2020年2月7日 朝日朝刊13面 (コラムニストの眼)米国で増える「絶望死」 責任は社会に、投資を人に
この記事の論評については、下記の「年金時事通信」の20-002号として登載しています。
http://www.ne.jp/asahi/kubonenkin/company/tusin201405.htm
2020年2月7日金曜日
2020年2月7日 日経朝刊23面 (大機小機)日本国の資源配分を再考する
「日本の人口が減少している。この事実は、日本において人的資源が貴重化することを意味する。人的資源の有効的な活用と、将来に向けた教育が重要となる。」とする論説である。喫緊の課題として、「産業構造の刷新」「労働力の流動化」「教育」「最新技術の積極的な活用」「働くことの位置づけを政府主導で変えるべき」の5つを挙げている。
そして、5番目の「働くことの位置づけ」については、「多くの国民にとって働くことは生きる手段でしかない。技術革新によって機械が代わりに働く。人間は労働ではなく、優れたアイデアを生み出すことで貢献しうる。」とし、「機械が生み出した成果をいかに再配分し、国民の幸福感をさらに引き上げるのか。これが政府として知恵を絞るべき分野である。」と結んでいる。
「お説ごもっとも」の論説ではあるが、「働くことは生きる手段」という意識から、国民全員が脱却することができるのかどうか、そこがポイントである。例えば、先の前民主党政権の時に、少子化対策として子供手当の拡充を計画したところ、「バラマキ」として、マスコミも先頭に立って袋叩きにした。生活保護の受給者に対しては、「働かないで遊んでいられて結構なご身分だ」として、鵜の目鷹の目で行動を監視し、あげつらう。そんな国民が、連帯意識に支えられた再分配重視に進むことができるのだろうか。
もっとも、この問題は、日本国民だけのものではない。次のブログでも寸評した米国の状況も、また然りである。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200207AA13.html
結局のところ、AIの進化がもたらす状況への対処は、人類共通の課題と言えそうで、それは、資本主義とか共産主義というような体制や思想を超越したものと言えそうである。
「日本の人口が減少している。この事実は、日本において人的資源が貴重化することを意味する。人的資源の有効的な活用と、将来に向けた教育が重要となる。」とする論説である。喫緊の課題として、「産業構造の刷新」「労働力の流動化」「教育」「最新技術の積極的な活用」「働くことの位置づけを政府主導で変えるべき」の5つを挙げている。
そして、5番目の「働くことの位置づけ」については、「多くの国民にとって働くことは生きる手段でしかない。技術革新によって機械が代わりに働く。人間は労働ではなく、優れたアイデアを生み出すことで貢献しうる。」とし、「機械が生み出した成果をいかに再配分し、国民の幸福感をさらに引き上げるのか。これが政府として知恵を絞るべき分野である。」と結んでいる。
「お説ごもっとも」の論説ではあるが、「働くことは生きる手段」という意識から、国民全員が脱却することができるのかどうか、そこがポイントである。例えば、先の前民主党政権の時に、少子化対策として子供手当の拡充を計画したところ、「バラマキ」として、マスコミも先頭に立って袋叩きにした。生活保護の受給者に対しては、「働かないで遊んでいられて結構なご身分だ」として、鵜の目鷹の目で行動を監視し、あげつらう。そんな国民が、連帯意識に支えられた再分配重視に進むことができるのだろうか。
もっとも、この問題は、日本国民だけのものではない。次のブログでも寸評した米国の状況も、また然りである。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200207AA13.html
結局のところ、AIの進化がもたらす状況への対処は、人類共通の課題と言えそうで、それは、資本主義とか共産主義というような体制や思想を超越したものと言えそうである。
2020年2月6日木曜日
2020年2月6日 朝日朝刊12面 (社説)賃金の時効 原則の「5年」を早急に
「未払いの残業代などをさかのぼって会社に請求できる期間(時効)を今の過去2年分から3年分にする。そんな労働基準法改正案が国会に提出された。」ことに対する社説による論説である。
「4月施行の改正民法で、一般的なお金の支払いを請求できる期間が原則5年に統一されるのに合わせた見直しだが、なぜ賃金は3年なのか。」と疑問を呈するものである。
