2020年2月4日 日経夕刊1面 70歳までの就業機会確保 企業の努力義務に 改正案決定
2020年2月5日 朝日朝刊3面 70歳まで就労機会、関連法案閣議決定 企業に努力義務
2020年2月5日 日経朝刊5面 70歳現役社会へ一歩 シニア雇用、法改正案閣議決定
2月4日の日経夕刊1面の記事は、「政府は4日、70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法などの改正案を閣議決定」ことを伝えている。「今国会で成立すれば2021年4月にも適用する見通しだ。」という。
これについて、2月5日の朝日朝刊3面の記事は、「70歳まで働く機会の確保を企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法改正案」に焦点を当て、現行法で企業に義務付けている(1)定年の廃止(2)定年の延長(3)定年後に再び雇うなどの継続雇用、という三つの選択肢の延長に加えて、(4)別の会社への再就職(5)フリーランスとして独立(6)起業を助ける(7)社会貢献活動への参加支援、の選択肢を加え、これら七つの選択肢のいずれかを設けるよう努力義務を課す、としている。(5)~(7)は企業から離れて収入が不安定になるおそれがあるため、「収入が途切れないように企業に対して従業員やその勤め先と業務委託契約を結び続けるといった対応を求める。」そうである。
一方、2月5日の日経朝刊5面の方は、「意欲のある人が長く働ける環境を整える狙いだが、企業には人件費の負担増につながる可能性もある」とし、「企業が活力を保てるよう、年功型賃金など雇用慣行の見直しも欠かせなくなる。」としている。
その上で、「企業が従業員の年齢を理由に一律で退職させる定年制は「年齢差別」として、英米では原則として禁じている。今回の改正法案ではまず、努力義務として就業機会の確保を求め、義務化も視野に入れる。日本も長期的には年齢差別をなくす方向に動いている。」と見ている。
そして、「定年制度は企業の新陳代謝を促す仕組みとして機能してきた面もある」とし、「欧米では職務を明確に定めた「ジョブ型雇用」が定着しているため、年齢に関係なく働ける」と続けている。
このような状況について、一部に、理解が進んでいない面があるが、「定年延長」と「定年撤廃」は、まるで異なる。「定年延長」の先に「定年撤廃」があるという誤解は、「働ける期間が長くなる→いつまでも働ける」という幻想によるものであろうが、「定年撤廃」は、英米のように、成績次第で解雇する(される)ということであり、「解雇を金銭で解決する仕組み」も視野に入ってくるものである。
定年のない英米での解雇の厳しさの例として、野球の大リーグで、選手が一番緊張するのは、クリスマスの時だという記事を見た事がある。ロッカーを開けると、「今日で解雇」という張り紙があり、新年を迎えることができないというのである。外資系の企業でも、解雇されるとパソコンの使用不可どころか、事務所への入室もできなくなり、後日、宅急便で私物が送られてくるという記事も見たことがある。噂に尾ひれがつく分はあるが、退職者の送別会が行われる日本文化とは別物であることは確かのようである。
そうした一方で、フリーランスのような働き方が増えているのは、企業に縛られたくないという面もあるだろうが、企業が雇用保障を嫌って請負契約のようなものに転換しているという面もあるだろう。正社員を増やさずに、非正規社員を増やしてきたのと同じ構造である。
「70歳現役社会」は甘くなく、若いうちから働く能力に磨きをかける必要があることを十分に自覚すべきである。考えて見れば、それが当然の事なのだから。
2020年2月4日火曜日
2020年2月4日 日経朝刊7面 運用会社、代替投資を強化 手数料競争が変革迫る
「大手運用会社がビジネスモデルの転換を迫られている。収益源としていた投資信託で手数料引き下げ競争が起きていることから、ヘッジファンドや不動産といった比較的高い手数料が見込めるオルタナティブ(代替投資)に進出している。」との記事である。
オルタナティブは、「複雑な運用手法や、流動性が低い投資先を管理するノウハウが必要なため、信託報酬が相対的に高い。」ためである。「低金利に悩み、ある程度リスクをとっても運用したいという投資家からの需要」が、その背景にある。
この記事は、基本的には個人の投資についてのものだが、企業年金の方では、一足先にオルタナ投資が導入されており、「2019年8~10月に700超の企業年金基金や厚生年金基金が答えた日経企業年金実態調査では、「今後増やす」と回答した比率が最も高い資産はオルタナティブだった。」という状況にある。
さて、このオルタナ投資を、どう考えればよいのであろうか。これに注目が集まるのは、債券や株式といった伝統的資産への投資が、低金利や不透明な投資環境の中で、思ったようなパフォーマンスをあげられないことによる。「代替」というのは、そのような伝統的な投資対象に代わるものということで名づけられたものである。
私は、1月末に米国年金会議に出席し、それについてブログにも書いた。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/01/20200124.html
実は、その会議の中でも、オルタナ投資が取り上げられていた。
