2020年3月2日月曜日

2020年3月2日 日経朝刊17面 今こそオンライン教育 新型コロナ、休校で注目

「新型コロナウイルスの感染拡大リスクの波が教育現場にも押し寄せている。政府は全国の小中高校などに臨時休校を要請し、高等教育を含めた教育活動が当面の間、滞りかねない。「学校という場に集まらず勉強を続ける方法」として、IT(情報技術)を活用した教育サービス「エドテック」への注目が高まっている。」との記事である。
「中国全土では、学校だけでなく企業も在宅勤務を一斉に始めている。それができるのも、「オンラインで授業やビデオ会議ができるプラットフォームが充実しているという土台があるから」」だという。
また、「新型コロナの感染拡大に備え、ITを活用した新たな教育サービスを提供する動きも出ている。タブレット端末を使った人工知能(AI)教材を塾や予備校に提供しているアタマプラス(東京・品川)は、自宅のパソコンやタブレットでも同じように学習できるシステムを緊急に開発。導入校に配布を始めた。」とのことである。
「オンライン教育で日本の先を行く中国では、全ネット利用者のうち約3割がすでにサービスを活用しているという。新型コロナは日本の教育現場でのICT(情報通信技術)化の遅れを浮き彫りにもしたが、エドテックが根付く契機にもなるだろう。」と結んでいる。

オンラインの授業については、すでに、次の「年金時事通信」で論評したところである。
http://www.ne.jp/asahi/kubonenkin/company/tusin/20-003.pdf
「いつでも、どこでも」学習できる仕組みは、教育現場を根本的に変革しつつある。しかし、日本では、まだ根付いていない。特に、遅れていると思うのが、大学教育である。
上記の「年金時事通信」でも言及しているオンライン・ツールを利用した「反転授業」については、次の重田 勝介氏の論文『反転授業 ICTによる教育改革の進展』を参照していただきたい。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/56/10/56_677/_html/-char/ja
この中で、「反転授業とは,授業と宿題の役割を「反転」させ,授業時間外にデジタル教材等により知識習得を済ませ,教室では知識確認や問題解決学習を行う授業形態のことを指す。」とされている。ただ、授業と宿題とを反転させるという見方は、少し皮相である。これは、小中学校レベルの教育をイメージしているからであろうが、「反転授業」の本質については、次の『反転授業の研究–思索と実践の記録』の方が明解である。
http://flipped-class.net/wp/?p=1437
すなわち、反転授業の本質は、「教育の中心を、教師中心から、生徒中心へと移動」させることであり、「教師が何を教えたのかではなく、生徒が何を学んだのかを中心に据える」ということなのである。
なお、その観点からして、「授業:学校などで、学問や技芸を教え授けること」という用語を用いるのは、適切ではない。「講義:学問の方法や成果、また、研究対象などについて、その内容・性質などを説き聞かせること」の方がふさわしい。辞書でのこの説明には、まだ教師が上位であるような気配があるが、研究会やゼミなども含む概念として、「共に学び、共に考える」というイメージを持つようが良いであろう。であれば、「反転授業」ではなく、「授業」から「(本来の)講義」へと考えた方がよいのではないか。
延々と定義について述べたのは、その概念の理解こそが、新たな教育スタイルの実践にとって重要であると考えるからである。だが、大学教育においても、「授業」レベルのものが蔓延している。本来の「講義」でなければ、学生の好奇心を刺激し、目を輝かさせることはできないであろうに。大事なのは、ツールではなく、姿勢なのである。

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