2020年3月23日月曜日

2020年3月23日 日経朝刊5面 ●大卒採用 来春4.2%増 文系11年ぶり減 本社1次集計
2020年3月24日 日経朝刊17面 ●(ビジネス激変 経営者の見方) 企業の新卒採用減も

最初の記事は、「日本経済新聞社が22日まとめた2021年春入社の新卒採用計画調査(1次集計)で、大卒採用計画が20年春実績見込み比4.2%増と11年連続のプラスとなった。文科系は1.4%減と11年ぶりにマイナスに転じた。19年10月の消費増税などの影響もあって非製造業を中心に採用を抑制する動きが目立った。新型コロナウイルスの感染拡大も今後の採用計画への懸念材料となってきた。」という書き出しである。
続けて、「大卒採用計画はリーマン・ショック後に企業の採用意欲が回復した11年度から11年連続でプラスが続いた。プラス幅は前年の7.5%増から鈍化した。製造業は5.2%増、非製造業は3.8%増だった。業種別ではレジャー(14.8%減)、百貨店・スーパー(8.3%減)のほか、空運(28.4%減)や海運(15.4%減)も減少が目立った。一方で電機(7.3%増)や精密機械(5.5%増)が増加した。」としている。
また、「IT(情報技術)人材などを求める動きは依然として堅調で、大卒理工系は11.2%増と前年の10.8%増を上回る。20年春入社で採用計画に対して内定者を確保できなかった未達の比率が9.8%に達し、需給ギャップが拡大しているためと見られる。計画未達はデータの算出を始めた08年以降13年連続となった。」そうである。
一方、「新型コロナの影響で企業業績が悪化し、採用計画を抑制する懸念も高まっている。ディスコの武井房子上席研究員は「小売企業や中国に拠点を構える企業などで採用を抑える動きが出てくる可能性がある」と指摘する。「急激な採用抑制は、社内の組織の年齢構成を維持する上で支障が出るため考えにくい」(浜銀総合研究所の遠藤裕基主任研究員)との声もあった。」と結んでいる。

次の記事は、「新型コロナウイルスの感染拡大で企業の新卒採用活動が揺れている。例年3月から本格化する2021年春入社に向けた企業の採用説明会は大規模イベントの自粛要請で中止が相次ぐ。今後、新卒採用や学生の就職活動はどう変わるのか。就活支援大手ディスコ(東京・文京)の新留正朗社長に聞いたというインタビュー記事である。
まず、新型コロナの企業の新卒採用活動への影響については、「21年春入社の採用活動は不透明になってきた。もともと今年は7月下旬に東京五輪が開幕する予定だったため、選考活動を6月中に終わらせようと考える企業が多かった。ただ、新型コロナで3月に採用説明会を開けない企業が多く、今後の採用スケジュールは後ろにずれるだろう。経済への影響が長引き景気が冷え込むと、企業が採用数を減らす可能性もある」との回答である。
次いで、ウェブ上での採用説明会や面接については、「当社は11年にウェブ説明会のサービスを始めたが、普及には至っていなかった。20年は一気に広がる年になるだろう。ウェブ説明会は地方や海外の学生にとって企業を知る機会創出にもつながる。初期選考などをウェブに置き換えれば、地方や海外の学生にとっても交通費負担が減り、就職チャンスが増える」という見方を示している。
そして、リアルからウェブへの説明会や面接の全面移行については、「ウェブへの全面移行は簡単ではない。学生から人気の高い有名な大手企業はウェブ説明会で学生を集められるが、そうでない企業は集客が難しいだろう。依然としてリアルの採用説明会には利点がある。例えば、合同の採用説明会では、中堅・中小や法人向けビジネスを展開する企業など、学生からの認知度が低い企業は、合同説明会に集まった学生に能動的に働きかけられる」としている。
続けて、ウェブ採用普及に向けた課題については、「企業側にとっては学生が説明をどう受け止めたか捉えにくい。集団面接では誰が発言しているかわかりにくく、評価しにくいという企業の声もあった。一部はウェブに置き換えても、最終面接などでリアルな場で会話をしながら学生を説得したい企業もある」「学生にとっても採用説明会は企業の話を聞くだけでなく、会社全体の雰囲気や社員の表情などから企業を見極めることも大切だ。ウェブでは限界がある。企業にウェブ採用が使われ始め、様々な課題は洗い出される。今後のサービスの質の向上につながるだろう」との見解である。

最初の記事だと、2021年春入社の新卒入社の就活も、これまでとあまり変わらないような印象を受けるかもしれないが、そんな事はあり得ない。この1次集計は、3月4日までの回答をベースにしているが、それ以降の状況も激変している。それを、日経平均株価で見ると、次のようになっている。
https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_eco_market-nikkeistock
すなわち、2月下旬に下落した株価は、3月に入って一段と急落しているのである。また、このアンケートの回答を担当しているのは、人事部などの部局であろうが、基本的な考え方は前例踏襲であろう。「急激な採用抑制は、社内の組織の年齢構成を維持する上で支障が出るため考えにくい」というのは、人事部的には当然の発想であるが、危機に当たっての経営者の判断とは大きな隔たりが生じる。記事で言及しているリーマン・ショックの際には、年齢構成など考える余地もなく、企業は生き残りに必死になった。今回のコロナ・ショックは、リーマン級を超えるものと思われ、とても楽観できる状況にはない。

二つの記事に出て来る就活支援大手ディスコのコメントの要諦は、「21年春入社の採用活動は不透明になってきた」「企業が採用数を減らす可能性もある」という点にある。東京オリンピック・パラリンピックも延期は確実になった。企業が学生の内定を急ぐ必要は、まったくなくなったわけである。採用スケジュールは、夏から秋にかけてにずれ込み、コロナが一段落しなければ、冬場にもかかってくると考えるべきであろう。
学生にとっては、長く辛い就活が続くことになる。当面を考えると、採用試験などの日程が毎年決まっている公務員などに、まず注力した方がよいのではないか。採用数が絞られると、必ず学力テストの比重が高くなる。公務員試験の問題は、その学力を測るバロメーターにもなるから、延期された説明会などで浮いた時間を活用するための格好の準備素材になるであろう。資格試験の勉強に打ち込むのもよい。
とにかく、昨年までの就活ノウハウは、通用しない。これからが長丁場の戦いである。多少の息抜きは必要だろうが、日々、無駄な時間を過ごすことのないようにする必要がある。それはあたかも、大学入試の受験準備に似ている。

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