2020年3月7日土曜日

2020年3月7日 朝日朝刊12面 (声)涙 主婦が働くって欲なことなのか
2020年3月8日 朝日朝刊8面 女性の賃金、男性より16%低く―― UNウィメン・UNDP報告

最初の記事は、73歳の女性からの投書で。「35歳のころ、まだ子育て中だった私は、周囲よりひと足先に半日パートへと、つまり、社会へと飛び立った。」が、待っていたのは「子供を放ったらかしにして。子供とお金とどっちが大事なの」「そんなに働いちゃ、お金がたまってしょうがないでしょ」という周囲からのバッシングだったというものである。
「主婦が外で働くのは欲だから。私は外でなんか働かないわ」「そうだよな。俺は妻を働かせないよ」と夫婦そろって私を笑った人たちもいたそうで、「男性は社会で働いてもいいが、女性が社会で働くことは、それほど欲なことなのだろうか――。」と感慨を振り返ったものである。

次の記事は、「国連が定める国際女性デー(3月8日)を前に、UNウィメンと国連開発計画(UNDP)が5日、政治や労働など各分野で女性の置かれた現状をまとめた報告書をそれぞれ発表した。」というものである。
UNウィメンの報告書は、「男女の平等性」に関するもので、「世界の国レベルの議会で女性議員が占める割合は25%で、1995年の11%からは改善したが、低水準だった。また、閣僚の半数以上が女性の国は14カ国のみ。8割の国に男女平等についての国家的な計画があるが、資金や人材が投入されているのはその3分の1だった。」「女性の賃金は世界的に見て男性より16%低く、管理職は4人に1人。」としており、ニューヨークで会見したUNウィメンのムランボヌクカ事務局長は「この状況を変えて、女性がもっと大きな機会をつかめるようにできるはずだ」と話したとのことである。
一方、UNDPは、「世界人口の8割を占める75カ国・地域を対象に初のジェンダー社会通念指標を公表。2005~14年に学者によって国際的に実施された世界価値観調査をもとに「女性も男性と同等の権利を有している」「大学は女性よりも男性にとって大事だ」など七つの質問の回答を分析した。」結果として、「75カ国・地域の約9万人のうち、88%(男性91%、女性86%)がいずれかの分野で女性への偏見を持っていた。政治指導者については、「男性の方が女性よりもよくできる」が5割、企業の重役についても4割がそう答えたという。」としている。そのうち、「日本の回答者約2400人で少なくとも一つ以上の質問で偏見がみられた割合は69%。75カ国・地域中、17番目に低かった。」とのことである。

最初の投書の女性が語った状況は、約40年前の1980年頃のことであるが、当時は、「男は仕事、女は家庭」という考え方が浸透していたことを窺わせる。今は、夫婦共稼ぎが主流となっており、若者には、ピンと来ないであろう。なお、「欲」というのは、金銭的な事を言っているのだろうが、働く事による社会との接点・生き甲斐につながる「欲」というか「意欲」は、今では非常に大事なものになっている。

次の記事での報告書のデータについてであるが、記事表題にもしている男女間の賃金格差いについて、独立行政法人労働政策研究・研修機構の『データブック国際労働比較2019』で見てみよう。
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2019/index.html
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2019/05/d2019_T5-11_T5-12.pdf
上記の「第5-12表フルタイム労働者の中位所得における男女間賃金格差」によると、2017年において、女性の賃金は、男性よりも日本では24.5%低く、韓国で34.6%低いのを除くと、比較対象国中で最も格差が大きい。また、2005年は32.8%低く、おおむね現在の韓国と同様の状況であったことになる。その点では、格差は着実に縮小してみたように見えるが、この表はフルタイムの労働者についてのものであり、非正規労働者は含まれていない。実感では、男性フルタイムと女性非正規との間には、想像を絶する格差がある。
ここで、最初の記事に戻ってみよう。男女間の賃金格差が大きい場合、賃金の低い女性よりも高い男性の方が多く働けるよう、「仕事は男性、家庭は女性」という役割分担の方が家計上は有利になる。当初の40年前なら、賃金格差は相当に大きかったはずなので、周辺の反応も、記述のようなものだった面があるのであろう。
なお、「男性との賃金格差、結婚観に影響」という記事についての、下記のブログも参照されたい。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/03/20200302AA26.html
一部に、「女性を優遇するのか」という声もあるようだが、そういう考え方自体に、差別に染まり切った体質が表れてくるのである。

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