「働く人を守るための法律が、民法の原則を下回るルールを定めて権利を制限するのはおかしい。早急に民法と同じ5年にするべく、国会でしっかり議論しなければならない。」というのは、まさにその通りの正論である。
「厚生労働省の審議会で、労働側が改正民法と同じ5年にするよう求めたのに対し、経営側は賃金台帳といった記録を保存する事務負担が増えるなどと反対」し、「「当分の間」は3年とし、施行5年後に見直しを検討する折衷案で折り合った。」ということである。
そして、「賃金は働く人の生活の糧である。労基法が民法に優先する特例を定めたのも、保護の必要性が高いからに他ならない。労基法の趣旨、働く人たちの権利を守る視点に立ち返って考える必要がある。」と結んでいる。
論説としては、非の打ちどころのない正論である。だが、法案が提出されている以上、正論だけを振りかざしてみても、事態は改善しないであろう。
この問題を考える場合には、諸外国の状況を見てみる必要もあるだろう。審議会での議論に先立ち、学者による「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」が開催され、そこで論点整理が行われているが、その検討会の議論の中で「賃金請求権に関する外国法制の整理」が提示されている。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000211191_2.pdf
これを見ると、民法より短い賃金債権の3年という時効が、必ずしも異例というものではないことが分かる。このことが、検討会での論点整理にも影響を与えているのであろう。
ただし、この中のドイツの項にある「主観的起算点」という概念には注目しておく必要があるだろう。それは、「請求権が発生し、かつ債権者が請求権を基礎づけている事情及び債務者を知り、または重大な過失がなければ知っていたはずの年の末。」というものである。
これを賃金債権について考えれば、労働者は使用者が適正な賃金を払っているものと信頼しているはずであり、使用者側が適正な賃金を支払っていなかったことを知った時から、時効の起算が始まるということであろう。論点整理では、これについて、「どのような場合がそれに当たるのか専門家でないと分からず、労使で新たな紛争が生じるおそれ」があるとしている。
一方、社説では、「残業代の不払いを指摘されて100万円以上を支払った企業は18年度、1768社、総額124億円(約12万人分)にのぼる。問題が発覚した企業の多くは、労基法で定められた2年分しか払っていない。」としている。最大の問題は、このような違法な賃金不払いを、いかにして抑止するかということであろう。
そこで提案したいが、法案の骨子はそのままとしつつ、「過去3年間におうて、賃金の不払にかかる行政処分を受けた企業については、賃金債権の時効期間を5年とする」といった趣旨のただし書きを付加してはどうか。
多くの企業においては、適正な賃金が支払われているのであろう。そうでなければ、正常な労使関係は破綻する。問題は、故意または重大な過失によって賃金不払いを行っている企業であり、そのような悪質な企業は、ほとぼりがさめれば、また悪事を繰り返す可能性が高いであろう。「事務負担が増える」と5年間に反対している経営側も、適正な賃金支払いを行っていれば3年で問題ないのだから、この追加条項に反対するいわれはないであろう。
核心は、いかにして悪質企業から労働者を保護するかであろう。その本質にのっとって、法案の国会審議を行って欲しいものである。
「未払いの残業代などをさかのぼって会社に請求できる期間(時効)を今の過去2年分から3年分にする。そんな労働基準法改正案が国会に提出された。」ことに対する社説による論説である。
「4月施行の改正民法で、一般的なお金の支払いを請求できる期間が原則5年に統一されるのに合わせた見直しだが、なぜ賃金は3年なのか。」と疑問を呈するものである。
「働く人を守るための法律が、民法の原則を下回るルールを定めて権利を制限するのはおかしい。早急に民法と同じ5年にするべく、国会でしっかり議論しなければならない。」というのは、まさにその通りの正論である。
「厚生労働省の審議会で、労働側が改正民法と同じ5年にするよう求めたのに対し、経営側は賃金台帳といった記録を保存する事務負担が増えるなどと反対」し、「「当分の間」は3年とし、施行5年後に見直しを検討する折衷案で折り合った。」ということである。