https://www.asppa.org/sites/asppa.org/files/DOCs/LA_Pension/WS26-%20Alternative%20Investments%20in%20Retirement%20Plans.pdf
そこで、その概要を、ざっとご紹介しよう。
オルタナ投資は、給付建て制度(DB)から始まったものであるが、この資料では、掛金建て制度(DC)での取り扱いについて触れている。
米国での法規制にからむので、禁止取引、受託者責任、差別禁止の観点が、まず述べられている。例えば、差別禁止では、高給の従業員だけが利用できるものではないのか、といった具合である。
また、気を付けなければならない問題として、流動性の問題が指摘されている。これは、オルタナ投資は、債券や株式と違って、市場で簡単に売買できるものではなく、換金や処分に制限があったり時間を要するものが多いことによる。
上記資料では、いろいろなタイプのオルタナ投資について、事例を示して注意点を述べているが、オルタナ投資で重要なのは、流動性の他に、透明性である。すなわち、実際には、どのような投資対象に、どのように投資しているかという中身である。
ところが、その把握が難しい。オルタナ投資の提供側の言い分は、それこそが「企業秘密」であって、様々な工夫をしているから成果があがっているのであり、そのノウハウは全面的には開示できないというのである。
これは、都合の良い言い分で、実際のところ、日本の企業年金でも、「AIJ事件」という詐欺事件が起き、多くの企業年金が多額の資産を失っている。それは、「オルタナ投資」を前面に打ち出していたわけではなさそうだが、透明性を欠くという点では同列である。
現代投資理論では、様々な投資対象を組み込むことによって、リスクを減らして最良のリターンを追及することができるとしている。中には、オルタナ投資の収益の債券や株式との連動度合(相関係数)は小さいので、分散投資の意味があるとするものもあるが、中身が分からないのなら、戯言と言うしかない。
先行したDBの資産運用では、外貨建て資産への投資やオルタナ投資で、痛い目にあっている経験がある。手数料の安いパッシブ運用が増えて儲からなくなった運用会社が、手数料目当てでオルタナ投資の販売に力を入れるのは、そもそも胡散臭い。投資することが悪いとは言わないが、「分からないものには手を出さない」ことが賢明なのは、古来からの真実であろう。
「大手運用会社がビジネスモデルの転換を迫られている。収益源としていた投資信託で手数料引き下げ競争が起きていることから、ヘッジファンドや不動産といった比較的高い手数料が見込めるオルタナティブ(代替投資)に進出している。」との記事である。
オルタナティブは、「複雑な運用手法や、流動性が低い投資先を管理するノウハウが必要なため、信託報酬が相対的に高い。」ためである。「低金利に悩み、ある程度リスクをとっても運用したいという投資家からの需要」が、その背景にある。
この記事は、基本的には個人の投資についてのものだが、企業年金の方では、一足先にオルタナ投資が導入されており、「2019年8~10月に700超の企業年金基金や厚生年金基金が答えた日経企業年金実態調査では、「今後増やす」と回答した比率が最も高い資産はオルタナティブだった。」という状況にある。
さて、このオルタナ投資を、どう考えればよいのであろうか。これに注目が集まるのは、債券や株式といった伝統的資産への投資が、低金利や不透明な投資環境の中で、思ったようなパフォーマンスをあげられないことによる。「代替」というのは、そのような伝統的な投資対象に代わるものということで名づけられたものである。
私は、1月末に米国年金会議に出席し、それについてブログにも書いた。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/01/20200124.html
実は、その会議の中でも、オルタナ投資が取り上げられていた。
https://www.asppa.org/sites/asppa.org/files/DOCs/LA_Pension/WS26-%20Alternative%20Investments%20in%20Retirement%20Plans.pdf
そこで、その概要を、ざっとご紹介しよう。
オルタナ投資は、給付建て制度(DB)から始まったものであるが、この資料では、掛金建て制度(DC)での取り扱いについて触れている。
米国での法規制にからむので、禁止取引、受託者責任、差別禁止の観点が、まず述べられている。例えば、差別禁止では、高給の従業員だけが利用できるものではないのか、といった具合である。
また、気を付けなければならない問題として、流動性の問題が指摘されている。これは、オルタナ投資は、債券や株式と違って、市場で簡単に売買できるものではなく、換金や処分に制限があったり時間を要するものが多いことによる。
上記資料では、いろいろなタイプのオルタナ投資について、事例を示して注意点を述べているが、オルタナ投資で重要なのは、流動性の他に、透明性である。すなわち、実際には、どのような投資対象に、どのように投資しているかという中身である。
ところが、その把握が難しい。オルタナ投資の提供側の言い分は、それこそが「企業秘密」であって、様々な工夫をしているから成果があがっているのであり、そのノウハウは全面的には開示できないというのである。
