2020年4月26日日曜日

2020年4月26日 日経朝刊3面 国民年金保険料を減免 コロナで収入急減なら
2020年5月2日 朝日朝刊4面 国民年金保険料の免除、減収者向け基準緩和

いずれの記事も同じ内容であるが、日経の記事は、制度実施前の動向報道であるのに対し、朝日の記事は制度実施に伴う案内記事である点に違いがある。

日経記事は、「厚生労働省は国民年金の保険料について、収入が大幅に減少した人を免除や猶予の対象にしやすくする。新型コロナウイルス感染症の影響が広がり、国内に約170万人とされるフリーランスなどで収入が急減するケースが増えているため、基準を緩めて支援する。」としている。
「国民年金は自営業者やフリーランス、非正規社員などが加入する。加入者は約1500万人で、2020年度の保険料は月1万6540円。」で、「どんな人が免除・猶予の対象になるかは現在、2年前の所得で判断している。この場合、新型コロナによる影響を反映できないため、2月以後の月収が急減している人も対象に加える。」とのことである。
一方、「会社員らが加入する厚生年金も特例が設けられ、延滞金なしで保険料の納付猶予を受けられる。新型コロナの影響で売り上げが20%以上減少するなどした企業が対象だ。」としている。

朝日記事は、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で収入が減った人を対象に、5月1日から国民年金保険料の免除基準が緩和された。主な加入者の自営業者や非正規労働者、フリーランスは休業要請による影響を受けやすいためだ。学生を対象に納付を猶予する制度も合わせて緩和した。」というものである。
「大学や専門学校などの学生には、本人の前年所得が118万円以下なら国民年金保険料の納付が猶予される「学生納付特例」がある。今回、休業要請でアルバイトが減った学生もいることから、2月以降の所得が年間換算して118万円以下なら特例の対象にする。」としている。

詳しい案内は、日本年金機構に掲載されている。
「新型コロナウィルス感染症の影響による減収を事由とする国民年金保険料免除について」
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/0430.html
「【事業主の皆様へ】「厚生年金保険料納付猶予相談窓口」の設置について」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2020/202004/20200422.html
このような報道に触れた場合には、必ず、該当機関の情報をチェックするようにした方がよい。ただし、制度実施後でないと参照することはできない。
なお、「厚生年金保険料納付猶予」については、注意すべき点がある。事業主には、事業主負担分のみならず、従業員負担分についても納付の義務がある。納付猶予は、両方の保険料についての措置であるが、従業員分は徴収していながら、納付猶予を申請する事業主も多いと思われる。万一にも、納付猶予のままで企業が倒産すれば、従業員分の保険料も納付されていない状況になり、将来の年金額に反映されないリスクがある。したがって、従業員としては、給与明細をきちんと保管し、自分の保険料が事業主に徴収されていることを証明できる状況にしておく必要がある。
倒産といった場合のみならず、過去には、事業主が従業員分を納付せずにネゴばばしていたケースもあった。事業主に徴収されたことが証明できれば、年金額に反映することとなるので、気をつけるべきである。

2020年4月24日金曜日

2020年4月24日 朝日朝刊2面 ●(時時刻刻)学生困窮 バイト激減、実家も頼れず

「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、退学に追い込まれかねない学生が各地にいる。親の収入減やアルバイト先の休業などで、学費や生活費が払えない状況になったためだ。国の支援制度では救いきれない仲間のために学生たちが自ら動き出し、独自の支援策を始めた大学や自治体もある。」という記事である。
金沢大3年の男子学生の「生きていけるか不安で眠れない。給付型奨学金を拡充してもらうなどしないと、秋には退学か休学をしなければならなくなる」や、広島市の公立大3年の女子学生の「大学生活をあきらめたくない」と、大学まで往復4時間かかる実家に戻ることを考え始めた、などが紹介され、学生団体「FREE」の新型コロナの影響に関する学生アンケートの結果では、「回答した全国120校の514人のうち、退学を「少し考える」「大いに考える」との回答は計40人で、13人に1人に上った。」という。
追い込まれた学生の支援を始めた大学や、自治体が学生を支援するケースも出てきているはいるようである。

