2020年3月2日月曜日

2020年3月2日 日経朝刊30面 (ドキュメント日本)広がる出生数ゼロ地域

「1年間に赤ちゃんが一人も生まれない「出生数ゼロ」の自治体が地方で増え始めた。少子化と過疎化が進む中、こうした地域が増えるのは確実だ。子どもが極限近くまで減った奈良県の山あいの村を訪ね、住民の暮らしを維持する方策を探った。」という記事である。
「大阪市内から車で約2時間、雪が残る山中の道を車で上ること数十分。奈良と和歌山の県境に、民家が点在する集落が見えてきた。標高は平均約900メートル、毎年雪が積もることから「奈良の北海道」と呼ばれる奈良県野迫川(のせがわ)村だ。」の事例である。
唯一の小学校の「在籍児童は7人で、校舎を共有する中学校と合わせても子どもは10人と、15人いる教職員の方が多い。授業はマンツーマン、給食は教職員も含め全員が同じ教室で取るのが日常という。」という実情だそうである。
「年2~4人生まれていた子どもも17年に1人となり、18、19年はゼロとなった。」という状況の中、「子どもには友達をたくさんつくらせたい」と考え、都市部に転出する親世代は相次ぐ、ということが起きている。そして、残った子も、「就職先が乏しく村を離れる。角谷喜一郎村長の息子2人も村外に移った。「働き口や暮らしを考えると残ってとは言いにくい」」ということになるわけである。
「地区の清掃や水道管理、田畑の手入れも行き届かなくなってクマなどの出没が増え」、「子が減れば教職員も減る」ということになる。「人口減が進む中で行政機能をどう維持するか」については、「複数の自治体が行政機能の一部を共通化したり、県が代替したりする「奈良モデル」と呼ばれる仕組み」を行っており、「村の診療所と同センターの医師が連携できるようテレビ電話システムを導入」したり、「中学校では県内の別の学校とインターネットで接続」したりして、「先端技術を駆使したり周辺市町と連携したりして行政機能の低下を防ぐこともできる。住民は過疎化や少子化を自分事と捉え、振興策や公共サービスの見直しを行政と一緒に考えるべきだ」(山梨学院大の江藤俊昭教授)という考え方を実践している。
記事では、「総務省によると、2018年に出生数がゼロの自治体は奈良県野迫川村、東京都青ケ島村、山梨県早川町、和歌山県北山村。いずれも山間部や離島にあって交通が不便な地域だ。」ということも紹介し、「18年は出生数1桁の「ゼロ予備軍」の自治体も約90と08年に比べ約3割増え、子どもが少ない地域が急速に広がっている。」としている。
最後に、厚生労働省の「令和元年(2019)人口動態統計の年間推計」に触れ、「19年の推計で日本人の国内出生数は86万4千人となり、統計開始以来初めて90万人を下回った。出生数が死亡数を下回る人口の「自然減」も51万2千人で過去最多だった。」としている。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei19/dl/2019suikei.pdf

少子化の影響は、マクロ的には語られることが多いが、こうしたミクロレベルでの実態に触れると、改めて衝撃を受ける。そのことを、「消滅可能性都市」という形で示したのが、日本創生会議による2014年(平成26年)5月8日の発表であった。
http://www.policycouncil.jp/
この時の発表で、「人口移動が収束しない場合の全国市区町村別2040年推計人口」として、2040年に若年女性が50%以上減少する市町村896(人口1万人以上373、未満523)が、「消滅可能性都市」として次のように示され、大きな衝撃を与えたのである。
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop03/prop03_2_1.pdf
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop03/prop03_2_2.pdf
これに対する反響は、すさまじいものがあり、国土交通省は、日本創成会議・人口減少問題検討分科会の増田寛也座長を国土交通政策研究所の「政策課題勉強会」招いて検討を行っている。
https://www.mlit.go.jp/pri/kouenkai/syousai/pdf/b-141105_2.pdf
「人の噂も75日」ということで、当時の衝撃は薄れたようだが、東京都心で「消滅可能性都市」としてあげられた私の住む豊島区では、地道な対策活動が続いている。
一方、日本の将来人口推計は、2015年の国勢調査をベースにした2017年調査が公表されている。
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_gaiyou.pdf
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_bukai19.pdf
私もそうだが、関心は、マクロ的な全国レベルに向かうことが多い。しかし、この推計では、地域別のものも発表されている。
http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson18/1kouhyo/gaiyo.pdf
この中で、都道府県別と市町村別の結果が、次のように示されている。
「平成 57(2045)年にはすべての都道府県で 65 歳以上人口割合が 3 割を越える。」
「平成 57(2045)年には 43 道府県で 75 歳以上人口割合が 2 割を越える。」
「平成 57(2045)年には、4 分の 1 以上の市区町村で総人口が 5 千人未満になる。」
「平成 57(2045)年には、平成 27(2015)年に比べて 0-14 歳人口が 4 割以上減少する市区町村 は 6 割を超える。」
「平成 57(2045)年には、0-14 歳人口割合 10%未満の市区町村が 2 分の 1 を超える。」
「平成 57(2045)年には、75 歳以上人口割合 30%以上の市区町村が 3 分の 1 を超える。」
見ていると頭が痛くなるような数値であるが、これが日本の置かれている状況である。
もう一つ、都道府県別のデータとして、平均年齢を見ておこう。元データは下記のように国勢調査である。
https://www.stat.go.jp/library/faq/faq02/faq02a06.html
ここから加工することになるわけだが、それを行っているサイトがある。
https://ieben.net/data/average-age/japan-tdfk.html
検証したわけではないので、あまり確定的な事は言えないが、各都道府県での高齢化の状況は、ざっと見てとれよう。なお、さらに上記データで市町村別を見れば、平均年齢が60歳を超える深刻な市町村の把握も可能であろう。
さて、どうすればいいのか。即効的な対策は見当たらない。少子化対策に地道に取り組み、記事にあるような先端技術の活用や都市間の連携で対応するしかないであろう。論点となるのは、外国人の移民をどう考えるかという点である。だが、移民推進派の中には、当面の若年層のことしか考えていない向きが多いように思われる。本格的に受け入れるつもりなら、その人や家族の老後まで考えなければならない。そのためには、現在の日本国民への対処をきちんと行う必要がある。やはり、「魔法の杖」はないのである。

0 件のコメント:

コメントを投稿