2020年3月14日土曜日

2020年3月14日 日経朝刊15面 (大機小機)新型コロナの経済リスク

「世界保健機関(WHO)が「パンデミック」とみなした新型コロナウイルスの世界的まん延は経済活動の甚大なマイナス要因となる。有効な手立てがあるのだろうか。」という論説である。
「人々の集合や移動が抑えられることが経済活動の足を引っ張る要因となる」今回のような事態には「マクロ経済政策はあまり効果がない」ということだが、供給サイドでは、「労働力が確保できないために世界の生産基地といわれる中国の工場が動かなくなる」ことにより、「国際的サプライチェーンがマヒし、多くの国で雇用が失われる」供給ショックには即効性のある対応策は存在しない、としている。
一方の需要サイドでは、旅行・観光業をはじめとする「サービス産業従事者が雇用の大部分を占める日米はじめ先進国経済は大きな打撃を受けざるをえまい」としている。「伝統的な不況対策は財政出動や減税による公的需要創出策が中心」だが、「人々が動けないことが原因であれば、これらの施策も効果はあまり期待できまい」とし、「日米で減税を主張する向きがあるが見当違いではないか」としている。
その上で、「注意すべきは、世界的な超金融緩和政策によって、かつてない規模に達した債務膨張のリスク」であり、「政府は企業の資金繰り対策に万全を期してほしい」とし、「パンデミックを早期に抑え込むことに全力を傾注するしか方法はない。それが最善の経済対策なのだ。」と結んでいる。

このように、供給サイドと需要サイドの両方で大きな問題が発生している状況は、欧米各国で「戦争」という言葉が出てきているように、戦時下の経済に似ている。戦時下では、不要不急のものに対する需要が急減し、対する供給も急減する。観光業や飲食店への打撃などと言っている場合ではないのであるが、特に日本では、まだまだ危機意識が薄いのではないか。
喫緊の問題は、生活必需品の提供が、国民全体に行き渡るのかどうかであろう。特に、雇用の減少により、衣食住といった基礎的な消費に支障をきたす人々の救済は、最優先である。そうした人々には、減税といった間接的景気刺激策ではなく、現金給付による直接的緊急的な支援が必要となる。結局のところ、観光や娯楽などのサービス産業は、そのような基礎的な基盤が整っていて初めて存在意義のあるものなのではないか。そのことが、今回のコロナ・ショックでの一番の教訓ではないかと思える。

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