そして、「賃金は働く人の生活の糧である。労基法が民法に優先する特例を定めたのも、保護の必要性が高いからに他ならない。労基法の趣旨、働く人たちの権利を守る視点に立ち返って考える必要がある。」と結んでいる。
論説としては、非の打ちどころのない正論である。だが、法案が提出されている以上、正論だけを振りかざしてみても、事態は改善しないであろう。
この問題を考える場合には、諸外国の状況を見てみる必要もあるだろう。審議会での議論に先立ち、学者による「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」が開催され、そこで論点整理が行われているが、その検討会の議論の中で「賃金請求権に関する外国法制の整理」が提示されている。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000211191_2.pdf
これを見ると、民法より短い賃金債権の3年という時効が、必ずしも異例というものではないことが分かる。このことが、検討会での論点整理にも影響を与えているのであろう。
ただし、この中のドイツの項にある「主観的起算点」という概念には注目しておく必要があるだろう。それは、「請求権が発生し、かつ債権者が請求権を基礎づけている事情及び債務者を知り、または重大な過失がなければ知っていたはずの年の末。」というものである。
これを賃金債権について考えれば、労働者は使用者が適正な賃金を払っているものと信頼しているはずであり、使用者側が適正な賃金を支払っていなかったことを知った時から、時効の起算が始まるということであろう。論点整理では、これについて、「どのような場合がそれに当たるのか専門家でないと分からず、労使で新たな紛争が生じるおそれ」があるとしている。
一方、社説では、「残業代の不払いを指摘されて100万円以上を支払った企業は18年度、1768社、総額124億円(約12万人分)にのぼる。問題が発覚した企業の多くは、労基法で定められた2年分しか払っていない。」としている。最大の問題は、このような違法な賃金不払いを、いかにして抑止するかということであろう。
そこで提案したいが、法案の骨子はそのままとしつつ、「過去3年間におうて、賃金の不払にかかる行政処分を受けた企業については、賃金債権の時効期間を5年とする」といった趣旨のただし書きを付加してはどうか。
多くの企業においては、適正な賃金が支払われているのであろう。そうでなければ、正常な労使関係は破綻する。問題は、故意または重大な過失によって賃金不払いを行っている企業であり、そのような悪質な企業は、ほとぼりがさめれば、また悪事を繰り返す可能性が高いであろう。「事務負担が増える」と5年間に反対している経営側も、適正な賃金支払いを行っていれば3年で問題ないのだから、この追加条項に反対するいわれはないであろう。
核心は、いかにして悪質企業から労働者を保護するかであろう。その本質にのっとって、法案の国会審議を行って欲しいものである。
2020年2月6日 日経朝刊2面 (迫真)惑う就活「新ルール」(4)「採用弱者」中小の逆襲
「就活の前倒しが進み、最近は学生の動きが読めない」と「中小企業の採用担当者は頭を抱える」との書き出しの記事である。「リクルートワークス研究所によると、2020年卒の求人倍率は従業員300人未満の企業で8.6倍。5千人以上(0.4倍)との格差は大きい。大手が通年採用に本格移行すれば一段と難しくなる。」という。
これに対して、「「採用弱者」とされる中小企業も、ただ手をこまねいているわけではない。」として、二つの事例を紹介している。
一つは、システム開発の日本ナレッジ(東京・台東)による「地方の大学生や専門学校生に照準」である。「脱東京」に活路を求める、としている。
もう一つは、板金加工の浜野製作所(東京・墨田)で、「これまで一緒に仕事をした全国の大学や高等専門学校の先生を通じ、インターンシップに参加する学生を募る。」としている。このインターンは、「4人の学生を前後半に分けて約1カ月間受け入れ」だそうで、「1~2日で終わる短期間インターン」とは、まったく別物だそうである。
新卒一括採用で、数を集めて、自社流に染め上げていくという採用活動は、大きな曲がり角を迎えている。入社後に「育てる」と言われているが、それは自社の都合のよいように教育するものであって、合わない学生の離職率は、3年で3割とも言われている。
上記の最初の事例では、「東京で文系の大卒を採用してエンジニアに育てても、すぐに離職してしまう」とのことだが、その仕事への適性や興味がなければ、そうなるのは必然であろう。何とか内定を得たい学生の方も、「何でもやります」という態度を示すのだろうが、そう簡単にいくものではない。もっとも、どんな仕事でも簡単ではないのだが。