「だが、大半の大学は学費の減免には踏み込んでいない。都内の有名私大も学費の延納や奨学金制度の充実を図る一方、学費については「提供するサービスや中長期にわたる施設設備の整備・維持を包括的に考慮して定めており、履修科目数や授業回数などで定めていない」と説明する。」という状況のようである。学校システム全体を9月入学に移行する案も浮上しているが、そうなると、経営を維持できない大学が少なからず出て来る、との見方もある。
この構造は、居酒屋などの休業の場合と同じであり、休業しても、人件費はかさむ。大学の場合には、教職員の給与を支払う必要があるのである。一方の学生側からすれば、講義が提供されていないのに、という思いも出て来るだろう。
今回の新型コロナの事態が発生するまで、かくも日本の教育におけるIT化が遅れていることに危機感を持っていた教育関係者は少ないのではないか。講義をしないのに学費をとるのは、来店しない顧客から料金を徴収するようなもので、まともな状況ではない。一方、オンライン講義が行き渡れば、学生は物理的な大学の場所に縛られることなく、自由に魅力的な講義を受講することも可能になってくる。新型コロナ後の世界は、学問においても、それ以前とは、大きく異なるものになりそうである。

2020年4月23日木曜日

2020年4月23日 日経朝刊2面 (社説)問題多い年金法案の拙速審議は許されぬ

「国会が年金関連法改正案の審議を始めた。厚生労働省が実施した2019年の財政検証結果を受けた法案だが、制度の長期的な持続性を高める策を十分に盛り込んだとは言いがたい。」とする社説である。
「制度の持続性を高めるカギは、経済がデフレ基調のときに年金のマイナス改定を可能にしたり、基礎年金の最低保障機能を充実させたりする改革にある。だが法案は将来世代への視点が弱く、これらの課題解決には力不足である。」としている。
法案の主な内容は、①働く高齢者への年金支給のあり方、②非正規社員の厚生年金への加入促進、③年金をもらい始める年齢の上限引き上げ、の3点とし、①は「厚生年金の支給開始は65歳への引き上げ途上にあり、大きな意義は見いだしにくい」、②は「会社員の夫をもつパート主婦は、新たに求められる保険料負担を避け就業時間を減らす可能性が強い。流通業などの人手不足問題には逆風になる」、③は「基準年齢を70歳に引き上げたうえで、繰り上げ・繰り下げの範囲を65~75歳にするなど、年金財政を好転させる改革を求めたい」としている。
その上で、「現役世代の賃金や消費者物価が下がったときなどに、年金のマイナス改定を可能にするルールを見送った点だ。デフレ基調が続けば、そのツケは将来世代に及ぶ。経済の動向にかかわらず、年金の実質価値を切り下げるルールを法制化すべきである。」「基礎年金が著しく目減りする副作用をどう和らげるか。消費税収などを活用して安定した公費財源を確保するのが、政治の責任であろう。」としているものである。

今回の法改正案の概要は、次の通りである。
https://www.mhlw.go.jp/content/000601826.pdf
この内容自体は、それぞれ意義のあるものであろうと思うが、社説の言うように、本質的な問題点を十分に討議した上のものとは思えない、言わば、小手先の改革案である。
では、本質的な問題点とは何か。それは、社説の言うように、支給開始の「基準年齢を70歳に引き上げ」であり、「基礎年金が著しく目減りする副作用」への配慮である。
社説では、「経済の動向にかかわらず、年金の実質価値を切り下げるルールを法制化」に力点が置かれているように感じられる。そこが、「基礎年金の機能劣化」を最大の問題と考える筆者とのスタンスの違いである。
ともあれ、最大の課題を置き去りにした法案が、「答弁に立つ厚労相は新型コロナウイルス問題で多忙をきわめる。人びとの関心がコロナ危機に向いている間に成立していた、ということがないようにすべきだ。」という点は、まったく同感である。






2020年4月22日水曜日

2020年4月22日 朝日朝刊10面 ●(経済気象台)採用担当の創意工夫で
2020年4月23日 日経夕刊1面 ●インターン採用を一部解禁 就活ルール見直し
2020年4月24日 日経朝刊5面 ●コロナ、採用慣行の改革迫る 「インターン直結」一部解禁へ

