2020年5月2日土曜日

2020年5月2日  日経朝刊17面 年金 繰り下げで増やす 貯蓄や収入確保が前提

ねんきん定期便を見て「年金が少ない。間違っているのでは」という56歳の会社員の事例をベースに、「繰り下げ受給」の制度を解説するものである。
「通常は65歳からの受給開始を66歳以降に遅らせると、1カ月につき0.7%金額が増える。現在の上限である70歳を選べば最大42%増になる。60歳を過ぎてもできる、国も後押しする年金の増やし方だ。しかも2022年4月からは上限年齢が75歳に上がる見通し。そうなれば年金額は最大で84%も増える計算だ。」としている、
また、「65歳を過ぎてもらい始めたら利用できない。だが、年金受給者でも受取額を増やしたい人は、当然いる。もっと幅広く使える増額法はないか。」ということに対しては、「厚生年金に入って長く働くことだ。厚生年金の上限は原則70歳なので、65歳を過ぎて年金をもらっていても、加入して働けば増額が可能だ。」としている。
加えて、記事の補足で、「60歳まで前倒しも可能」とし、「繰り上げ受給」にも触れている。「コロナ禍で収入が減ったシニアが繰り上げの相談にくるようになった」(ある社会保険労務士)とのことで、「当面の生活費を補うためとみられるが、年金は受給を始めると原則変更できない。減った金額が一生続くことも知っておきたい。」と結んでいる。

長生きのリスクを考えると、一生もらえる公的年金の受給開始を遅らせて増額年金を受給することは、有力な選択肢になる。ところが、実際に「繰り下げ受給」を選択する人の割合は、非常に少ない。
上記資料の繰下げの12ページには、「利用率は概ね約1%程度」と記されている。
利用率が低い理由の一つとして、現在の60歳以上の人の中には、65歳まで特別支給の厚生年金を受け取っている人が多く、65歳時点で本則の厚生年金および基礎年金の受給の選択を行う必要が生じた際に、そのまま受給を続けようとする向きが多いことが考えられる。
また、厚生年金の受給を遅らせた(繰り下げた)場合、配偶者分の加給年金も受給できなくなるので、その影響を考える必要があるという点もある。さらに、共働きの場合には、配偶者の遺族年金に及ぼす影響の考慮も必要になる。
このように複雑であるため、年金事務所で確認する必要があるのだが、日本年金機構のパンフレットを見ても、どうしていいかは分からないだろう。
これは、個々のケースで違いが生じるためであるが、繰下げ受給を推奨する政府の立場と、慎重な物言いが必要となる現場の感覚との間には、ズレがあることにはなる。
一番選択しやすいのは、65歳まで支給されていなかった基礎年金の繰り下げであろう。これなら、それまでの生活費に組み込まれていなかったわけであるから、対応しやすい。
なお、一生減額が続く「繰り上げ受給」の選択者は減ってきていたが、記事にあるような、新型コロナの影響があるとすると気がかりである。年金の「繰り上げ受給」は、最後の手段でなければならないが、「年金は破綻するから早くもらわないと損」というような無責任なマスコミ報道を真に受ける人もいるであろう。このように高齢者を惑わす報道は、「年金詐欺」と言っても差し支えないものであると思う。

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