二番目のケースの「インターン」は、それが本来のものである。「1~2日で終わる短期間インターン」は、単なる顔合わせに過ぎず、仕事内容の理解につながるものではない。それは、人手不足の中の就活の事前活動に過ぎないが、経済活動が減速して人手不足が和らげば消え失せる仇花のようなものであろう。
今、新型コロナウイルスで、経済活動への影響が懸念されている。人命に関わるものであるのに、経済の事を気にする向きが少なくないのは、「地球環境より経済優先か」として「How dare you!」と一括したグレタさんに、また叱られそうだが、情報統制で新病を蔓延させた中国の政治リスクの顕在化の影響で、就活も大きな変化の節目を迎えそうである。
「就活の前倒しが進み、最近は学生の動きが読めない」と「中小企業の採用担当者は頭を抱える」との書き出しの記事である。「リクルートワークス研究所によると、2020年卒の求人倍率は従業員300人未満の企業で8.6倍。5千人以上(0.4倍)との格差は大きい。大手が通年採用に本格移行すれば一段と難しくなる。」という。
これに対して、「「採用弱者」とされる中小企業も、ただ手をこまねいているわけではない。」として、二つの事例を紹介している。
一つは、システム開発の日本ナレッジ(東京・台東)による「地方の大学生や専門学校生に照準」である。「脱東京」に活路を求める、としている。
もう一つは、板金加工の浜野製作所(東京・墨田)で、「これまで一緒に仕事をした全国の大学や高等専門学校の先生を通じ、インターンシップに参加する学生を募る。」としている。このインターンは、「4人の学生を前後半に分けて約1カ月間受け入れ」だそうで、「1~2日で終わる短期間インターン」とは、まったく別物だそうである。
新卒一括採用で、数を集めて、自社流に染め上げていくという採用活動は、大きな曲がり角を迎えている。入社後に「育てる」と言われているが、それは自社の都合のよいように教育するものであって、合わない学生の離職率は、3年で3割とも言われている。
上記の最初の事例では、「東京で文系の大卒を採用してエンジニアに育てても、すぐに離職してしまう」とのことだが、その仕事への適性や興味がなければ、そうなるのは必然であろう。何とか内定を得たい学生の方も、「何でもやります」という態度を示すのだろうが、そう簡単にいくものではない。もっとも、どんな仕事でも簡単ではないのだが。
二番目のケースの「インターン」は、それが本来のものである。「1~2日で終わる短期間インターン」は、単なる顔合わせに過ぎず、仕事内容の理解につながるものではない。それは、人手不足の中の就活の事前活動に過ぎないが、経済活動が減速して人手不足が和らげば消え失せる仇花のようなものであろう。
今、新型コロナウイルスで、経済活動への影響が懸念されている。人命に関わるものであるのに、経済の事を気にする向きが少なくないのは、「地球環境より経済優先か」として「How dare you!」と一括したグレタさんに、また叱られそうだが、情報統制で新病を蔓延させた中国の政治リスクの顕在化の影響で、就活も大きな変化の節目を迎えそうである。
2020年2月5日水曜日
2020年2月5日 日経朝刊21面 (大機小機)デジタル経済と安倍政権のレガシー
「本来自分のデータの価値は自分に帰属するはずだが、プラットフォーマーが人工知能(AI)やアルゴリズムを活用して初めて市場価値となる。」という状況の中、「個人情報保護を厳しくして勝手な利用を制限したり、不公正取引の観点から優越的地位の乱用を防いだりする対応が始まっている。だが、それだけでは格差拡大は収まらない。」とし、「社会規範、モラルの再構築」が必要であるとする論説である。
そして、「OECD統計による比較では、我が国の税・社会保障再分配後の平等度は大きく低下し、先進国中で最も低い部類に属する。」という状況下でも、「アベノミクスは、かたくなにトリクルダウンに固執し、本格的な税・社会保障改革に手を付けないままだ。」と批判し、「所得再分配こそ今日の国家に与えられた役割で、これに本格的に取り組んでこそ安倍長期政権のレガシーをつくることになる。」と結んだものである。
興味深い論説であるが、このところ、アベノミクスの弊害を説く論説が目につくようになっている。先にプログに書いた次も、その一つである。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200204AA12.html
