2020年5月6日水曜日

2020年5月6日 日経朝刊1面 ●学費減免 2割満たず 国立大5校のみ 支援拡充が急務 30大学調査
2020年5月6日 日経朝刊23面 ●政府や大学、生活困窮の学生に支援 米・カナダには規模見劣り
2020年5月9日 朝日朝刊3面 ●困窮学生に10万円、要望 公明 文科相検討「思いは同じ」

最初の記事は、「新型コロナウイルスの影響でアルバイト先を失うなどした学生に対する主な大学30校の経済的支援で、学費の減免措置を取っているのが国立大5校にとどまることが分かった。緊急事態宣言の延長を受け、安倍晋三首相は「アルバイト学生への支援」を明言したが、主要国と比べて支援策は十分とはいえない状況だ。」というものである。
「日本経済新聞が5日までに全国の国公立大と私立大のうち学生数上位の各15校に学費の減免制度について聞いたところ、30校中、制度の新設・拡充を決めたのは、東京大や大阪大など国立大5校と全体の2割に届かず、私立大は1校もなかった。」とのことである。
「大学生(昼間部)約290万人のうち8割強がアルバイトに従事している。」状況の中、「経済的に困窮し退学を検討していると答えた学生は全体の20.3%に達した。」ということで、「首相は4日の記者会見で、学生への支援について「与党の検討を踏まえ速やかに追加的な対策を講じる」と述べており、追加の経済対策の焦点に浮上しつつある。」と結んでいる。

次の記事は、最初の記事を受けたもので、「政府は4月に始まった低所得世帯向けの学費減免制度の対象に、新型コロナで家計が急変した世帯を加え、2020年度補正予算に7億円を計上した。追加措置として授業料の納付猶予や減免を大学に要請し、対応した大学への助成などが浮かんでいる。」としている。
その上で、「ただ、世界に目を向けると、支援の規模は十分とは言えない。米国は生活に困窮する学生に、各大学を通じて総額100億ドル(約1兆円)を援助する政策を決めた。カナダも総額約6900億円の支援計画を公表しており、5月から8月まで月10万円を給付する。」とのことである。
最後は、「桜美林大の小林雅之教授(教育社会学)は「今後の社会を担う若者のため、政府は大学と連携すべきだ。現在の支援制度を周知した上で、減免制度の受給基準を緩和することを検討してほしい」と強調する。幅広い学生に対し、学費減免や返済不要の奨学金を迅速に行き渡らせることが求められている。」と結んでいる。

最後の記事は、与党内の公明党の動きである。「公明党の斉藤鉄夫幹事長は8日、萩生田光一文部科学相と会談し、新型コロナウイルスの感染拡大で生活が苦しくなった大学生らに1人10万円の現金給付を求める提言書を手渡した。斉藤氏によると、萩生田氏は「思いは同じだ。早急にやりたい」と述べ、前向きな姿勢を示したという。」としている。
「対象は、外国人留学生を含む専門学校生や大学生、大学院生で、住民税が非課税となる収入水準の学生や学業や生活のためアルバイトが必要な学生の最大50万人を想定する。予算規模は500億円の見通しで、1次補正予算の予備費を充てることを軸としている。」としている。

コロナ・ショックが、様々な影響を及ぼしている。学業や生活に困窮する学生への対応も、一つの大きな課題である。しかし、一方で、事業者への家賃補助の話も出てきている。どこまでの広がりがあり、事後的に、どれだけの影響が残るのか、計り知れない。
政府の対応を見ていると、モグラ叩きの様相に思える。最低限の生活保障という憲法にも明記されている責務への対応が、これまで蔑ろにされてきたことが露呈した、と言えるのではないだろうか。
もっとも、「言うは易く、行うは難し」ということではある。「無い袖は振れない」ということで、最終的には財源、すなわち国力の問題になる。だが、迷走する場当たり対応を見ていると、当座の救援と、将来への投資が、明確に区別して意識されてはいないのではないかという気がしてならない。
例えば、大学生への学費等の支援は、何故に正当化されるのであろうか。世間には、大学まで行ける人は恵まれているという感情もあり得るだろう。また、別の例として、利幅の薄い商いをしている商店などと、1本数万円という高級酒を提供している銀座の店とでは、補償といっても一律に考えられるものではないという面もある。
「給付」は、所詮、将来の税金で賄うしかない。何故、すぐに「給付」の話になるのか、まったく理解できない。ただで貰えるものなら、何でも誰でも欲しい、というのが人情だろう。しかし、そうやってばらまけば、将来にツケがくるのが明らかである。
そこで出てくるのが、困っている人に限定して給付する、という考え方である。確かに、これなら国民の理解は得やすい。ところが、最大の問題は、「誰が困っているのか」の認定である。そこに、人手や手間をかけると、迅速な支給に到らず、費用もかさむことになる。
その点で、「全国民1人10万円支給」は、正しい政策転換であるが、何故に、これを非課税にするのか、まったく理解できない。野党が主張するように課税対象にすれば、高所得者は辞退するかもしれず、辞退しなくても後で応分の税負担を求めることができる。
もっと真剣に考えるべきは、最後のセーフティートとされる生活保護の積極的活用である。私は、生活保護を貸付方式に転換し、もっと利用しやすくすべきだと、ずっと主張してきた。
生活保護で、当面の生活資金が得られるようにできれば、命の心配はなくなる。そうすれば、新型コロナ終息後の生活に向けての計画も、落ち着いて考えることができるようになるだろう。その意味で、貸付方式の生活保護は、恩恵・慈善的なものではなくなり、将来への投資と位置付けられるものになる。
今回のコロナ・ショックで、改めて、ベーシック・インカムの検討の必要性が認識されている。その検討にあたっては、貸付方式の生活保護も視野に入れる必要があると確信する。

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