これは、都合の良い言い分で、実際のところ、日本の企業年金でも、「AIJ事件」という詐欺事件が起き、多くの企業年金が多額の資産を失っている。それは、「オルタナ投資」を前面に打ち出していたわけではなさそうだが、透明性を欠くという点では同列である。
現代投資理論では、様々な投資対象を組み込むことによって、リスクを減らして最良のリターンを追及することができるとしている。中には、オルタナ投資の収益の債券や株式との連動度合(相関係数)は小さいので、分散投資の意味があるとするものもあるが、中身が分からないのなら、戯言と言うしかない。
先行したDBの資産運用では、外貨建て資産への投資やオルタナ投資で、痛い目にあっている経験がある。手数料の安いパッシブ運用が増えて儲からなくなった運用会社が、手数料目当てでオルタナ投資の販売に力を入れるのは、そもそも胡散臭い。投資することが悪いとは言わないが、「分からないものには手を出さない」ことが賢明なのは、古来からの真実であろう。
2020年2月4日 朝日朝刊12面 (経済気象台)7年間は何だったのか
「日銀が2%の物価目標を掲げ、できるだけ早期に実現すると宣言したのが2013年1月。それから7年経ったが、今も実現するめどは立っていない。」という書き出しで、「異次元緩和という大胆な政策転換」を振り返り、「7年間のアベノミクスは結局何だったのか。」と問いかける論説である。
黒田日銀総裁が「異次元緩和」に踏み切った時、首を傾げる経済学者やエコノミストが多かった。それまでの正統的な白川前総裁の方針とは大きく違っていたからである。ところが、その円安誘導・低金利政策で企業活動が活発化し、経済が回復してくると、一転して「アベノミクス」をもてはやす論調になった。言わば、「白を黒が言いくるめる」状況になったのである。
政権を奪取したものの、東日本大震災・原発事故の対応にもたつき、経済界や官僚との関係もしっくりしていなかった旧民主党政権は、経済不振の状況の中で、国民の失望を招いていたから、なおさらに「アベノミクス」景気が歓迎されたのであろう。そのことが、このところ驕りや不正が露わになった安倍政権を長期化させた最大の原因と言えよう。それは、あたかもカルロス・ゴーンの栄光と凋落を思わせるもので、「驕る平家は久しからず」、「絶対的権力は絶対的に腐敗する」のである。
そして今、「アベノミクス」の弊害が、誰の目にも明らかになってきている。マイナスにまで落ち込んだ超低金利政策は、資金調達側の国や企業は大いに潤わせたが、資金供給側の家計は疲弊し、国民生活の不安は高まる一方である。安倍首相が民主党時代に比べて経済は良くなったとしているが、日本の競争力は世界30位で、1997年以降で最低にまで落ち込んでいる。
https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20190806.html
一方、円安政策は、日本企業の輸出競争力は高めたが、相対的に日本を安売りする結果となった。インバウンド効果への期待も、相対的に日本が割安になっていることによるであろう。
もちろん、状況は変化するので、物事の比較は簡単ではない。リーマンショックを受けた就職氷河期と、好況による人手不足で就職状況が改善した現況とを比較すれば、若年層の安倍政権支持率が高いのも分からないではない。また、少子高齢化の急速な進展というr重い課題に対しては、どんな政権でも、有効な対策を打つことは難しいだろう。
それでも、腐敗して弊害の方が目立つようになった政権を放置していたのでは、日本の未来は拓かれまい。若い世代の新しい風が、今こそ必要とされているのではないか。
「日銀が2%の物価目標を掲げ、できるだけ早期に実現すると宣言したのが2013年1月。それから7年経ったが、今も実現するめどは立っていない。」という書き出しで、「異次元緩和という大胆な政策転換」を振り返り、「7年間のアベノミクスは結局何だったのか。」と問いかける論説である。
黒田日銀総裁が「異次元緩和」に踏み切った時、首を傾げる経済学者やエコノミストが多かった。それまでの正統的な白川前総裁の方針とは大きく違っていたからである。ところが、その円安誘導・低金利政策で企業活動が活発化し、経済が回復してくると、一転して「アベノミクス」をもてはやす論調になった。言わば、「白を黒が言いくるめる」状況になったのである。
政権を奪取したものの、東日本大震災・原発事故の対応にもたつき、経済界や官僚との関係もしっくりしていなかった旧民主党政権は、経済不振の状況の中で、国民の失望を招いていたから、なおさらに「アベノミクス」景気が歓迎されたのであろう。そのことが、このところ驕りや不正が露わになった安倍政権を長期化させた最大の原因と言えよう。それは、あたかもカルロス・ゴーンの栄光と凋落を思わせるもので、「驕る平家は久しからず」、「絶対的権力は絶対的に腐敗する」のである。
そして今、「アベノミクス」の弊害が、誰の目にも明らかになってきている。マイナスにまで落ち込んだ超低金利政策は、資金調達側の国や企業は大いに潤わせたが、資金供給側の家計は疲弊し、国民生活の不安は高まる一方である。安倍首相が民主党時代に比べて経済は良くなったとしているが、日本の競争力は世界30位で、1997年以降で最低にまで落ち込んでいる。
https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20190806.html