結局、長期政権の弊害が露わになってきているということだが、「社会規範、モラルの再構築」に最も遠いのが安倍首相なのだから、所得再分配など望むべくもない。モリカケ問題に始まり、今回の桜騒動における安倍首相の国会答弁なとは、これで一国の首相なのかと天を仰がざるを得ない有様である。長期政権への忖度を続けてきた官僚達も、さすがに自分達だけを悪者にして乗り切ろうとする宰相の姿には、愛想が尽きているのではないか。IR汚職や選挙活動費・政治資金問題など、相次ぐ不祥事は、「組織はサンマやイワシと同じで頭から腐る」の典型例であろう。モラルなき社会からの脱却の第一歩は、頭を替えることなのではないか。
「本来自分のデータの価値は自分に帰属するはずだが、プラットフォーマーが人工知能(AI)やアルゴリズムを活用して初めて市場価値となる。」という状況の中、「個人情報保護を厳しくして勝手な利用を制限したり、不公正取引の観点から優越的地位の乱用を防いだりする対応が始まっている。だが、それだけでは格差拡大は収まらない。」とし、「社会規範、モラルの再構築」が必要であるとする論説である。
そして、「OECD統計による比較では、我が国の税・社会保障再分配後の平等度は大きく低下し、先進国中で最も低い部類に属する。」という状況下でも、「アベノミクスは、かたくなにトリクルダウンに固執し、本格的な税・社会保障改革に手を付けないままだ。」と批判し、「所得再分配こそ今日の国家に与えられた役割で、これに本格的に取り組んでこそ安倍長期政権のレガシーをつくることになる。」と結んだものである。
興味深い論説であるが、このところ、アベノミクスの弊害を説く論説が目につくようになっている。先にプログに書いた次も、その一つである。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200204AA12.html
結局、長期政権の弊害が露わになってきているということだが、「社会規範、モラルの再構築」に最も遠いのが安倍首相なのだから、所得再分配など望むべくもない。モリカケ問題に始まり、今回の桜騒動における安倍首相の国会答弁なとは、これで一国の首相なのかと天を仰がざるを得ない有様である。長期政権への忖度を続けてきた官僚達も、さすがに自分達だけを悪者にして乗り切ろうとする宰相の姿には、愛想が尽きているのではないか。IR汚職や選挙活動費・政治資金問題など、相次ぐ不祥事は、「組織はサンマやイワシと同じで頭から腐る」の典型例であろう。モラルなき社会からの脱却の第一歩は、頭を替えることなのではないか。
2020年2月5日 日経朝刊1面 働くシニアの年金減額、22年4月から縮小 制度改正、就労を後押し
下記のブログで取り上げた「70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする法改正案」閣議決定に関するものであるが、この記事の焦点は、「在職老齢年金」の見直しに当たっている。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200204NY01.html
「現在は賃金と年金の合計額が月28万円を超えると年金が減る。2022年4月からはこの基準を月47万円に上げる。」という改正案である。この「在職老齢年金」による年金減額は、60歳から65歳までの厚生年金被保険者にかかるものであるが、「厚生年金の受給開始を65歳に上げる時期に差があるため、対象者は男女で異なる。男性は1957年4月2日~61年4月1日生まれ(58~62歳)、女性は57年4月2日~66年4月1日生まれ(53~62歳)で将来の年金が増える可能性がある。」ということである。
ただし、公的年金の財政的には、「年金支給額は約3千億円増えその分は将来世代の年金が減る。」としている。
「働けば年金が減る」という在職老齢年金制度は、少子高齢化の急速な進展を背景とした高齢者の就労促進という国策に、まったくそぐわない。そのため、厚生労働省は、65歳以上の在職老齢年金制度(高在労)についても、減額対象所得の引き上げを検討したのだが、月額62万円では高過ぎると言われ、月額50万円に下げても、そんな高給者の年金を増やす必要があるのかとの反発が大きく、結局、高在労の見直しはあきらめ、60歳から65歳未満の在職老齢年金制度(低在労)のみの改正案としたのである。
