2020年4月30日木曜日

2020年4月30日 日経朝刊2面 ●(社説)「9月入学」は幅広い国民的な議論で
2020年4月30日 日経朝刊3面 ●9月入学 国際化に利点 米欧では主流、留学しやすく
2020年4月30日 日経朝刊3面 ●(きょうのことば)9月入学 東大が一時導入検討

最初の社説は、「新型コロナウイルスの感染拡大で学校の再開時期が見通せないなか、入学や始業の時期を9月に変更する案が政策課題として浮上してきた」ことを論じるものである。「国の会計年度や、企業の採用慣行との整合性がとれるかなど、社会的な影響は大きい」が、「秋入学が主流の海外の大学と足並みをそろえることで高等教育の国際化を進める好機だとの指摘もある。論点を整理し、教育現場の実情も踏まえた丁寧な議論を望みたい。」としている。

続く3面の記事では、「9月入学は国際競争力の向上や人材育成に利点がある。海外では秋入学が主流で、米国の一部の州や英国、フランスなどの欧州各国、中国が9月入学の体制を取る。日本のような4月入学は少数派だ。いまは海外の大学への留学や日本への留学生の受け入れには双方に時期の壁がある。これが撤廃できれば留学しやすくなり国際交流を促せる。」とし、「学生が海外で高水準の研究に触れれば、将来的に日本の競争力を高めることにつながる。留学をきっかけに海外での就職もしやすくなり、国際人材が増える。」と評価している。
「これまでは日本の採用制度が9月入学導入への大きな壁となってきた。最近は日本の企業も通年採用を取り入れるなど、環境は変化しつつある。」として、日立製作所、東芝、AGCなどの動きに触れている。
もちろん、課題もあり、公的資格試験のスケジュール、年度制を基準にした法令改正の見直しも必要となり、提言をした全国知事会では、慎重意見も出た、としている。

3面の「きょうのことば」では、社説も上記の記事も触れている東京大学の2011年の秋入学への移行検討案に言及している。この案は、結局、他大学が追随せず、実現しなかったが、「明治時代の初期は日本も9月入学だった。国の会計年度を4月からに切り替えたことなどから、大正時代にかけて4月入学に移行した」としている。

9月入学が急浮上しているのは、コロナ・ショックによる休校で、4月から9月までの年度前半について、多くの学校で、授業や講義が行われていない状況がある。設備などを整えることのできる学校は、次々とオンライン授業・講義に移っているが、対応できない学校の生徒・学生は置き去りとなっており、学習格差が深刻になってきている。9月入学の急浮上も、取り残されている学生からのSNSによる切実な訴えを一つの契機にしている。
制度を変える時は、必ず賛否が入り混じる。非常時を理由にする変更には、拙速であるという慎重論が必ず出て来るし、この社説でも、そんなニュアンスを匂わせている。それでもなお、全国知事会が提言に到った教育格差という実態は重い。
慎重論の背景には、もう一つ重大な日本人の心象がある。それは、サクラである。卒業・入学の時期に咲く桜は、いかにも新しい季節の到来を思わせる。なればこそ、明治時代の9月入学が4月入学に変更されても、すんなりと国民に受け入れられてきたのであろう。
何でも海外の状況に合わせる必要はないが、経済活動も教育研究もグローバル連携の中で進められている状況下では、学生の海外留学にすら負の影響を与えている4月入学を、この国難の時期に見直すことには大きな意味があるであろう。当然のことながら、影響を受ける世代への最大限の配慮が必要ではあるが。

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