず、該当機関の情報をチェックするようにした方がよい。ただし、制度実施後でないと参照することはできない。
なお、「厚生年金保険料納付猶予」については、注意すべき点がある。事業主には、事業主負担分のみならず、従業員負担分についても納付の義務がある。納付猶予は、両方の保険料についての措置であるが、従業員分は徴収していながら、納付猶予を申請する事業主も多いと思われる。万一にも、納付猶予のままで企業が倒産すれば、従業員分の保険料も納付されていない状況になり、将来の年金額に反映されないリスクがある。したがって、従業員としては、給与明細をきちんと保管し、自分の保険料が事業主に徴収されていることを証明できる状況にしておく必要がある。
倒産といった場合のみならず、過去には、事業主が従業員分を納付せずにネゴばばしていたケースもあった。事業主に徴収されたことが証明できれば、年金額に反映することとなるので、気をつけるべきである。
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