それでも、「働けば年金が減る」というのは、いかにもおかしい。一方で、高給者を優遇するのはおかしいというのも正論である。この矛盾を正すのは、年金制度の枠内では難しく、税制と連携した「税と社会保障の一体改革」が必要になるはずだが、今回の改正案では連携の気運は乏しく、結局は、空回りの議論に終わったといえよう。もっとも、低在労に見直しも大事な事だという指摘は多く、私もそう思う。
ともあれ、一般の国民にとって、65歳を超えて働くという状況は、これから始まるものである。「70歳現役社会」というのなら、「働けば年金が減る」という仕組みの見直しは必須であり、税制と連携した再度の検討が必要となるのも、そう遠い将来ではないだろう。
下記のブログで取り上げた「70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする法改正案」閣議決定に関するものであるが、この記事の焦点は、「在職老齢年金」の見直しに当たっている。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200204NY01.html
「現在は賃金と年金の合計額が月28万円を超えると年金が減る。2022年4月からはこの基準を月47万円に上げる。」という改正案である。この「在職老齢年金」による年金減額は、60歳から65歳までの厚生年金被保険者にかかるものであるが、「厚生年金の受給開始を65歳に上げる時期に差があるため、対象者は男女で異なる。男性は1957年4月2日~61年4月1日生まれ(58~62歳)、女性は57年4月2日~66年4月1日生まれ(53~62歳)で将来の年金が増える可能性がある。」ということである。
ただし、公的年金の財政的には、「年金支給額は約3千億円増えその分は将来世代の年金が減る。」としている。
「働けば年金が減る」という在職老齢年金制度は、少子高齢化の急速な進展を背景とした高齢者の就労促進という国策に、まったくそぐわない。そのため、厚生労働省は、65歳以上の在職老齢年金制度(高在労)についても、減額対象所得の引き上げを検討したのだが、月額62万円では高過ぎると言われ、月額50万円に下げても、そんな高給者の年金を増やす必要があるのかとの反発が大きく、結局、高在労の見直しはあきらめ、60歳から65歳未満の在職老齢年金制度(低在労)のみの改正案としたのである。
それでも、「働けば年金が減る」というのは、いかにもおかしい。一方で、高給者を優遇するのはおかしいというのも正論である。この矛盾を正すのは、年金制度の枠内では難しく、税制と連携した「税と社会保障の一体改革」が必要になるはずだが、今回の改正案では連携の気運は乏しく、結局は、空回りの議論に終わったといえよう。もっとも、低在労に見直しも大事な事だという指摘は多く、私もそう思う。
ともあれ、一般の国民にとって、65歳を超えて働くという状況は、これから始まるものである。「70歳現役社会」というのなら、「働けば年金が減る」という仕組みの見直しは必須であり、税制と連携した再度の検討が必要となるのも、そう遠い将来ではないだろう。
2020年2月5日 日経朝刊7面 (中外時評)米国ゆがめる「赤の恐怖」
小竹洋之論説委員によるもので、「1950年2月9日、米南部ウェストバージニア州ホィーリング。ジョセフ・マッカーシー上院議員の有名な演説が、ソ連との冷戦に臨む米国に災いをもたらした。」という書き出しである。この「排斥的な扇動者の台頭によって、第2次世界大戦後の「赤狩り」は頂点に達する。ソ連の原爆開発や中国の共産化などに強い危機感を抱いた米国は「反共ヒステリー」の状態に陥り、曖昧な根拠で多くの要人を糾弾したのである。」としている。
そして、「マッカーシーの演説から70年。いまの米国は中国との新冷戦のさなかにある。」とし、「米国は国際テロ組織アルカイダによる2001年9月の同時テロにも過剰反応し、アフガニスタン・イラク戦争の泥沼にはまったといわれる。中国の影におびえるあまり、かつての過ちを繰り返してほしくはない。」と結んでいる。
この記事に描かれた「赤の恐怖(Red Scare)」をベースとした「赤狩り」は、多くの米国民の脳裏に染みついているようである。当時の状況は、それほどに熾烈だったと思われるが、その様子は、『ビッグコミックオリジナル』誌の山本おさむ氏の連載マンガ『赤狩り THE RED RAT IN HOLLYWOOD』にも、生々しく描かれている。
https://bigcomicbros.net/comic/akagari/
