2020年2月10日月曜日

2020年2月10日 朝日夕刊1面 韓国映画「パラサイト」米アカデミー賞
2020年2月3日 日経朝刊35面 「極狭」物件 無駄ない生活 1人寝転ぶのでやっとのアパート、若者に人気

最初の朝日の記事は、「昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が9日(日本時間10日)、米アカデミー賞の国際映画賞(旧・外国語映画賞)と脚本賞などを獲得した。」というものである。歴史的快挙と言える。
「物語で描かれた現地の住宅を訪ねると、韓国が抱える格差と社会の歩みが垣間見えた。」としている。「ソウル南部の冠岳区三聖洞。高層マンションが立つ小高い丘の崖下に、3階建ての集合住宅が並んでいた。1階部分は空間のおよそ半分が地面より低い半地下の部屋になっており、雨が降ると屋内が水浸しになるところもある。」という。「空気もよくないし、好きで住むわけがない。金がないんだ」というのが住民の声である。
「韓国に半地下の部屋ができたのは、北朝鮮との緊張関係が影響している。」という特殊事情があるようだが、この映画が注目を集めたのは、記事でのコメントで、韓国に住む西京大学の泉千春副教授が「半地下住宅は韓国にとって現在もリアルかつローカルな題材だ。それが映し出す社会の格差は、世界的に共通するテーマでもある」としている格差問題を象徴的に描き出したからだろう。

一方、次の日経の記事は、少し前のものだが、韓国の状況が、日本とかけ離れたものではないことを示すものである。東京都心の「居室の広さ約5平方メートル(約3畳)」という「極狭(ごくせま)アパート」が、「さぞ息が詰まると思いきや、満足して暮らす人が多いという。」記事である。それでも都心の京王線笹塚駅の例では、「家賃が月6万4500円」という。
記事では、「若者をひき付けるのは安さだけではない。」とし、最大の要因は、「時間の無駄」だとしている。「浮いた時間やお金を投資の勉強などに充てられるようになった。生活空間の狭さに対応して家具などを厳選するうち、自分が本当に好きな物に気付くこともできたという。」のが取材を受けた若者の考えだそうである。
記事では、「彼らの姿は持ち物を極力減らす流行の生き方「ミニマリスト」に通じる。」とし、「家は住む人の価値観を映す。都心で増殖する極狭アパートは、物質的な豊かさとは異なるものに価値を見いだす人々が増えている表れといえる。」と結んでいる。

後の記事では、「極狭アパート」を肯定的に描いているが、果して、それが実相なのだろうか。記事でも「部屋探しで同社を訪れた際にいったんは間取りや広さを気にする」とのことであり、やはり最終的な決定要因は「家賃」であろう。
今や、当たり前の状況となり、報道もあまりされなくなったが、「ネットカフェ難民」も少なくない。「ミニマリスト」ときどるのなら、彼らの方が、もっとそれらしいが、実質的な「ホームレス」とも言えるのではないか。日本だけでなく、アカデミー賞の地ハリウッドのあるカリフォルニア州では、高騰する家賃でホームレスが急増し、車の中に住む人も多いそうである。
「衣食住」は、日本の生活の基本である。都心にも、高層のタワーマンションの最上階のフロアに住む富裕層も、少なからずいる。そのような貧富の差が、自己責任の名の下に許容されるものなのか、社会正義や公平とは、一体何なのか。時あたかも、来年の米大統領選に向けて論じられるべき大きな争点である。

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