2020年3月9日月曜日

2020年3月9日 日経夕刊2面 ●採用の条件「禁煙」が登場 健康重視の企業、卒煙促す

「3月に入り、来春新卒採用活動が本格化しています。今年は新型コロナウイルスの感染拡大で、大規模な合同説明会の中止が相次ぐといった異変が起きていますが、企業の採用活動自体にも昨年から一風変わった動きが見られます。それは喫煙者の排除です。今年はさらに広がりそうな気配です。」という記事である。
「その背景にあるのは改正健康増進法による規制強化です。受動喫煙防止を目的に今年4月から職場も原則屋内禁煙になります。規制強化を先取りし、就業時間の喫煙を就業規則で禁じる企業も増えています。」とのことである。
SOMPOひまわり生命の応募条件への「非喫煙者もしくは入社時点で喫煙されない方」の明記、ファイザーの「喫煙の有無を採用活動中に確認し、喫煙者は原則入社を断っています。」という対応などを上げ、SCSKの小林良成・人事グループ長の「喫煙は健康リスクを高める。体を壊してしまっては本人のためにならず、会社としても末永く活躍してもらえない。禁煙は経営上も会社に利点のある健康経営の一環です」という説明で結んでいる。

喫煙に対しては、世界的規模での抑止が進んでいる。記事では、「日本人の喫煙率はそもそも低下傾向」として、厚生労働省の「平成30年国民健康・栄養調査」に言及している。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000584138.pdf
喫煙については、上記の24ページで、「現在習慣的に喫煙している者の割合は17.8%であり、男女別にみると男性 29.0%、女性8.1%である。この10年間でみると、いずれも有意に減少している。年齢階級別にみると、30~60歳代男性ではその割合が高く、習慣的に喫煙している者は3割を超えている。」としている。
一方、個人の自由にかかる行動を就活上で規制できるのかという点について、記事では、「企業の採用活動では、法律などの制約がなければ原則として「採用の自由」が認められています。」としている。ただ、若干の疑義が残るのは、例えば、「未婚者に限る」というような条件は、「採用の自由」には認められないだろう。喫煙の場合には、「受動喫煙」の問題があって、個人の嗜好に関するものというレベルを超えているのである。
日本国憲法第14条は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定している。だが、採用活動においても、この基本原則通りに行われているとは言い難い面がある。男女差別は公然と行われてきたから、「男女雇用機会均等法」の制定が必要になったわけである。他にも、問題とされてきた事態は少なくない。
しかし、「喫煙」については、WHOの「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が、2005年2月27日に、「世界的には公衆衛生分野における初めての多数国間条約として本条約が発効されました。」ということになっており、日本も署名している。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/tobacco/index.html
この条約は、「たばこの消費等が健康に及ぼす悪影響から現在および将来の世代を保護することを目的とし、たばこに関する広告、包装上の表示等の規制とたばこの規制に関する国際協力について定めるものである。」のであり、よって条約を締結している日本においても、「たばこの規制」につながる措置は適切とされるわけである。
この規制は、電子タバコにも及んできている。近い将来、麻薬と同様の取り扱いを受ける可能性すらある。学生は、就活対応というレベルを超えて、社会人になる前に喫煙と縁を切った方がいいのである。

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