2020年2月4日火曜日

2020年2月4日 日経朝刊7面 運用会社、代替投資を強化 手数料競争が変革迫る

「大手運用会社がビジネスモデルの転換を迫られている。収益源としていた投資信託で手数料引き下げ競争が起きていることから、ヘッジファンドや不動産といった比較的高い手数料が見込めるオルタナティブ(代替投資)に進出している。」との記事である。
オルタナティブは、「複雑な運用手法や、流動性が低い投資先を管理するノウハウが必要なため、信託報酬が相対的に高い。」ためである。「低金利に悩み、ある程度リスクをとっても運用したいという投資家からの需要」が、その背景にある。
この記事は、基本的には個人の投資についてのものだが、企業年金の方では、一足先にオルタナ投資が導入されており、「2019年8~10月に700超の企業年金基金や厚生年金基金が答えた日経企業年金実態調査では、「今後増やす」と回答した比率が最も高い資産はオルタナティブだった。」という状況にある。

さて、このオルタナ投資を、どう考えればよいのであろうか。これに注目が集まるのは、債券や株式といった伝統的資産への投資が、低金利や不透明な投資環境の中で、思ったようなパフォーマンスをあげられないことによる。「代替」というのは、そのような伝統的な投資対象に代わるものということで名づけられたものである。
私は、1月末に米国年金会議に出席し、それについてブログにも書いた。
 https://kubonenkin.blogspot.com/2020/01/20200124.html
実は、その会議の中でも、オルタナ投資が取り上げられていた。
 https://www.asppa.org/sites/asppa.org/files/DOCs/LA_Pension/WS26-%20Alternative%20Investments%20in%20Retirement%20Plans.pdf
そこで、その概要を、ざっとご紹介しよう。
オルタナ投資は、給付建て制度(DB)から始まったものであるが、この資料では、掛金建て制度(DC)での取り扱いについて触れている。
米国での法規制にからむので、禁止取引、受託者責任、差別禁止の観点が、まず述べられている。例えば、差別禁止では、高給の従業員だけが利用できるものではないのか、といった具合である。
また、気を付けなければならない問題として、流動性の問題が指摘されている。これは、オルタナ投資は、債券や株式と違って、市場で簡単に売買できるものではなく、換金や処分に制限があったり時間を要するものが多いことによる。
上記資料では、いろいろなタイプのオルタナ投資について、事例を示して注意点を述べているが、オルタナ投資で重要なのは、流動性の他に、透明性である。すなわち、実際には、どのような投資対象に、どのように投資しているかという中身である。
ところが、その把握が難しい。オルタナ投資の提供側の言い分は、それこそが「企業秘密」であって、様々な工夫をしているから成果があがっているのであり、そのノウハウは全面的には開示できないというのである。
これは、都合の良い言い分で、実際のところ、日本の企業年金でも、「AIJ事件」という詐欺事件が起き、多くの企業年金が多額の資産を失っている。それは、「オルタナ投資」を前面に打ち出していたわけではなさそうだが、透明性を欠くという点では同列である。
現代投資理論では、様々な投資対象を組み込むことによって、リスクを減らして最良のリターンを追及することができるとしている。中には、オルタナ投資の収益の債券や株式との連動度合(相関係数)は小さいので、分散投資の意味があるとするものもあるが、中身が分からないのなら、戯言と言うしかない。
先行したDBの資産運用では、外貨建て資産への投資やオルタナ投資で、痛い目にあっている経験がある。手数料の安いパッシブ運用が増えて儲からなくなった運用会社が、手数料目当てでオルタナ投資の販売に力を入れるのは、そもそも胡散臭い。投資することが悪いとは言わないが、「分からないものには手を出さない」ことが賢明なのは、古来からの真実であろう。

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