2020年1月22日水曜日

2020年1月22日 日経 朝刊 2面 (社説)雇用のあり方をめぐる突っ込んだ議論を
2020年1月22日 日経 朝刊 5面 雇用「脱一律」で人材磨く 経団連春季指針 世界標準の環境に

「2020年の春季労使交渉に向け経団連がまとめた経営側の指針」に対する社説である。
「目先の賃上げだけでなく、持続的に企業が成長するための本質的な議論をすべきだという経団連の考え方は理解できる」とし、「労働組合も経団連の問題意識を真摯に受け止めるべきだ」としている。その上で、「時代遅れになっている雇用制度の改革論議が産業界全体で進むことを期待したい」としつつ、「通年で協議する場を設け会社の将来像を含め議論を深めるべきだ」と結んでいる。

経団連の「経営労働政策特別委員会報告」の内容については、5面で報じている。「年功序列賃金など日本型雇用制度の見直しに重点を置いた。海外で一般的な職務を明確にして働く「ジョブ型」雇用も広げるべきだと訴えた。」と要点を整理している。中西宏明会長は、「新卒一括採用と終身雇用、年功序列を柱とする日本型雇用制度」について、「現状の制度では企業の魅力を十分に示せず、意欲があり優秀な若年層や高度人材、海外人材の獲得が難しくなっている」と指摘し、「海外への人材流出リスクが非常に高まっている」と危機感を示したという。

経団連の考え方は理解できるが、「時代遅れになっている雇用制度」を作り上げ、維持してきた主体は、経営側である。「ジョブ型」の場合、その業務に関わる労働者が結集して職種別労働組合を結成するのが自然の流れであるが、日本の企業は、労働者が会社を超えて団結するのを嫌い、企業内組合にとどめることに力を入れてきた。「日本型雇用制度」は、そのような、「社会」より「会社」を重視させるための仕組みだったわけである。「ジョブ型」なら、自分の能力が十分に活用できない会社とは、さっさと縁を切って、新たな活躍の場を求めることになるだろう。「海外への人材流出リスク」という認識は甘いのであり、国内でも、「社外への人材流出リスク」は高まるし、それが「外部からの人材獲得チャンス」ともなるわけである。そうなった場合、既存の概念にどっぷり染まった大企業は、解体的変革を迫られる可能性があるわけだが、さて本当に、その途に進んで行けるのか。日本型雇用の都合の良いところだけ残して、「ジョブ型」の利点を取り入れようとしても、そうは問屋が卸さない。
社説が言及している「成果重視の賃金制度の必要性がバブル崩壊後から叫ばれながら、浸透していない」真の原因は、そこにある。物事を成すには、まず「隗より始めよ」と言う。年功序列で成り上がった経営幹部を一掃する覚悟がなければ、真の改革は為し得まい。

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