2020年3月4日水曜日

2020年3月4日 日経朝刊19面 (大機小機)持続可能な経営モデル

「今年のダボス会議は資本主義のあり方と気候変動が2大テーマだった。いずれも持続可能性への挑戦として受け止められているからだ。これを契機としてサステナビリティーという言葉が世界中でより意識されるようになった。」という書き出しの論説である。
続けて、「資本主義は冷戦終結によって世界に浸透した。米国型資本主義は成功モデルとして世界の注目を集めたが、その一方で、1%の富裕層が国富の35%を保有する極端な格差と分断を生じさせた。」とし、「米主要企業の最高経営責任者(CEO)などが所属する「ビジネス・ラウンドテーブル」は企業の存在意義を再定義する必要に迫られ、株主至上主義を見直してあらゆるステークホルダーを重視する方針を表明した。このままでは米国の経営モデルは持続可能性を問われかねないとの判断だろう。こうした動きを受け、一部の日本企業からは「米国型経営が日本の経営モデルに注目するようになった」との声も聞かれる。」としている。
つまり、「多くの日本企業は古くから「三方良し」を理念として掲げ、ステークホルダー経営が根付いているという主張である。しかし日本の経営モデルは本当にサステナブルなのだろうか。「三方良し」には売り手と買い手と世間はあっても株主という視点がない。従って安定が優先され成長志向に乏しく、結果として驚くほど低収益企業が多い。」という。
さらに、「平成の30年にわたる株価の長期低迷はその証左だろう。国際通貨基金(IMF)によれば、1人当たり国内総生産(GDP)も平成の初期は世界でトップクラスだったが、今や25位前後に沈む。稼ぐ力が弱いため賃金への影響も深刻だ。先進国で唯一賃金が上昇しない国になっている。これでは人材も集まらずグローバル競争に勝てない。日本の経営モデルは現状では決してサステナブルとは言えないだろう。成長している企業はごくわずかというのが実態だ。」としている。
最後に、「企業には気候変動という難題も迫る。「気温20度を超えた南極」「熱波による山火事の頻発」「豪雨による河川の氾濫」など異常気象が世界で猛威を振るい企業活動を脅かしている。日本企業がイノベーションを通じて気候変動に対処し、どのように低収益を克服するか。そのシナリオを具体的に示せれば、その時こそ持続可能な経営モデルとして世界から注目を集めるに違いない。」と結んでいる。

まず、論説で参照しているダボス会議2020は、次のようなものである。
https://jp.weforum.org/events/world-economic-forum-annual-meeting-2020
また、米「ビジネス・ラウンドテーブル」の宣言については、次を参照されたい。
https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2019/1205_11.html
https://opportunity.businessroundtable.org/wp-content/uploads/2019/09/BRT-Statement-on-the-Purpose-of-a-Corporation-with-Signatures-1.pdf
この宣言について、「多くの日本企業は古くから「三方良し」を理念として掲げ、ステークホルダー経営が根付いているという主張」があるが、「三方良し」には売り手と買い手と世間はあっても株主という視点がないとし、「驚くほど低収益企業が多い」という結果につながっている、としているわけである。
「1人当たり国内総生産(GDP)」の記述については、次の労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2019」の資料を参照されたい。
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2019/01/d2019_G1-1.pdf
また、気候変動については、2019/12/2~15の間にCOP25(気候変動枠組条約第25回締約国会議)がスペインのマドリードで開催されており、国立環境研究所の社会環境システム研究センターの副センター長の亀山康子氏が、次の『COP25の概要と残された課題』を執筆している。
https://www.nies.go.jp/social/topics_cop25.html
日本は、このCOP25で、「地球温暖化対策に前向きな取り組みを見せない国」に対する「化石賞」を不名誉受賞したわけだが、論説の言うような「日本企業がイノベーションを通じて気候変動に対処」できるのかどうか、はなはだ疑わしいと言わざるを得ない。

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