2020年3月10日火曜日

2020年3月10日 日経朝刊9面 マイナス金利 回避に限界 メガ銀襲う預金の大波 大口法人に負担転嫁も

この記事は、「日銀のマイナス金利政策が新たな局面を迎えている。これまでマイナス金利の適用を免れてきたメガバンクが、いよいよ適用条件に抵触する公算が大きくなってきた。超低金利で行き場を失ったマネーが大量に預金に流れ込んでいることが背景にある。メガバンクへのマイナス金利の適用は、負担を大口の法人預金に転嫁する導火線になるかもしれない。」というものである。
そもそも、「日銀のマイナス金利政策は、銀行が日銀に預けている当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を課すというもの。余ったお金を日銀に積んでおけば自動的に金利収入が得られる仕組みを改め、投融資に振り向けさせることでお金を回りやすくするのが狙いだ。」というもので、日銀の当座預金は、(1)0.1%の金利の基礎礎残高、(2)金利ゼロ%のマクロ加算残高(所要準備額と貸出増加支援制度での借入金額)、(3)マイナス0.1%の金利を適用する政策金利残高((1)と(2)を上回るもの)の3階層に分かれており、(3)が日銀の政策金利で、利下げはマイナス金利の深掘りを意味する、ということになっている。
対して、「メガバンクは導入当初の16年3月には(3)のマイナス0.1%の適用残高が2兆円を超えていたが、同5月の10億円を最後に適用残高はゼロが続く。余剰資金を日銀に積まず、運用や海外での融資などに振り向ける工夫をしてきたためだ。」という。
一方で、「マイナス金利を許容しているのが信託銀行や外国銀行だ。20年1月時点で信託銀行のマイナス金利適用残高は9兆4580億円、外国銀行も6兆6380億円に上る。単純にマイナス0.1%をかけると信託銀行の負担は94億円になる。」とのことであるが、「最終的に国民が負担しているということだ」(ある日銀幹部)ということになる。
それは、「信託銀行は公的年金や企業年金などの運用を受託している」からで、「マイナス金利導入前、金融機関が日々の資金をやり取りする銀行間取引市場は、信託銀行にとって待機資金の運用先だった」が、「こうした取引の金利もマイナス圏に沈没。年金の原資を高リスクの投資に振り向けるわけにもいかず、待機資金が日銀の当座預金に積み上がっている。」ということで、「信託銀行はマイナス金利の適用に伴う負担を顧客である公的年金や年金基金などに求めている。年金の受け手は国民であり、突きつめれば国民がマイナス金利を負担しているというわけだ。」ということである。
一方のメガバンクの方も、「今年半ばにもマイナス金利の適用を避けられなくなりそうだ」ということだが、それは、「海外での買収資金くらいしか資金需要がない」(メガバンク幹部)ことによるそうである。「マイナス金利が適用されれば、信託銀行と同じように顧客への転嫁論も現実味を帯びる」ことになるが、「マイナス金利をかけたり、管理手数料を取ったりするとしても一律ではない」(メガバンク幹部)ということになるようである。
そんな中、「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う金融市場の動揺を抑えるため、米連邦準備理事会(FRB)は3日に緊急利下げを実施した。日銀は現時点では「潤沢な資金供給」(黒田東彦総裁)を前面に打ち出し、既存の枠内での対策を柱にすえるが、9日の円相場は一時1ドル=101円台に突入した。円高抑止のためのマイナス金利の深掘りも視野に入ってくる。」わけであるが、「苦境に陥る企業の資金繰り支援に汗をかいてほしいときに、後ろから撃つようなことはしにくい」(日銀幹部)という状況である。
「マイナス金利の深掘りで銀行経営が厳しくなれば、企業を支える本来の役割にも影響が出かねない。」が、「メガバンクに迫るマイナス金利の足音は、導入から4年たったマイナス金利政策の狙いが円高対策に偏り、当初の目的を達成できていないことを映している。」と記事は結んでいる。

マイナス金利について、日銀が作成した資料は、次の通りである。
https://www.boj.or.jp/announcements/education/exp/data/exp01.pdf
これは、2016年3⽉に発表された資料であるが、目標としたインフレは達成できていない。また、「⽇本の会社は、全体でみると、史上最⾼の収益になっていて、経済は良い⽅
向に向かっています。それに、この政策はとても強⼒です。いずれ『プラス』の効果がはっきり出てきて、明るくなってくると思います。」 としていたが、そうなってはおらず、さらに「マイナス金利の深掘り」ということになれば、その影響は甚大であろう。
また、「⽇本の⾦融機関は、リーマンショックでも傷ついていないし、とても健全です。去年もたくさん収益を上げています。⽇銀の預⾦でもマイナス⾦利にするのは⼀部だけにして、あまり銀⾏が困らないようにしました。」 としているが、コロナ・ショックで貸出需要は大きく減るであろうし、預金金利を実質マイナスにしたり、手数料を引き上げたりする動きも目に付くようになっている。金利を引き上げる状況にはないものの、マイナス金利となっている中での金融政策には限界があり、日本は今、にっちもさっちもいかない状況になっているのではないかと思われる。

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