最初の記事は、「いまだに収束の気配がない新型コロナウイルスの感染拡大。その影響で、2021年春に卒業予定の学生たちの就職活動が混乱している」という書き出しのものである。
「3月1日に解禁された各企業の説明会やリクナビやマイナビといった就職支援会社主催の合同説明会が、感染拡大防止でほとんど中止され」、「企業はウェブ説明会などを通じて候補者の母集団をつくろうとしているが、現在の状況が続いた場合、今後予定される面接や筆記試験などの選考活動にも影響が出てくることは必至であろう。」としている。
その上で、「学生たちの意識としては、会社説明会のウェブ化は大半が許容しているが、その後の面接などの選考過程は、対面形式を望む学生が多いようである」という調査を紹介し、「この点に関しては、採用する側の企業の担当者も同様であろう」としている。
そして、「来年度以降の採用人数を決めかねている企業も多いのではないだろうか」、「今年の採用活動は例年に比べてかなり長引くことが予想される」と続け、「こういう時期こそ担当者の創意工夫の見せどころではないだろうか」と結んでいる。

次の夕刊の記事は、「政府と経団連は新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、採用活動を柔軟にするよう企業に呼びかける。授業の再開が遅れている高校や大学に配慮し、選考時期の分散を進め、採用の通年化を加速する。大学院生についてインターンシップ(就業体験)からの直接の採用も解禁する方向で、就活ルールを主導する政府が調整を急ぐ。」というものである。
これは、萩生田光一文部科学相と経団連の中西宏明会長が4月23日午後にテレビ会議を開いたことに関連するもので、翌日の記事も、この内容をフォローしたものである。
「コロナ危機は春の新卒一括採用に偏重した日本型の慣行の硬直性を露呈させた」とする一方、「インターンシップからの採用をルールとして認めれば就活時期の分散や通年化に弾みがつく」とし、「経団連と政府で足並みをそろえ、見直しの検討を急ぐ。まず大学院生について早ければ年内に解禁し2021年春入社から適用される見通しだ。院生は専門的な研究を仕事に生かす「ジョブ型雇用」につながる側面もある。」としている。
「両者が合意したのは大きく2点ある。選考や採用の時期の通年化をめざすことと、インターンシップ(就業体験)を柔軟に運用することだ。企業の採用活動と、学生の就職活動が十分に進まない状況に対応する狙いだ。」と報じている。
そして、「中西氏はテレビ会議後、「採用試験プロセスを変えるなど工夫がいる」と述べた。採用や選考の時期の分散を経団連の会員企業に呼びかけていく方針だ。学生の卒業時期が遅れた場合は、企業の入社時期を柔軟に変えることも検討する。」としている。
その上で、「学生優位の売り手市場だった就活の状況は変わってきた。これまでの人手不足が一転し、需要急減や休業などで人手が余る企業が増えている。就職情報会社のディスコ(東京・文京)が3月下旬に実施した企業調査では、約1割が21年卒の採用予定数を「下方修正する見込み」と答えた。企業と学生の双方にとって厳しい状況が続くと見込まれる中、迅速な対応が欠かせない。」と結んでいる。