一方、円安政策は、日本企業の輸出競争力は高めたが、相対的に日本を安売りする結果となった。インバウンド効果への期待も、相対的に日本が割安になっていることによるであろう。
もちろん、状況は変化するので、物事の比較は簡単ではない。リーマンショックを受けた就職氷河期と、好況による人手不足で就職状況が改善した現況とを比較すれば、若年層の安倍政権支持率が高いのも分からないではない。また、少子高齢化の急速な進展というr重い課題に対しては、どんな政権でも、有効な対策を打つことは難しいだろう。
それでも、腐敗して弊害の方が目立つようになった政権を放置していたのでは、日本の未来は拓かれまい。若い世代の新しい風が、今こそ必要とされているのではないか。
2020年2月4日 日経夕刊2面 (就活のリアル)「todoリスト」で解禁に備え 段取り書き出し、不安解消
上田晶美氏による就活実務編である。
「3月の就活エントリー開始を前に、何を準備すればいいでしょうか?」と大学3年生から質問を受けたことに対し、「あまりにもやることが多くて、何から手を着けていいかわからないというのが、質問した学生の本意だろう。」として、エントリーシート、筆記試験、面接という3段階についての「todoリスト」を作成して準備することをアドバイスしているものである。
学生にとって、「todoリスト」は初めて聞く言葉かもしれない。一方、会社員にとっては、スケジュール管理のツールであり、「就活はビジネスの予行演習」と上田氏が言う通りである。ただ、「todo」という言葉は、米国流のもので、少しハイカラな感じを与えるので使われているが、「やるべき事リスト」なら古来からあり、学生でも、これまで自分なりに管理してきたであろうから、そんなに構えることはない。
記事の最後は、「志望業界の決定」が先決としているが、これが学生にとっては一番難しいことではないかと思う。就職情報誌や業界研究の書籍などで、あれこれ考えるのだろうが、そう簡単に決められるものではないだろう。
孫氏の兵法では、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」とされている。対象となり得る業界や企業の研究も必要だが、その前に、自分はどんな事に興味があるのか、得意不得意からみた適性は何か、などの分析が重要だろう。人気の業界とか、友人の動向とか、給与の多さといったことばかりに気をとられていると、手当たり次第に応募して、門前払いで落ち込んでやる気をなくすことにもなりかねない。
就職は、結婚と並ぶ人生の最大の転機である。人気のタレントと結婚できたら嬉しいというような浮かれた気持ちでは、幸福な結婚生活は遅れまい。就職でも、自分との相性や、この会社となら長くやっていけそうだと思えることが重要であることは、結婚と同じである。
上田晶美氏による就活実務編である。
「3月の就活エントリー開始を前に、何を準備すればいいでしょうか?」と大学3年生から質問を受けたことに対し、「あまりにもやることが多くて、何から手を着けていいかわからないというのが、質問した学生の本意だろう。」として、エントリーシート、筆記試験、面接という3段階についての「todoリスト」を作成して準備することをアドバイスしているものである。
学生にとって、「todoリスト」は初めて聞く言葉かもしれない。一方、会社員にとっては、スケジュール管理のツールであり、「就活はビジネスの予行演習」と上田氏が言う通りである。ただ、「todo」という言葉は、米国流のもので、少しハイカラな感じを与えるので使われているが、「やるべき事リスト」なら古来からあり、学生でも、これまで自分なりに管理してきたであろうから、そんなに構えることはない。
記事の最後は、「志望業界の決定」が先決としているが、これが学生にとっては一番難しいことではないかと思う。就職情報誌や業界研究の書籍などで、あれこれ考えるのだろうが、そう簡単に決められるものではないだろう。
孫氏の兵法では、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」とされている。対象となり得る業界や企業の研究も必要だが、その前に、自分はどんな事に興味があるのか、得意不得意からみた適性は何か、などの分析が重要だろう。人気の業界とか、友人の動向とか、給与の多さといったことばかりに気をとられていると、手当たり次第に応募して、門前払いで落ち込んでやる気をなくすことにもなりかねない。
就職は、結婚と並ぶ人生の最大の転機である。人気のタレントと結婚できたら嬉しいというような浮かれた気持ちでは、幸福な結婚生活は遅れまい。就職でも、自分との相性や、この会社となら長くやっていけそうだと思えることが重要であることは、結婚と同じである。
2020年2月3日月曜日
2020年2月3日 日経朝刊2面 (迫真)惑う就活「新ルール」(1)専門スキルで武装せよ
「就職情報大手ディスコ(東京・文京)によると、1月1日時点ですでに内定を得た3年生は約7%。2年前の倍の水準だ。」という一方で、「長期の就活を強いられる人も増えている」ことについて、「就活生1人に2社近い求人がある売り手市場は続いているのに、なぜ二極化が進むのか。」と問いかける記事である。
「説明会は3月解禁、面接は6月解禁」と定めるものの罰則のない「政府ルール」に対し、「これまで経団連ルールに従っていた大手企業も優秀な学生の確保へなりふりを構っていられない。」状況になっているという。
