2020年3月14日土曜日

2020年3月14日 日経朝刊8面 (Deep Insight)本気のオンライン社会へ

「通勤、通学、観戦、渡航――。新型コロナウイルスの感染拡大は、大勢が集まること、移動することのリスクを突きつけた。生活の営みや経済活動が止まらない社会を築けるか。人類の知恵と行動力が試される局面と言っていい。突破口はオンラインだ。」とする記事である。
「日本でも手探りながらテレワークを始める企業が増え、ネットで可能なことはネットでの機運がある。有事が去れば終了という程度のオンライン化では、強くしなやかな社会はできない。危機のたび混乱する。環境の変化や時代の要請にフィットしたオンライン社会へと本気で進みたい。それにはまず、古い考えを捨て、意識を変えなければだめだ。」というものである。
続けて、「人の思考や振る舞いは場所、時間にとらわれている」とし、「オンラインだからこその価値に目を向け、社会に埋め込む作業がいる。」とし、「最新の手法と工夫次第で、コミュニケーションの質を高められる」としている。その例として、「ネット会社ドワンゴのオンライン授業「N予備校」」と「オンライン診療」に言及し、「オンライン化にはオープン化が伴う」とし、「教育と医療も、目の前の「先生」がすべてでなく、多様な専門家の見方や意見に触れられる。」としている。「広い視野でアイデアやスキルを融合できるのがオンラインの醍醐味」で「新しい社会をつくる道具はある。一握りの人間が考えればすむテーマではない。」というのである。
一方、「オンラインにも弱点はある。電力と適切な管理なしには動かず、誤情報やコンピューターウイルスの脅威がある。」とし、「状況に応じてオンラインかオフラインか選び、何かに極端に依存しないこと」が必要だとし、「大量、画一、集合、一括。時空を超えるネットという利器をもちながら、社会構造は20世紀に効率的とされたものに縛られ、真の21世紀社会への移行を阻んでいないか。コロナ禍が私たちに問う。」と結んでいる。

確かに、コロナ・ショックでオンラインの利用は、飛躍的に高まった。G7の首脳会議ですら、電話会議でこなすことができるのである。通勤時間が省略され、仕事の効率性も高まっている。もちろん、オンラインでこなせる仕事ばかりではない。しかし、対応できる範囲は、様々な工夫で確実に広がっている。
一方で、「人と人との触れ合いが減る」という意見はある。「有事が去れば終了」となる可能性は捨てきれない。人間とは、ヒトとヒトとの関係そのものであると言われる。動物であるヒトが、他のヒトとの関わりの中で、社会性を身に着け、「人間」になるという考え方である。ただし、このような他者との関係も、対面的接触だけで構築されるものではない。書物などを通じて他者の考えなどを知ることは可能であり、オンライン技術は、そうしたことを促進する優秀なツールである。
一方で、「百聞は一見にしかず」とも言う。例えば、実際の演技や演奏を見ての感激は、それらをビデオで見た場合とは比較にならないであろう。もちろん、それでも疑似的な体験などにも大きなる効用があるわけであるが。
オンラインが活用できるからこそ、それでは対応できない実物の価値が高まるのである。「本気のオンライン社会」は、「本物の価値の尊重」をベースにしたものでなければならないように思う。

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