最初の記事の「担当者の創意工夫の見せどころ」というのは、とても、その程度のレベルの話ではないと思うが、後の2つの記事の「萩生田光一文部科学相と経団連の中西宏明会長の会議」については、これから就活を本格化する4年生にとって気になる情報だろう。学校の9月入学に向けた動きも出てきており、3年生にとっても関心が高いものと思われる。
萩生田光一文部科学相の会議後の記者会見の模様は、次の通りである。
関係する部分は、9分経過後であり、文字ではリンク後の通りである。
https://www.youtube.com/watch?v=WxHmUTwTAbg&nofeather=True
記者)
 昨日の経団連・中西会長とのテレビ会議に関連して伺います。会談の内容と合意事項などがあれば教えていただきたいということと、就活の日程については、政府が示したスケジュールに関して、6月1日から面接など選考開始という日程感を示されていますが、そこら辺の日程が今後変わる可能性があるのかということ、及び一部報道で、インターン採用の解禁という趣旨の記事も出ておりましたが、インターンをめぐっては文科、厚労、経産のですね、3省による合意事項というものもあると私は理解しているんですが、そこについて、何か具体的な検討というのをされているのか確認させてください。
大臣)
 まず、昨日、中西経団連会長らと、また経団連と大学からなる「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」において、3月31日にまとめられた報告書について説明をいただき、あわせて懇談をさせていただきました。その中で、就職活動に関しては、同協議会の議論を踏まえ、将来的な日本の採用・雇用の在り方を見据えた「就職・採用活動日程に関する考え方」の検討が必要との認識を共にしたところですが、加えて、昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、来年春に卒業する予定の学生が不安を抱いていることについて、私からお話しをさせていただきました。ご指摘のとおり、6月1日の日程感は今のところ変更はないやに聞いておりますけれども、しかし、同時にですね、例えば、会社訪問などができないような環境にありますので、そういったものに、例えば、ウェブでの面接ですとか、あるいはその、今までは1回しか採用試験がなかったものも複数回行うなどの様々な配慮をして、今年の学生たちが不利益を被らないようにしてくれということを会長にもお願いをして理解をいただいたところでございます。また、インターンシップの件なんですけれども、産学協議会が掲げた10のアクションプランにおいて、今後、大学と企業において多様で複線的なインターンシップの目的・意義・内容・期間等について、産学及び社会的な共通認識を改めて確立することと承知をしております。この共通認識の検討を踏まえて、文科省としては、関係府省と連携して、いわゆるインターンシップの3省合意の在り方を含め、Society5.0時代に求められる国の役割とインターンシップの推進の方向性を検討していくべきと考えておるところでございます。この合意した当時、平成の始めの頃、6年7年の頃だったと思いますけど、あの頃は、どちらかというと囲い込みのようなインターンシップで、1日ワンデイでもそれでインターンシップを行ったみたいなことで内定につながるような誤解があって、そうではなくて企業側も、一定程度働きぶりを見て、その延長で仕事が向いているとか向いてないとか判断する意味でのインターンシップというのは有効な部分もあると思いますので、既に決定した、ごめんなさい平成9年ですね、9年の基本的な考え方を含めて、今後の新しい採用の在り方も、今後、経済界の人たちとも話合いをしていきたいと思っています。冒頭申し上げた、大学の皆さんとの未来に関する産学協議会って、これ、初めての試みで、どっちかというと、今まで大学側も企業側に、外に向かって要望したり、時には文句を言ったりしてましたし、企業側も大学に対して物足りなさを申し上げてたのが、四つに組んで話合いをして、非常に風通しがよくなったということを報告を受けてますので、こういう機会を続けながら、いい意味での就職活動、学生たちが複線的に様々なチャレンジができて、自分に合う仕事を見つけられるような環境作りというのを文科省としては応援していきたいなと思っています。
2020年4月22日 朝日朝刊6面 ●内定取り消し者へ就活相談 リクルートが専用サービス

「リクルートキャリアは20日、新型コロナウイルスの影響で企業から採用内定を取り消された既卒の就職希望者のために、専用の就活相談サービスを始めた」との記事である。
「同社のホームページから新型コロナ対応の特設サイトを通じて申し込むと、通常は学生だけが対象のサービス「リクナビ就職エージェント」に登録でき、電話相談や求人情報の紹介などのサービスが無料で受けられる。登録期間は5月31日までの予定。内定取り消しを受けた人を積極採用したい企業などとつなげる。通常は紹介成立時に企業から受け取っている手数料も無料にするという。」としている。

「リクナビ就職エージェント」のサイトは、次である。
http://job.rikunabi.com/agent/
通常の学生用の就活サイトであるので、内定取消で、切羽詰まった学生からは、少し利用し辛いと感じるかもしれない。もっとも、このサイトを利用して就活して内定した学生にとっては、リクナビIDをすでに取得済みだろうから、そうでもないのかもしれないが。
内定取消に対して、厚生労働省は、きちんとした情報サイトを開設していないようである。検索して出て来るのは次のサイトであるが、これは前回のリーマン・ショックの際の情報であると思われる。
https://www.mhlw.go.jp/seisaku/26.html
そもそも、このようなサイトを立ち上げる場合、時点を明確にするのは、基本中の基本である。ところが、冒頭に記述がなく、「来年3月新規学校卒業者の採用内定が取り消されるという事案が発生」と、いつのことかもわからない記述から始まっている。これでは、切実な思いで情報を求めている関係者に、失望を与える結果になるであろう。
すでに、今回のコロナ・ショックの経済や社会に及ぼす影響は、前回のリーマン・ショックの比ではないという認識が、専門家のみならず国民各層に共有されてきている。この期に及んでも、学生にとっても社会にとっても重大な事態である内定取消に関する情報が、きちんと参照できるようになっていないのは、役所の怠慢というものではないか。
国民の気持ちに寄り添っていないという点では、怠慢と拙速の差異はあるが、欠陥品だらけで回収に追い込まれたアベノマスクと、共通している。

