2020年3月4日水曜日

2020年3月4日 日経夕刊6面 会社員の妻が死亡、遺族年金は? 子の有無・夫の年齢で違い

問答形式の記事で、「45歳の男性会社員です。共働きの妻に万一のことがあった場合、子がいないと遺族年金が受け取れないことがあると聞きました。夫が死亡した場合と異なるのですか。」という質問に、社会保険労務士の井戸美枝氏が答えているものである。
まず、「遺族年金は一家の働き手や年金を受け取っている人などが死亡したとき、その家族に支給される年金です。死亡した人の年金の加入状況や受け取る人の年齢などによって、遺族基礎年金、遺族厚生年金のいずれか、または両方が支給されます。」としている。
まず、遺族基礎年金については、「受け取れるのは死亡した人に子がいる配偶者またはその子です。死亡した人に生計を維持されていたことが条件で、具体的には残された配偶者の年収が850万円未満です。」としている。
次に、遺族厚生年金については、「受け取る優先順位は以下の通りです。(1)子がいる妻、子がいる55歳以上の夫(2)子(3)子のない妻(4)子のない55歳以上の夫――などの順です。このため、夫が死亡した場合、妻は年齢を問わず子がいなくても遺族厚生年金は受け取れます。」が、「会社員の妻が死亡した例で見てみましょう。夫が45歳で、15歳の子がいるとします。」という場合には、「夫は55歳未満なので遺族厚生年金は支給されません。」ということになるのである。

このように、遺族厚生年金については、夫と妻とで受給要件に違いがある。実は、遺族基礎年金についても違いがあったのであるが、男女平等に反するとして法改正が行われ、「子がいる妻」が「子がいる配偶者」に改められて、平等の取り扱いとなった。なお、遺族厚生年金の保護の主体は「子」であり、「配偶者」ではない。すなわち、本来は「子」に対する遺族基礎年金が、保護者たる「配偶者」に支給されているわけである。
一方、遺族厚生年金の保護の第一は、「配偶者」である。これは、被保険者の死亡によって生計が困窮する配偶者を保護の主体の第一の主体としているものある。ところが、ここに夫と妻とでは違いがあり、夫は55歳以上でないと遺族厚生年金を受給することはできないのである。
しかし、当然、それも男女平等に反するのではないかということで、これは訴訟になったが、最高裁で、「死亡した職員の夫について,当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを遺族補償年金の受給の要件としている部分は,憲法14条1項に違反しない。」として、夫についての年齢制限は合憲となった。(なお、「遺族補償年金」という名称は、死亡者が地方公務員であったことによる。)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86612
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/612/086612_hanrei.pdf
その理由について、上記の最高裁判決は、「男女間における生産年齢人口に占める労働力人口の割合の違い,平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違い等からうかがえる妻の置かれている社会的状況に鑑み」てのものとしている。
当然ながら、この「男女差別があるから、夫における制限は許容される」という判決に対しては批判がある。夫婦のあり方や、男女の違いが激変している状況に鑑みれば、時代錯誤的であると言えるかもしれない。
ともあれ、現状は、そのようになっている。なお、遺族年金関係の詳細を知りたければ、次を参照されたい。
https://www.nenkin.go.jp/pamphlet/kyufu.files/LK03-3.pdf

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