2020年3月6日金曜日

2020年3月6日 日経朝刊7面 ノルウェー年金基金、三菱地所本社ビルの一部取得 797億円で
2020年1月29日 日経朝刊7面 「50年先見てESG投資」 ノルウェー政府年金基金CEO

最初の記事は、「世界最大級の政府系ファンド、ノルウェー年金基金は5日、三菱地所が保有する大手町パークビルディング(東京・千代田)の一部を797億円で取得すると発表した。ノルウェー年金基金は株式や債券に加えて、不動産にも分散投資を進めており、日本での不動産投資は2件目となる。三菱地所は簿価(取得価格)が高く利回りが低い不動産を売却し資産効率を高める狙いだ。」というものである。
「ノルウェー年金基金は北海油田から得るノルウェー政府の収入を原資とし、足元で約125兆円を運用する。日本での不動産投資は17年に東急不動産と共同で商業施設5物件を取得して以来、2件目となる。」とし、「三菱地所は優良資産を多く持つ。古くから所有する不動産は簿価が低く不動産利回りが高いが、比較的新しい物件は簿価が高く利回りも低い傾向がある。このため、丸の内の立地であっても資産効率の点から売却を進めている。」と結んでいる。

後の記事は、少し前のものだが、「世界最大の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金は、環境・社会・企業統治を考慮する「ESG投資」で運用業界をリードしてきた。近く退任する運用機関のイングベ・スリングスタッド最高経営責任者(CEO)が取材に応じ、ESGは超長期の投資に不可欠だと強調した。トップ退任後も組織にとどまり、新エネルギー分野などの投資戦略に関わる意向も明らかにした。」というものである。
 まず、ESG重視の理由については、「(ノルウェーの)将来世代のためのファンドとして50年以上先のことを考えている。長期で投資収益を上げるには世界経済が持続可能な形で成長していくことが欠かせない。50年の時間軸でリターンを確保すべくESGに取り組んでいる」としている。
次に、ESG投資の実際については、「長期で持続可能ではないとみた約240社からこれまでに投資を引き揚げた。一方で環境ポートフォリオも持っており、世界に良い影響をもたらすと考える200社ほどに投資している。水処理技術や代替エネルギー関連などが含まれる」「ノルウェーの人々は兵器やたばこから利益を得たくない。石炭もそれらに加わった。考え方は単純で、社会に有益だと判断した製品やサービスに投資するということだ。撤退対象は3つ。我々が生み出したくないと思う製品をつくる企業、倫理的に擁護が難しい企業、そして30年ほど先を見通してビジネスが持続可能と思えない企業だ」としている。
さらに、「企業側の変化」については、「特にこの5年で大きく変わった。今や気候変動のような問題は多くの取締役会で何らかの議論が交わされている。10年前なら自分たちのビジネスには無関係だと言っていたであろう企業も、そうは考えなくなった」「企業に求めたいのは情報開示のさらなる拡充だ。サステナビリティー報告書は重要で、持続可能性に関する戦略やリスク管理について明確にしてほしい。二酸化炭素(CO2)やメタンをどれくらい排出しているのか、規制が今後強化された場合の必要な削減量、そのための費用など知りたいことはたくさんある」との見方である。
記事では、補足として、ノルウェー政府年金基金は、「北海油田から得るノルウェー政府の収入を原資とする年金ファンド。足元の運用残高は約10.5兆クローネ(約125兆円)で、政府系ファンドで世界最大。株式や債券、不動産に分散投資し、日本株も7兆円程度持つ。運用は中央銀行傘下のノルウェー銀行インベストメント・マネジメント(NBIM)が担う。」と記述している。

下記は、ノルウェー政府年金基金について、在ノルウェー日本国大使館が2014年3月にまとめた資料である。
https://www.no.emb-japan.go.jp/Japanese/Nikokukan/nikokukan_files/pension_fund_global.pdf
また、在日ノルウェー大使館も、次のように説明している。
https://www.norway.no/ja/japan/norway-japan/news-events/news/5/
この基金は、「石油・天然ガスからの収入が得られなくなった将来のノルウェー国民の年金資金等に備えるため、ノルウェー大陸棚の石油・ガス事業からの国の収入を積み立てている基金」で、ノルウェー政府と直結したものである。
当面で言えば、石油・天然ガスによる収入で困ることはないから、資産運用についても、「50年先」という長期の視野を持つことができるわけである。年金資産の運用としては、理想的とも言えよう。ただし、基金は年金給付は行わないが、投資収益の4%以下を国家予算に繰り入れるものとしているから、毎年の投資収益率に無関心というわけにはいかない。恐らく、大手町パークビルディングへの投資も、安定的なインカム収益に期待してのものであろう。
一方、石油・天然ガスといった地球温暖化の元凶に依存しながら、環境重視のESG投資に傾斜しているのは、皮肉な事だとも言えよう。「責任ある投資」ということで、「基金の投資対象企業の監視・除外指針には、基本的人道主義に反する兵器(クラスター爆弾や核兵器など)を製造している企業には基金の資産を投資しない」と定められているそうである。世界的な年金資産運用の動向を見る上で、このノルウェー政府年金基金の動向ウォッチは欠かせない。

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