2020年4月19日日曜日

2020年4月19日 日経朝刊31面 ●氷河期世代 45歳の再挑戦 時代恨まず、前を向いて
2020年4月20日 日経朝刊3面 ●氷河期世代 450人を採用 政府、3年間で

最初の記事は、就職氷河期時代を経験した方が、兵庫県宝塚市役所に採用されたことに関するものである。
「初めて就職活動をしたのは1998年。いわゆる就職氷河期だった。バブル経済が崩壊し、企業は一斉に採用を絞った。街には内定をもらえない学生があふれた。」中で、「大手志向でとりあえず受けた」のはメーカーや金融など約50社。1社から内定が出たものの、自分がそこで働く姿を想像できず、どうしても入社に踏み切れなかった、という。
そして、「翌年、改めて同じくらいの数を受けたが、今度は1社も内定がもらえない。2年をかけて何とかコンビニの正社員に採用され「やっと落ち着いて働ける」と安堵した。
だが、いざ働き始めると、想像もしない生活が待っていた。早朝、深夜問わず携帯電話が鳴り、担当の店舗に駆けつける。ノルマを達成するため、クリスマスケーキやお中元の商品を自分で大量に買うこともあった。」とし、「耐えきれずに退職し、契約社員などの職を転々とした。採用面接の途中で面接官が携帯で誰かと話し始めたことすらあった。結果はもちろん不採用。「まともに話すら聞いてもらえないのか」。就職難の時代を恨んだ。
その後、非正規の公務員職に就いたが、常に「来年もここで働けるのだろうか……」と不安に駆られた。レールに乗り損ねた境遇を恥じ、正社員の座を射止めた高校や大学時代の友人と連絡を取ることもなかった。」とのことである。
そんな中、「これに応募してみたら?」という妹の助言で、「宝塚市の就職氷河期世代対象の採用」(採用予定は3人程度)に応募し、「時代を恨んでも仕方がない。前向きに生きよう」という気持ちになって、「合格」したというものである。
記事は、「初めての就職活動から20年がたった。時間はかかったが「自分の働く姿が、同世代の人が再挑戦するきっかけになるかもしれない」。45歳、折り返し付近で新たな人生が始まった。」として結んでいる。

後の記事は、「政府は2020年度から3年間で、就職氷河期世代から450人以上を中途採用する方針だ。初年度は157人を募集し、11月29日に統一採用試験を実施する。政府は22年度までに国全体で氷河期世代の正規雇用者を30万人増やす目標を掲げており、自治体や企業でも同世代を採用する動きが広がってきている。」というものである。
対象は、「1966年4月2日から86年4月1日までに生まれた人。中央省庁での事務職員や刑務官、入国警備官などの職種で募集する。」とのことである。「氷河期世代はバブル崩壊後の就職難で安定した職に就けなかったり、引きこもりになったりしている人が多い。」のに対し、ようやくにして救済措置が検討されることとなったわけである。
しかし、「新型コロナウイルスの感染拡大で労働市場全体が冷え込めば、氷河期世代の採用拡大も進まなくなる恐れがある。」と記事は結んでいる。

