2020年3月13日金曜日

2020年3月13日 朝日朝刊4面 定年65歳改正案、閣議決定へ 付則に能力主義徹底 国家公務員
2020年3月14日 朝日朝刊4面 公務員65歳定年、法案を国会提出
2020年3月14日 日経朝刊4面 社保の担い手、公務員先行 定年65歳に上げ法案決定 検察官延長、火種にも

最初の13日付朝日記事は、「政府は、国家公務員の定年を段階的に65歳へ引き上げる国家公務員法などの改正案について、13日に閣議決定する。自民党内での議論で、単純に定年年齢だけを引き上げることに「待った」がかかり、能力・実績主義の徹底を念頭に置いた付則が盛り込まれることになった。」ことを報じるものである。
「改正案は現在、原則60歳となっている定年を、2022年度から2年ごとに1歳ずつ引き上げ、30年度に65歳とする。60歳以降の給与は当分の間、それまでの7割とする。」としている。
これに対し、「自民党内の議論では、公務員改革が「進んでいない」点が問題視された。08年に成立した国家公務員制度改革基本法で課題としていた「能力・実績主義の徹底」が今回の法案に反映されていないとみるからだ。党行政改革推進本部の塩崎恭久本部長は取材に対し、「民間企業が定年延長を導入する時は人事評価と賃金制度を見直している」と説明。「それをやらずに、定年だけ延ばして7割の給与を出すのは、税金を使っている意識がない」と指摘した。」としている。
そして、「こうした意見を受け、政府は、改正案の付則に施行日となる22年4月1日までに給与制度の前提となる人事評価を見直すことを明記した。政府が当面7割とする60歳以降の給与については、能力・実績によってメリハリをつけるよう検討していくという。」とのことである。
一方、「今回は国家公務員法とは別に定年年齢を定めている検察庁法の改正案も提出する。検察官の定年を63歳(検事総長は65歳)から65歳に引き上げる内容。」とのことだが、「野党は、東京高検の黒川弘務検事長の定年延長問題で追及を強めており、関連する検察庁法改正案の審議も、一筋縄ではいかない状況だ。」としている。

次の14日付朝日記事は、改正案が閣議決定を経て、国会に提出されたというものである。

最後の14日付日経記事は、内容としては朝日記事と同じであるが、国家公務員の定年延長は、「社会保障費負担の担い手が減るのに対応する。企業では65歳定年の導入率は2割弱にとどまる。公務員が先行して制度設計のひな型を示し、民間への波及をめざす。」としている。なお、「地方公務員の定年は地方自治体が国に準拠して条例で定める。国家公務員の定年が延長されれば、地方公務員の定年も同じペースで30年度に65歳となる。」とのことである。
一方、「企業では65歳定年の採用はまだ少ない。厚生労働省の19年の調査によると全体の2割弱にとどまる。政府が国家公務員の定年延長に踏み切るのは、労働力人口の減少に備えて社会全体で高齢者雇用の促進につなげる狙いがある。」とし、「武田良太行政改革相は13日の記者会見で「国家公務員から率先垂範し、民間企業のロールモデルとして役割を果たしたい」と述べた。」そうである。
なお、「定年を迎えて退官する予定だった黒川弘務東京高検検事長の勤務を半年延ばすと決めた」政府の対応について、政治問題化していることにも言及している。

国会に提出された法案(提出日:2002年3月13日)は、次の通りである。
https://www.cas.go.jp/jp/houan/200313/siryou1.pdf
また、厚生労働省の「高年齢者の雇用状況」(2019年)の集計結果は、次のようになっている。
https://www.mhlw.go.jp/content/11703000/000569181.pdf
上記の日経記事にもあるが、民間企業での65歳定年の導入率は17.2%に過ぎない。定年延長に当たっては、朝日記事が引用しているように、「能力・実績によってメリハリをつける」必要が出てくるが、民間でも推進できているとは言い難い。その結果として、8割の企業が、「継続雇用制度の導入」により、身分を正社員から非正規社員に変更し、給与も減額しているわけである。
一方で、IT技術に精通した若手の給与は、対外・対内的競争の観点から、引き上げざるを得なくなっている。もちろん、人によって個人差があるから、その考慮が必要になるが、その事情は、高齢者についても変わらない。要するに、年功序列・終身雇用の従来型処遇では対応できないのである。能力・実績による適正な評価が行えるのであれば、雇用保障の定年延長ではなく、定年撤廃で対応すべきこととなる。
では、どんなスピード感で、その方向に向かっていけるのか、少子高齢化が急速に進む日本にとって、それが命運を握る課題であろう。

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