一方で、「デジタル時代に即した人材が不可欠な日本企業は、年功序列など旧来の賃金・雇用システムに変わる最適解を求め試行錯誤している。」という地殻変動も起きている。学生側にも「ITなどの専門スキルで武装する動きが広がる」状況になっているそうである。
「日本企業の雇用は年功序列や終身雇用など「メンバーシップ型」と呼ばれる。新人を時間をかけて育成し競争力を高める仕組みはかつて機能した。求められる人材のスキルが刻一刻と変化するデジタル競争の時代。仕事内容に応じたポストを用意し、適切な人材をあてがう「ジョブ型雇用」への過渡期に立つ。」と記事は結んでいる。
新卒一括採用は、「年功序列や終身雇用」といった仕組みに結びついているもので、いわば「会社村」への囲い込みの入り口といえる。このような会社村で入村で重視されるのは、必ずしも専門的能力ではない。何より、会社との「親和性」が重視される。このことは、入社後にも「協調性」が重視されるという流れに連なっている。おまけに、必ずしも優秀な学生が採用されるとは限らない。多くの入社希望の学生を相手にせざるを得ない大企業は、最初の選考を若手社員の委ねることが少なくない。この若手社員が問題で、女子学生へのセクハラ問題を起こす場合もあるし、また、あまりに優秀そうな学生は、将来の自分のライバルになりそうだから落とす、ということもあり得ないことではない。
記事では、「早稲田大商学部3年の女子学生」の苦戦を伝えているが、「親和性」重視の会社では、そもそも女子社員は少ないと考えられるから、男子学生と比べてハンディを負っている面もあるかもしれない。
では、どうしたらいいのか。企業においては、「ソニーはデジタル分野で高い能力を持つ新入社員の年間給与を最大2割積み増す。NECも能力に応じ年1千万円の初任給を提示するなど、限られた優秀な人材を求め異業種間の競争が活発だ。」という状況が生まれている。これに対し、慌てて、「ITスキルをアピール」しようとしても、その底はたかがしれている。本格的なITスキルの習得には時間がかかるし、企業が高収入で採用しようとするような人材は、長期にわたる修練を積んでいる。「新入社員」という言葉に惑わされてはいけない。「新卒学生」ではなく、他社での就業経験もある中途入社者と思った方がよい。
では、新卒学生が目指すべき就職先は、どんなところか。それは、今後10年程度にわたって自分の能力を引き上げてくれる可能性のある会社である。この場合には、必ずしも企業の規模は問わない。セクハラまがいのリクルーターや女性差別の雰囲気のある会社は、入社させてくれるといっても、断った方がいい。また、そんな会社の選考に落ちても、何ら悔やむ必要はない。
内定獲得に学業そっちのけでうつつを抜かし、内定が得られたら浮かれて遊びまわる、そんな学生の安楽な居場所がある会社など、そもそもないし、これからの企業を取り巻く環境は、ますます厳しくなる。
では、「新人を時間をかけて育成し競争力を高める仕組み」は、崩壊するのか。その先行きの展望は難しい。崩壊するのなら、「新卒一括採用」はなくなり、「就活」は死語にならなくても、学生を主体としたものとはならなくなるだろう。
私は、新卒学生を中心とする「育成枠社員」と、専門的技能を直ちに発揮できる「即戦力社員」との区分が、日本社会にとっては望ましいし、若年者の高い失業率に悩む欧米諸国にとっても参考になるのではないかと考えている。
その考え方については、『公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構』の平成30年度研究報告書『21世紀前半期の年金と雇用』の「第7章 少子高齢化の進展の中での年金と雇用」の拙稿を是非参照していただきたい。
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/H_30_03.pdf
ともあれ、学生の本分は学業である。講義をおそろかにし、講義のクラス仲間との質疑や意見交換といった交流を活用できない人が、企業に入って本業にいそしみ、共同作業を円滑にできるのだろうか。基本の戻って考えることが、就活にも必要ではないか。
「就職情報大手ディスコ(東京・文京)によると、1月1日時点ですでに内定を得た3年生は約7%。2年前の倍の水準だ。」という一方で、「長期の就活を強いられる人も増えている」ことについて、「就活生1人に2社近い求人がある売り手市場は続いているのに、なぜ二極化が進むのか。」と問いかける記事である。
「説明会は3月解禁、面接は6月解禁」と定めるものの罰則のない「政府ルール」に対し、「これまで経団連ルールに従っていた大手企業も優秀な学生の確保へなりふりを構っていられない。」状況になっているという。
一方で、「デジタル時代に即した人材が不可欠な日本企業は、年功序列など旧来の賃金・雇用システムに変わる最適解を求め試行錯誤している。」という地殻変動も起きている。学生側にも「ITなどの専門スキルで武装する動きが広がる」状況になっているそうである。
「日本企業の雇用は年功序列や終身雇用など「メンバーシップ型」と呼ばれる。新人を時間をかけて育成し競争力を高める仕組みはかつて機能した。求められる人材のスキルが刻一刻と変化するデジタル競争の時代。仕事内容に応じたポストを用意し、適切な人材をあてがう「ジョブ型雇用」への過渡期に立つ。」と記事は結んでいる。
