2020年5月10日日曜日

★今回の論点:内定取消への対処の心構え

2020年5月10日 日経 朝刊 27面 ●消えた内定 救った寺 「導かれた縁」夢諦めない

この記事は、2月に新型コロナで「今回の内定を取り消しとさせていただきます」というメールを受け取った学生が、万松寺のグループ会社に入社し、「1カ月前には想像できなかった未来です」としていることを紹介したものである。
「誰にも言い出せなかった。大学の卒業式もちょっと顔を出しただけで、そそくさと退散した。」という状況の中、母の「仕方ないよ。切り替えられるまで、しばらくバイト続けたらいいんじゃない」という言葉に少しだけ気持ちが軽くなり、父の「万松寺が採用を始めたそうだよ」という言葉でホームページを調べて、「面接を受けさせていただけませんか」というメールを送るところまでたどり着く。
そして、「面接は数日後。気さくな人柄の面接官に緊張がほぐれた。終了後「内定します」と告げられた。帰り道はうれしくて笑みが止まらなかった。後日、父はスーツを買ってくれた。「いつか返せよ」。出世払いを約束した。」ということになったそうである。
一方の「万松寺は今年度の新規採用を予定していなかった」が、住職の大藤元裕さんが「自分のせいではなく不幸になる学生がいるのなら、手を差し伸べたい」ということで、急きょ募集を決めたのだそうである。「運か必然かは分からないが、導かれた縁。降りかかった試練を、彼がどれだけプラスに捉えていけるかだと思う」と将来に期待をかけているとのことである。
最後は、「腐らなくてよかった。祖父母に見守られながら一生懸命頑張りたい」として、こんな時代だからこそ明るく、前向きに生きていくと誓った、と記事は結んでいる。
なお、記事では、「大学生の就職内定率は近年右肩上がりだった」が、「新型コロナウイルスの感染拡大で内定取り消しの動きが顕在化。21年春の就職活動では会社説明会やセミナーが軒並み延期となっており、学生は就職氷河期やリーマン・ショック後のような苦戦を強いられる可能性がある。」とし、「内定を取り消された学生を自治体が採用するといった救済の動きも出ている。行き場を失う人が増えれば、さらに対策が求められそうだ。」と補足している。

まさに、「捨てる神あれば、拾う神あり」(この場合は仏だが)である。人生の縁は、どこに転がっているか分からない。ただ、単なる縁ということではなく、家族の思いやりに包まれて、自分でも思い切って行動したからこその結果である。
「長い人生、多少の挫折は未来への糧になる」と言われても、当事者にとっては、慰めにもならず、愚弄された気持ちにすらなるであろう。だが、それでも、今回のコロナ・ショックでも分かるように、何が起きるか分からないのである。例えば、憧れの旅行業界に就職できた人も、今は仕事もなく待機を余儀なくされている。国内外を問わず、大手の航空会社ですら、倒産が囁かれる状況にある。ほんの少し前に、一体、誰が、このような事態を想像したであろうか。
進化論を唱えたダーウィンは、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」としている。激変する環境は、見方を変えればチャンスでもあるのだから、変化に柔軟に対応することが求められるのである。希望を捨ててはならず、努力を投げ出してはならない。

0 件のコメント:

コメントを投稿