2020年3月13日金曜日

2020年3月13日 日経朝刊1面 試行錯誤の一斉テレワーク 働き方改革 浮かんだ弱点

「1時間34分――。総務省が調べた東京都の通勤・通学時間の平均(往復、2016年)だ。大都市のビジネスパーソンは毎日の長い移動で疲弊してしまう。日本の生産性の低さの一因だ。」という記事である。
続けて、「テレワークはもともと今夏の東京五輪・パラリンピックの混雑対策として、官民で導入機運は高まっていた。社員らが一斉に出社しない「テレワーク・デイズ」イベントの19年の参加団体は2887団体と前年の1.7倍、参加者数は68万人で2.2倍に増えた。新型コロナを機に様々な企業で前倒しされ、手をつけられなかった無駄を削る好機になる可能性はある。」としている。
だが、「では業務ははかどるのか。2月下旬から原則テレワークになった電通。営業部門に務める30歳代の男性社員は自宅で仕事をし、顧客企業への訪問も最小限に抑えている。先方の顔が見えず「空気がつかみづらく営業マンとしてもどかしい」。未就学児の子供が家の中を走り回り、業務効率が下がることもあるという。ビジネスチャットなど効率化のツールはあるものの、習熟度には個人差があり組織での運用に課題が残る。」としている。
そして、「総務省によると、日本のテレワーク制度を導入した企業の割合は18年時点で19.1%。85%の米国、38%の英国に比べまだ低い。米国では国内の感染拡大が顕著になった3月に入り、グーグルやフェイスブックなどIT(情報技術)大手が従業員に在宅勤務を勧める。現状はシリコンバレーの多くの企業が原則在宅勤務に切り替わり、朝夕の渋滞はなくなった。」としている。
これに対し、「日本ではインフラの準備不足もみられる。ある銀行の部署では所属する約60人が原則在宅勤務になったが、社外から社内ネットワークに接続するための通信システムがパンクし、全員一斉だったのを半分ずつの交代制に切り替えたという。」という。
そして、「押し寄せるテレワークの波は、デジタル時代に沿った働き方の改革ができない企業を浮かび上がらせる。生産性を高めるため、経営層や社員の模索は続く。」と結んでいる。

テレワークができる仕事や企業ばかりではない、という声は根強い。だが、それ以前に、長時間通勤を抑止し、仕事の効率性・生産性をあげようとする意識が、日本の企業では乏しかったのでないか。かねてより、無駄な会議や稟議が多いことは、多方面から指摘されていたのに、それに対する改善を怠ってきたことのツケが回ってきているように思われる。
記事にある総務省による日本のテレワーク制度導入企業の割合は18年時点で19.1%というのは、次の令和元年『情報通信白書』に記載されている。
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd124210.html
英米の数値は探してみたものの確認できなかったが、大分遅れを取っているのは間違いないであろう。
もっとも、テレワークという手段が、必ずしも効率的とは限らない。記事では、「現状はシリコンバレーの多くの企業が原則在宅勤務に切り替わり、朝夕の渋滞はなくなった」としているが、それが重要な事であるのなら、コロナ・ショックより前から、そうした対応が可能であったはずである。しかし、オフィスという仕事のために限定された場所・時間の有効性や、対面での意見交換の効率性といった面もある。
さりながら、今回のような緊急的な事態への対応のみならず、体調や時間的都合がつかない場合でもネットで会議に参加できることなど、テレワークで業務の効率性を向上できる機会は多い。その点では、日本の取り組みは、まだまだ遅れていると言ってもよいであろう。
最後に、総務省の『テレワークの最新動向と総務省の政策展開』(2020年5月31日)を紹介しておこう。
http://teleworkkakudai.jp/event/pdf/telework_soumu.pdf

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