新卒一括採用は、「年功序列や終身雇用」といった仕組みに結びついているもので、いわば「会社村」への囲い込みの入り口といえる。このような会社村で入村で重視されるのは、必ずしも専門的能力ではない。何より、会社との「親和性」が重視される。このことは、入社後にも「協調性」が重視されるという流れに連なっている。おまけに、必ずしも優秀な学生が採用されるとは限らない。多くの入社希望の学生を相手にせざるを得ない大企業は、最初の選考を若手社員の委ねることが少なくない。この若手社員が問題で、女子学生へのセクハラ問題を起こす場合もあるし、また、あまりに優秀そうな学生は、将来の自分のライバルになりそうだから落とす、ということもあり得ないことではない。
記事では、「早稲田大商学部3年の女子学生」の苦戦を伝えているが、「親和性」重視の会社では、そもそも女子社員は少ないと考えられるから、男子学生と比べてハンディを負っている面もあるかもしれない。
では、どうしたらいいのか。企業においては、「ソニーはデジタル分野で高い能力を持つ新入社員の年間給与を最大2割積み増す。NECも能力に応じ年1千万円の初任給を提示するなど、限られた優秀な人材を求め異業種間の競争が活発だ。」という状況が生まれている。これに対し、慌てて、「ITスキルをアピール」しようとしても、その底はたかがしれている。本格的なITスキルの習得には時間がかかるし、企業が高収入で採用しようとするような人材は、長期にわたる修練を積んでいる。「新入社員」という言葉に惑わされてはいけない。「新卒学生」ではなく、他社での就業経験もある中途入社者と思った方がよい。
では、新卒学生が目指すべき就職先は、どんなところか。それは、今後10年程度にわたって自分の能力を引き上げてくれる可能性のある会社である。この場合には、必ずしも企業の規模は問わない。セクハラまがいのリクルーターや女性差別の雰囲気のある会社は、入社させてくれるといっても、断った方がいい。また、そんな会社の選考に落ちても、何ら悔やむ必要はない。
内定獲得に学業そっちのけでうつつを抜かし、内定が得られたら浮かれて遊びまわる、そんな学生の安楽な居場所がある会社など、そもそもないし、これからの企業を取り巻く環境は、ますます厳しくなる。
では、「新人を時間をかけて育成し競争力を高める仕組み」は、崩壊するのか。その先行きの展望は難しい。崩壊するのなら、「新卒一括採用」はなくなり、「就活」は死語にならなくても、学生を主体としたものとはならなくなるだろう。
私は、新卒学生を中心とする「育成枠社員」と、専門的技能を直ちに発揮できる「即戦力社員」との区分が、日本社会にとっては望ましいし、若年者の高い失業率に悩む欧米諸国にとっても参考になるのではないかと考えている。
その考え方については、『公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構』の平成30年度研究報告書『21世紀前半期の年金と雇用』の「第7章 少子高齢化の進展の中での年金と雇用」の拙稿を是非参照していただきたい。
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/H_30_03.pdf
ともあれ、学生の本分は学業である。講義をおそろかにし、講義のクラス仲間との質疑や意見交換といった交流を活用できない人が、企業に入って本業にいそしみ、共同作業を円滑にできるのだろうか。基本の戻って考えることが、就活にも必要ではないか。
2020年2月2日日曜日
2020年2月2日 日経朝刊2面 投信、定率分配型が拡大 資産の目減り抑制 毎月分配型の代替
「資産を投資信託で運用しながら、まとまった現金を定期的に受け取れる仕組みが多様化してきた。」との記事である。「代表的な商品の「毎月分配型」は過度な分配金が目立ち、金融庁に資産形成に向かないと指摘された。批判に対応し、運用損などで資産が減れば分配金を自動的に抑える「定率分配型」が増えている。」とのことである。
「定率分配型では、投信の1万口当たりの時価に相当する基準価格に対して一定の割合で分配する。分配率を3%とすると、基準価格が1万円なら分配金は300円だが、運用損が発生して8000円になると分配金は240円に減り、目減りを抑えられる。運用を重視して資産を増やしながら、現金が欲しいニーズにも応える設計にしている。」という。
「定率分配型では販売対象を高齢者に絞っており、販売用資料にも「人生100年」「シニア投資」といった言葉が並ぶ。」ともしている。そして、「証券会社や運用会社も、顧客が定期的に資産を現金化できるサービスを取り入れ始めた。」とのことである。
さて、このような「定率分配型」を、どのように考えればよいのであろう。まず、この記事の全体のトーンからして、これは、「毎月分配型」になるのではないか。従来の「毎月分配型」との違いは、従来は分配額が「定額」であったのに対し、これは「定率」という違いに過ぎない。
なるほど、利益が出ていなくても「定額」の分配をする投信に比べれば、資産額が減少すれば分配額が減る「定率」の方が、投資元本を毀損するリスクは減る。しかし、それは程度の問題に過ぎない。
個別の株式の場合には、投信の分配にあたる配当は制限されており、蓄積された利益の範囲内でしか配当は行えない。ところが、投信においては、追加型株式投資信託の運用の収益に基づいた分配金である「普通分配金」の他に、「特別分配金」があるが、それは金融庁のホームページの用語集では、「元本払戻金と同義」とされている。
