2020年2月3日月曜日

2020年2月3日 日経朝刊2面 (迫真)惑う就活「新ルール」(1)専門スキルで武装せよ

「就職情報大手ディスコ(東京・文京)によると、11日時点ですでに内定を得た3年生は約7%2年前の倍の水準だ。」という一方で、「長期の就活を強いられる人も増えている」ことについて、「就活生1人に2社近い求人がある売り手市場は続いているのに、なぜ二極化が進むのか。」と問いかける記事である。
「説明会は3月解禁、面接は6月解禁」と定めるものの罰則のない「政府ルール」に対し、「これまで経団連ルールに従っていた大手企業も優秀な学生の確保へなりふりを構っていられない。」状況になっているという。
一方で、「デジタル時代に即した人材が不可欠な日本企業は、年功序列など旧来の賃金・雇用システムに変わる最適解を求め試行錯誤している。」という地殻変動も起きている。学生側にも「ITなどの専門スキルで武装する動きが広がる」状況になっているそうである。
「日本企業の雇用は年功序列や終身雇用など「メンバーシップ型」と呼ばれる。新人を時間をかけて育成し競争力を高める仕組みはかつて機能した。求められる人材のスキルが刻一刻と変化するデジタル競争の時代。仕事内容に応じたポストを用意し、適切な人材をあてがう「ジョブ型雇用」への過渡期に立つ。」と記事は結んでいる。

新卒一括採用は、「年功序列や終身雇用」といった仕組みに結びついているもので、いわば「会社村」への囲い込みの入り口といえる。このような会社村で入村で重視されるのは、必ずしも専門的能力ではない。何より、会社との「親和性」が重視される。このことは、入社後にも「協調性」が重視されるという流れに連なっている。おまけに、必ずしも優秀な学生が採用されるとは限らない。多くの入社希望の学生を相手にせざるを得ない大企業は、最初の選考を若手社員の委ねることが少なくない。この若手社員が問題で、女子学生へのセクハラ問題を起こす場合もあるし、また、あまりに優秀そうな学生は、将来の自分のライバルになりそうだから落とす、ということもあり得ないことではない。
記事では、「早稲田大商学部3年の女子学生」の苦戦を伝えているが、「親和性」重視の会社では、そもそも女子社員は少ないと考えられるから、男子学生と比べてハンディを負っている面もあるかもしれない。
では、どうしたらいいのか。企業においては、「ソニーはデジタル分野で高い能力を持つ新入社員の年間給与を最大2割積み増す。NECも能力に応じ年1千万円の初任給を提示するなど、限られた優秀な人材を求め異業種間の競争が活発だ。」という状況が生まれている。これに対し、慌てて、「ITスキルをアピール」しようとしても、その底はたかがしれている。本格的なITスキルの習得には時間がかかるし、企業が高収入で採用しようとするような人材は、長期にわたる修練を積んでいる。「新入社員」という言葉に惑わされてはいけない。「新卒学生」ではなく、他社での就業経験もある中途入社者と思った方がよい。
では、新卒学生が目指すべき就職先は、どんなところか。それは、今後10年程度にわたって自分の能力を引き上げてくれる可能性のある会社である。この場合には、必ずしも企業の規模は問わない。セクハラまがいのリクルーターや女性差別の雰囲気のある会社は、入社させてくれるといっても、断った方がいい。また、そんな会社の選考に落ちても、何ら悔やむ必要はない。
内定獲得に学業そっちのけでうつつを抜かし、内定が得られたら浮かれて遊びまわる、そんな学生の安楽な居場所がある会社など、そもそもないし、これからの企業を取り巻く環境は、ますます厳しくなる。
では、「新人を時間をかけて育成し競争力を高める仕組み」は、崩壊するのか。その先行きの展望は難しい。崩壊するのなら、「新卒一括採用」はなくなり、「就活」は死語にならなくても、学生を主体としたものとはならなくなるだろう。
私は、新卒学生を中心とする「育成枠社員」と、専門的技能を直ちに発揮できる「即戦力社員」との区分が、日本社会にとっては望ましいし、若年者の高い失業率に悩む欧米諸国にとっても参考になるのではないかと考えている。
その考え方については、『公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構』の平成30年度研究報告書『21世紀前半期の年金と雇用』の「第7章 少子高齢化の進展の中での年金と雇用」の拙稿を是非参照していただきたい。
 https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/H_30_03.pdf

ともあれ、学生の本分は学業である。講義をおそろかにし、講義のクラス仲間との質疑や意見交換といった交流を活用できない人が、企業に入って本業にいそしみ、共同作業を円滑にできるのだろうか。基本の戻って考えることが、就活にも必要ではないか。

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