2020年5月9日土曜日

★今回の論点:オンライン教育の効用と課題

2020年5月9日 朝日夕刊1面 ●オンライン授業、大学手探り 参加人数超え入れず

この記事は、「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて学内への立ち入りを禁止する全国の大学が、続々とオンライン授業を始めている。…だが、4月に先行した大学ではトラブルも発生。どんな課題が見えてきたのか。」というものである。
「文部科学省が4月23日現在で集計したところ、全国の大学の99%がオンライン授業を「実施」「検討中」としていた。だが、4月に始めた大学では「動作が遅い」「授業に参加できない」といったトラブルが相次いだ。全国大学生活協同組合連合会が4月に実施したアンケートでは、オンライン授業中に通信が「かなり途切れ、ストレスを感じる」「時々途切れる」と回答した学生は4割近くに達した。」とのことである。
加えて、「オンライン授業を行う上でのもう一つのネックは、学生の通信環境だ。昭和女子大(東京都)の高木俊雄准教授のゼミ生による同大学生へのアンケートでは、回答者155人のうち98%は自宅にネット環境が整っているとしたが、「通信制限がない」は55%にとどまった。」としている。
「そんな中、こうした動きと一線を画すオンライン授業をしているのが、共愛学園前橋国際大(前橋市)だ。今月7日から、文字・文書資料が中心で通信負荷の低いシステムを活用している。学生の1割程度が動画配信を中心とした授業を受けられる環境にない、と見込むためだ。」という学校もある。「(1)テレビ会議システムなどを使う同時双方向型(2)授業の動画などを学生が好きな時間に受講するオンデマンド型(3)テキスト配信型がある。」が、大森昭生学長は「モバイル端末の入手も難しい状況で、無理を強いて取り残される学生を生まないことを第一に考えた。データ容量を気にせずスマホで双方向性を担保できるのが大きい」としているそうである。

今回のコロナ・ショックで明るみに出たのは、感染症対策と情報機器の活用において、日本は世界で大きく後れをとっているという事実である。前者については、一向に増えないPCR検査が、やろうとしても機器と人員が圧倒的に不足していることが明るみにでた。
そして、後者については、はかどらないテレ・ワークに加えて、オンライン教育での、この惨憺たる有様を見て、絶句した人も多いのではないだろうか。そこには、マリオ・ブラザーズなどのテレビゲームで世界を席巻した面影すらない。
この状態で、IT人材が不足しているなどと企業が言っているのが笑わせる。そもそも、新卒一括採用で、協調性重視の仲良しグループを形成してきた帰結が、この有様なのである。専門家の育成・処遇を怠ってきたツケは大きい。
そして、大学教育の現場でも、目を覆う混乱が生じている。教員の中には、パソコンの操作すら覚束ないのではないかと思える人もいる。オンライン教材と聞けば、自分が俳優みたいになって動画配信する必要があると思い込んでいる人もいる。
もっとも、企業や大学ばかりではない。東京都が毎日発表していた新型コロナの感染者数が誤っていたのは、各保健所からのFAX連絡が未着や重複だったからでそうである。もう何年も前に、米国の年金研究者と話をしていた時、日本ではFAXを日常的に使っていると伝えると、目を丸くして驚き、米国ではスミソニアン博物館まで行かないと見られないのではないかと言っていたのが、冗談とはほど遠い現実だったのだと思い起こされる。
日本を訪れる外国人が、無料のWIFIが少ないことに困惑し、有料の通信網の金額の高さに驚愕していたことが、実は日本の後進性の証なのだということが、あからさまになった今後、果して、どのように社会を変革すればよいのだろうか。
新型コロナが、幕末の黒船、第二次世界大戦での敗戦に続く、未曾有の危機であるが大きなチャンスでもあるという契機になるのかどうかは、これからの我々日本人一人ひとりの取り組みにかかっている。

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