こうした「特別分配金」が許される理由は、よく分からない。投資家が投資資金を回収せざるを得ない場合が考えられるが、それは投信の一部解約で対応できるのではないか。
記事では、「毎月分配型は分配金を抑えて長期に運用すべき若年層などにも販売されていた。元本を取り崩していると認識していない投資家もいた。」としている。論外の話であり、まるで投資詐欺のようなものである。「高齢者に絞って」いるというが、今後はどうなるかは分からないし、これからの投資可能期間が少なく、次第に認知症リスクの高まる高齢者が、果たして、この「定率分配型」の仕組みの本質を、どこまで理解して投資するのだろうか。国民に染み付いた「投資は怖い」という感覚は、これまで投資業界が示してきた体質の必然的な帰結ではないのか。
2020年1月31日金曜日
2020年1月31日 日経朝刊27面 (私見卓見)日本も携帯番号での送金を
2020年1月25日 日経朝刊5面 スマホ決済、気づけば借金 若者に多重債務リスク
2020年1月25日 日経夕刊3面 NY市、現金お断りの店禁止へ 法案可決、低所得者に配慮
最初の「私見卓見」での論説は、麗沢大学の中島真志教授によるもので、「キャッシュレス化には実は2つの局面がある。店舗と消費者間の決済を指す「B2C決済」と、個人と個人の決済を指す「P2P決済」だ」とし、「社会全体でキャッシュレス化を進めるにはP2P決済も欠かせないが、日本では議論が抜け落ちている。」というものである。
教授は、海外で普及する「携帯番号送金」の仕組みに言及し、「最も成功しているのがスウェーデンの「スウィッシュ」で、国民の7割以上が利用するサービスだ」としている。そして、「裏で稼働しているのは既存の銀行間の決済システム(日本でいえば全銀システム
)」であるが、「日本では各行がバラバラにキャッシュレス決済を打ち出し、利用者は使い勝手が悪い。」ので、「銀行界が一丸となって「日本版スウィッシュ」を導入すべき」と結んでいる。
これに関連するのが、上記2番目の記事で、「多重債務者が再び増え始めている」ことの背景にあるのが「スマートフォンを使う買い物と簡単な借り入れの増加だ。キャッシュレス決済の普及もあり、個人が気づかないうちに多額の借金を抱えるリスクにさらされている。」というものである。
「スマホを使う新しいサービスは買い物と借り入れのハードルを下げる」ことになり、「キャッシュレス決済の普及でさらに広がる可能性が高い」ということである。これに対し、記事では、小野仁司弁護士は「貸金業のみが与信とは限らず、キャッシュレス決済を含めた若者の実態把握が必要だ」と話す、とし、また、ニッセイ基礎研究所の井上智紀氏は「借り入れに依存せざるを得ない世帯が増えている可能性がある」と指摘する、としている。
一方、3番目の記事は、ニューヨーク市が現金で支払いができない「キャッシュレス店舗」の禁止に乗り出した、というものである。「同市市議会が小売店や飲食店が現金による支払いを拒否し、クレジットカードなどに限ることを禁じる法案を賛成多数で可決」したのは、「クレジットカードを作れない低所得者層を保護する目的がある」とのことである。
法案提出の議員は、「カードを持つことができない有色人種の地域社会に差別的な効果をもたらす」と説明したそうである。「ニューヨーク市の調査によると、2019年時点で全世帯の11.2%が銀行口座を持たず、21.8%は口座はあるがローンの支払いなどに限られ、カードを十分に利用できない状態だった。」だそうである。
以上を踏まえて、キャッシュレスについて考えて見ると、日本の場合、海外に比較して現金での買い物などの比率が高いとされているが、それを支えているのが、全国津々浦々にあるATM網である。銀行はATMを減らしているが、ゆうちょのATMは各所にある上に、今では広く普及しているコンビニATMが利用できる。
キャッシュレスだろうと、利用する上では、預金残高の裏付けが必要である。それがなければ、キャッシングで借入となるのが注意すべき点で、金利が高う上に、キャッシュレスだと使い過ぎの歯止めがかかりにくい。クレジットカードのリボ払いなどは論外で、高利貸しと何ら変わるところはない。
現金での生活は、収入の範囲内での支出という身の丈の合ったものになるし、災害時にはキャッシュレス対応機器が停止することもあるので、現金の方が都合がよい。
それでもキャッシュレス化が進んでいるのは、「電子商取引(EC)のポイント目当てでクレジットカードを作り、スマホにひも付けてコンビニエンスストアなどでQRコード決済する。」という流れによる。極めつけは、昨年10月の消費税増税に合わせて導入されたキャッシュレス還元である。貴重な増収財源を使っての還元は、一体何を目的としているのか分かりにくいが、増税感の先送りであろう。その先には、マイナンバー還元も控えているという。
「私見卓見」での教授は、このようなキャッシュレスの負の側面には触れていない。紙面の制約もあろうし、主張がキャッシュレス推進の立場だからだろうが、受け手の読者としては、慎重に受け止める必要があるだろう。