記事では、中国との冷戦の行方を気にしているが、「赤の恐怖」は今年2020年11月の米大統領選にも、大きな影を落としている。現在、民主党の予備選が行われているが、若者に大きな支持を得ているのが、バーニー・サンダース上院議員である。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200209AA01.html
しかし、急進左派とされる彼が、大統領になるのは難しいと見込まれている。共和党支持者の富裕層の抵抗もあるだろうが、最も大きな要素は、「左派」=「赤」=「恐怖」という短絡的な大衆の思考にあるように思われる。若者には、そのような桎梏がないから、純粋な応援ができるのだとも思われる。
ウソや職権乱用の塊でありながら、経済好調を背景に、弾劾裁判をも一蹴したトランプ大統領が、再選されるのかどうか。その振る舞いは、わが国の安倍首相の状況にもつながる。一部には、トランプ大統領が再選されるようなら、仲の良い安倍首相が続投した方がよいのではないかという声まである。
山本おさむ氏のマンガでは、「赤狩り」の一派は、当時の大統領選でニクソン候補を推し、対立するケネディ候補を失脚させようと動いたように描かれている。どこまで史実に忠実なのかは分からないが、「さも、ありなん」と思わせる展開である。だが、結局、ケネディ大統領が誕生することとなった。
トランプ大統領の再選を許すのか、それとも、「赤狩り」の桎梏を離れて、新たな大統領が誕生するのか、今度の米大統領選は、米国のみならず世界の今後の情勢を左右する。
小竹洋之論説委員によるもので、「1950年2月9日、米南部ウェストバージニア州ホィーリング。ジョセフ・マッカーシー上院議員の有名な演説が、ソ連との冷戦に臨む米国に災いをもたらした。」という書き出しである。この「排斥的な扇動者の台頭によって、第2次世界大戦後の「赤狩り」は頂点に達する。ソ連の原爆開発や中国の共産化などに強い危機感を抱いた米国は「反共ヒステリー」の状態に陥り、曖昧な根拠で多くの要人を糾弾したのである。」としている。
そして、「マッカーシーの演説から70年。いまの米国は中国との新冷戦のさなかにある。」とし、「米国は国際テロ組織アルカイダによる2001年9月の同時テロにも過剰反応し、アフガニスタン・イラク戦争の泥沼にはまったといわれる。中国の影におびえるあまり、かつての過ちを繰り返してほしくはない。」と結んでいる。
この記事に描かれた「赤の恐怖(Red Scare)」をベースとした「赤狩り」は、多くの米国民の脳裏に染みついているようである。当時の状況は、それほどに熾烈だったと思われるが、その様子は、『ビッグコミックオリジナル』誌の山本おさむ氏の連載マンガ『赤狩り THE RED RAT IN HOLLYWOOD』にも、生々しく描かれている。
https://bigcomicbros.net/comic/akagari/
記事では、中国との冷戦の行方を気にしているが、「赤の恐怖」は今年2020年11月の米大統領選にも、大きな影を落としている。現在、民主党の予備選が行われているが、若者に大きな支持を得ているのが、バーニー・サンダース上院議員である。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/02/20200209AA01.html
しかし、急進左派とされる彼が、大統領になるのは難しいと見込まれている。共和党支持者の富裕層の抵抗もあるだろうが、最も大きな要素は、「左派」=「赤」=「恐怖」という短絡的な大衆の思考にあるように思われる。若者には、そのような桎梏がないから、純粋な応援ができるのだとも思われる。
ウソや職権乱用の塊でありながら、経済好調を背景に、弾劾裁判をも一蹴したトランプ大統領が、再選されるのかどうか。その振る舞いは、わが国の安倍首相の状況にもつながる。一部には、トランプ大統領が再選されるようなら、仲の良い安倍首相が続投した方がよいのではないかという声まである。
山本おさむ氏のマンガでは、「赤狩り」の一派は、当時の大統領選でニクソン候補を推し、対立するケネディ候補を失脚させようと動いたように描かれている。どこまで史実に忠実なのかは分からないが、「さも、ありなん」と思わせる展開である。だが、結局、ケネディ大統領が誕生することとなった。
トランプ大統領の再選を許すのか、それとも、「赤狩り」の桎梏を離れて、新たな大統領が誕生するのか、今度の米大統領選は、米国のみならず世界の今後の情勢を左右する。
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