就職氷河期の救済対象者は、上記の通り、「1966年4月2日から86年4月1日までに生まれた人」ということである。その人達が、大学を22歳で卒業した年ということで見ると、1988年から2008年と幅広くなるが、この間には、二つの就職氷河期がある。
一つは、20世紀末のバブル崩壊であるが、1989年12月29日の大納会で、日経平均が終値の最高値38,915円87銭を付けた後に、失われた10年とも20年とも言われる長い経済の低迷期に入った時期である。最初の記事の方が、1988年(あるいは思い違いで1989年かも)に就活を行ったとすると、バブル崩壊の直前ということになる。恐らくは、それまでのバブル景気の中での先輩の就活などを踏まえての「大手志向」だったのだろうが、それが災いして内定1社だったのだろう。ところが、それも蹴ってしまう。翌1989年の就活が非常に厳しくなったのは当然で、山一證券や長期信用銀行といった大手金融機関すら破綻した時期である。
もう一つは、米国で住宅融資に関わるサブ・プライムローン債権の破綻によるリーマン・ショックである。これは2007年に発生したもので、その影響が2008年以降にも続いたわけである。
さて、今回のコロナ・ショックの影響は、どうだろうか。当初は、リーマン・ショックほどではないと言っていた経済評論家もいたが、そんな声は消え失せた。今は、バブル崩壊時ほどではないという声もあるが、経済指標では、過去最低の状況にある。
学生にとっては、振り返って、どの程度の衝撃だったかは、どうでもよいことであろう。喫緊の関心事は、就活がどうなるのか、であろう。ここでも、バブル崩壊後に採用を抑え過ぎて苦労した企業は、その轍を踏まないのではないかとか、自粛が解除されたら、経済活動は急激に活発になるはずで、人手不足になる可能性がある、といった楽観的予想もある。
だが、そうならなかったら、どうするのか。そうなったとしても、時期がずれたら、というような事を、就活を行う学生は、真っ先に考えるべきである。内定が得られた場合には、どんな会社であっても、最後の最後まで手放してはならない。過去の経験からして、現在雇用されている従業員すら雇用不安に怯えている状況の中、新卒採用の優先度が高まるはずはない。
ともかくも内定を確保した上で、今後伸びていく業界を考えるとすれば、第4次産業革命を牽引するIT業界ということになろうが、誰もが同じ事を考えるはずだし、要求される知識や技能のレベルは高い。それでも、どんな業界・企業に入ろうとも、IT知識は必須になるから、昨年度までの学生が経験していないオンライン講義の経験などは、貴重である。結局、講義に身を入れることが、自分を守る近道ということになるのではないか。
2020年4月19日 朝日朝刊23面 ●大学封鎖、逆境の春 学生「学費減額して」/就活ほぼストップ

「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの大学が校内への立ち入りを禁じている。自宅待機を余儀なくされ、就職活動も中断するなど学生たちの日常は一変した。大学側は外出自粛の長期化を見すえ、授業のオンライン化などの対応に追われている。」という記事である。各大学の状況が報じられ、就活にも大きな影響が出てきているとしている。
一方で、「オンライン授業を準備する大学が増えている。4月10日時点の文部科学省の調査によると、全国の大学(短大を含む)の48%が「遠隔授業を実施する」と回答。「検討中」も36%あった。」とし、東京大や法政大、パソコンやポータブルWiFiを貸し出している国際基督教大の例が紹介されている。
これに対し、「文科省も対応を急ぐ。3月下旬、省令で定める授業のルールの弾力化を各大学に通知し、対面授業ができない場合、同時双方向型授業のほか、オンラインでの質疑応答の機会があればリポート提出などによる代用を認めた。卒業に必要な124単位のうち60単位まで、となっているオンライン授業の上限を見直す用意もあるとした。」とのことである。
「ただ、都内の大学教員は教え子の学生について「スマートフォンは必需品でも、パソコンやタブレット端末はほぼ持っていない」。多くの学生がリポート作成などを大学のパソコン室でやっているという。「急ごしらえの対策で対応しきれるのか」」との声も紹介されている。「学生の通信料金負担の軽減枠の拡大を求める声」や「ネット上では学費の一部返還を求める署名活動も始まった」とのことである。

今回のコロナ・ショックで、世界各国に比して、日本が大きく遅れていることが明らかになった点が2つある。一つは、PCR検査で、SURSやMURSの危機に襲われた韓国などに比べると、日本の感染症対策の状況は著しく遅れている。自衛隊の救護活動で二次感染が生じていないことが称賛されているが、それは、細菌戦への備え故であろう。
そして、もう一つがIT活用の遅れである。オンライン教育も惨憺たる状況であるが、企業でのテレワークなども、十分な対応ができていない状況であることが明るみに出た。海外からは、何せ、サイバーセキュリティ担当の桜田義孝元大臣が、「パソコンは使わない」(実際は、「使えない」だろう)と公言しているくらいだから、と冷笑されているのであろう。
だが、とても笑いごとではないのは、大学教員の中には、オンライン講義に対応できていない人は少なくなく、大わらわで、基礎的な操作方法の講習をしているような有様であることである。
大学でも、企業でも、さらには個人でも、対面が大事というような牧歌的というか時代遅れの状況には、もはや戻れない。コロナ・ショックで、IT技術を核とする第4次産業革命は、世界中を席捲している。遅ればせながら、わが日本においてすら、である。