もう一つ気になるのは、携帯番号という媒介手段である。実のところ、これが到るところに蔓延している。実感としては、若者にとっては、マイナンバーよりも普及していると思われるが、果して、その保護は十分なのだろうか。携帯といっても大方はスマホだろうが、それを紛失すると大事で、財布を落とした場合の比ではない。マイナンバーのセキュリティを気にする人は多いが、携帯番号のセキュリティ管理も、もっと強化する必要があるのではないか。社会問題となっている「振り込め詐欺」も、高齢者にスマホ決済が行き渡れば、スマホ送金に切り替わって、ますます摘発が難しくなるだろう。
2020年1月25日 日経朝刊5面 スマホ決済、気づけば借金 若者に多重債務リスク
2020年1月25日 日経夕刊3面 NY市、現金お断りの店禁止へ 法案可決、低所得者に配慮
最初の「私見卓見」での論説は、麗沢大学の中島真志教授によるもので、「キャッシュレス化には実は2つの局面がある。店舗と消費者間の決済を指す「B2C決済」と、個人と個人の決済を指す「P2P決済」だ」とし、「社会全体でキャッシュレス化を進めるにはP2P決済も欠かせないが、日本では議論が抜け落ちている。」というものである。
教授は、海外で普及する「携帯番号送金」の仕組みに言及し、「最も成功しているのがスウェーデンの「スウィッシュ」で、国民の7割以上が利用するサービスだ」としている。そして、「裏で稼働しているのは既存の銀行間の決済システム(日本でいえば全銀システム
)」であるが、「日本では各行がバラバラにキャッシュレス決済を打ち出し、利用者は使い勝手が悪い。」ので、「銀行界が一丸となって「日本版スウィッシュ」を導入すべき」と結んでいる。
これに関連するのが、上記2番目の記事で、「多重債務者が再び増え始めている」ことの背景にあるのが「スマートフォンを使う買い物と簡単な借り入れの増加だ。キャッシュレス決済の普及もあり、個人が気づかないうちに多額の借金を抱えるリスクにさらされている。」というものである。
「スマホを使う新しいサービスは買い物と借り入れのハードルを下げる」ことになり、「キャッシュレス決済の普及でさらに広がる可能性が高い」ということである。これに対し、記事では、小野仁司弁護士は「貸金業のみが与信とは限らず、キャッシュレス決済を含めた若者の実態把握が必要だ」と話す、とし、また、ニッセイ基礎研究所の井上智紀氏は「借り入れに依存せざるを得ない世帯が増えている可能性がある」と指摘する、としている。
一方、3番目の記事は、ニューヨーク市が現金で支払いができない「キャッシュレス店舗」の禁止に乗り出した、というものである。「同市市議会が小売店や飲食店が現金による支払いを拒否し、クレジットカードなどに限ることを禁じる法案を賛成多数で可決」したのは、「クレジットカードを作れない低所得者層を保護する目的がある」とのことである。
法案提出の議員は、「カードを持つことができない有色人種の地域社会に差別的な効果をもたらす」と説明したそうである。「ニューヨーク市の調査によると、2019年時点で全世帯の11.2%が銀行口座を持たず、21.8%は口座はあるがローンの支払いなどに限られ、カードを十分に利用できない状態だった。」だそうである。
以上を踏まえて、キャッシュレスについて考えて見ると、日本の場合、海外に比較して現金での買い物などの比率が高いとされているが、それを支えているのが、全国津々浦々にあるATM網である。銀行はATMを減らしているが、ゆうちょのATMは各所にある上に、今では広く普及しているコンビニATMが利用できる。
キャッシュレスだろうと、利用する上では、預金残高の裏付けが必要である。それがなければ、キャッシングで借入となるのが注意すべき点で、金利が高う上に、キャッシュレスだと使い過ぎの歯止めがかかりにくい。クレジットカードのリボ払いなどは論外で、高利貸しと何ら変わるところはない。
現金での生活は、収入の範囲内での支出という身の丈の合ったものになるし、災害時にはキャッシュレス対応機器が停止することもあるので、現金の方が都合がよい。
それでもキャッシュレス化が進んでいるのは、「電子商取引(EC)のポイント目当てでクレジットカードを作り、スマホにひも付けてコンビニエンスストアなどでQRコード決済する。」という流れによる。極めつけは、昨年10月の消費税増税に合わせて導入されたキャッシュレス還元である。貴重な増収財源を使っての還元は、一体何を目的としているのか分かりにくいが、増税感の先送りであろう。その先には、マイナンバー還元も控えているという。
「私見卓見」での教授は、このようなキャッシュレスの負の側面には触れていない。紙面の制約もあろうし、主張がキャッシュレス推進の立場だからだろうが、受け手の読者としては、慎重に受け止める必要があるだろう。
もう一つ気になるのは、携帯番号という媒介手段である。実のところ、これが到るところに蔓延している。実感としては、若者にとっては、マイナンバーよりも普及していると思われるが、果して、その保護は十分なのだろうか。携帯といっても大方はスマホだろうが、それを紛失すると大事で、財布を落とした場合の比ではない。マイナンバーのセキュリティを気にする人は多いが、携帯番号のセキュリティ管理も、もっと強化する必要があるのではないか。社会問題となっている「振り込め詐欺」も、高齢者にスマホ決済が行き渡れば、スマホ送金に切り替わって、ますます摘発が難しくなるだろう。
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