2020年3月11日水曜日

2020年3月11日 日経朝刊29面 ●就活本番も不透明感 21年卒座談会  企業説明会相次ぎ中止

「3月1日に企業の採用広報が解禁され、2021年春に卒業予定の学生の就職活動が本格的に始まった。今年から採用日程に関する経団連ルールが廃止されて就活スケジュールがより早まるとの見方が強まる一方、新型コロナウイルスの感染拡大によって企業説明会が相次ぎ中止となるなど不透明感もでてきた。就活戦線の模様を主要大学の学生に聞いた。」という記事である。座談会形式で、男女2名づつの学生が参加している。
まず、「新型コロナウイルスの感染拡大によって、就職活動に影響が出ましたか」という質問に対しては、「旅行業界の選考はここまで順調」「上智大では説明会が予定通り開催」「外資系コンサルの選考は1次面接まで進行」「オンラインでの面接となりそう」「合同説明会がほとんど中止」「企業の説明会も多くはウェブ配信に変更」「企業説明会がウェブに移行で時間に余裕」といった状況が紹介されており、「景気の落ち込みで採用が抑制されないか心配」「自分から情報を取りに行かないといけない」といった懸念も出されている。
次に、「感染拡大以前の状況」については、すでに何社かの選考を受けた学生もいるようで、「インターンシップに参加した金融機関から早期選考の案内」「面接を受け、通過後に辞退」「エントリーシート(ES)が通り、グループディスカッション待ち」「インターンに参加した大手IT企業からはウェブテストを受けるよう連絡」「インターン参加企業から実技と面接を受けて通過。最終面接の案内」といった状況が紹介されている。
「具体的な選考内容」については、「業務に関する具体的な課題の解決を考え、優先順位など説明」「「インターン参加者限定」の模擬面接会」いうようなものが報告されている。
そして、政府ルール「3月1日が企業説明会の解禁」については、就活の準備が進んでおらず、参加者の声に驚いたものもあるが、「実際には2月から選考」「正式な内々定の通知は6月だが、実質内々定は4月末」と言われたという状況も報告されている。
次に、「インターン経由の早期選考も多いようですが、就職活動自体はいつごろ始めましたか」という質問に対しては、「公務員から民間へ志望を切り替え」「19年3月に開かれた1学年上の先輩たち向けの合同企業説明会に参加」という報告もあった。なお、学生のインターン回数についての記述では、10社弱、多い人は20社となっている。
さらに、「情報収集に苦戦することも多いのでは」との質問に対しては、「OB・OG訪問で体験談やお薦めの応募先の情報入手」「有価証券報告書の利用」「「くるみんマーク」の取得チェック」などが挙がっている。
続いて、「本格化する選考に備えて準備の進捗」については、「適性検査SPI」の勉強」「ESを早めに書く」「ガクチカ(学生時代に力を入れて頑張ってきたこと)」の内容を詰めたい」などが出てきている。
最後に、「就活はいつ頃終えたい」かについては、「6月までに終えて前期試験に備えたい」「内定が出そろったら決めたい」という回答であった。
なお、「座談会は2月中旬に行い、3月初旬の状況は追加で聞き取りしました」とのことである。

また、記事には、新卒採用に詳しい採用コンサルタントの谷出正直氏からの「就活を進める上での注意点」として、「合同説明会などの中止の続出に対しては業界研究や企業研究、自己分析に努めることが重要」「小規模な説明会やウェブ説明会に参加するほか、大学キャリアセンターの利用推奨」に加えて、「ウェブ説明会などオンライン上での就活が増えると、学生は知名度の高い大手企業にばかり応募しがちだ。大手は競争倍率が高く、学生も意識して志望企業を広げなければ、選考時に失敗する恐れがある。現時点で関心のある企業ばかりに絞らず、幅広く検討することが重要だ」との言も掲載されている。

まず、認識しておく必要があるのは、新型コロナショックより前と後では、就活をめぐる状況が、まるで違ってきているということである。記事では、そのため、2月中旬の座談会の後の3月初旬に追加の聞き取りをしているわけであるが、それ以降も、状況は厳しさを増している。
例えば、座談会の中に、「旅行業界の選考はここまで順調に進んでいます」「夏と冬にインターンに参加した旅行会社では実技と面接を受けて通過。最終面接の案内が来ました」とあるが、旅行業界は、非常に深刻な打撃を受けている。中小企業の中からは、倒産するものも少なからず出て来るであろう。他の業界でも、打撃を受けている所は多い。それほどに厳しい状況であることの認識が、まず必要である。
次に、「OB・OG訪問」や先輩からの体験談は、まず役に立たないものと思った方がよい。就活をめぐる状況は激変しているのであり、何社からも内定がもらえたという状況は、一握りの有名大学の学生の一部に限られると思った方がよい。今、参考にすべきは、むしろ、過去の就職氷河期における就活状況である。是非、ネットで検索してみることをお勧めするが、例えば、次のようなものがある。
https://togetter.com/li/1304438
https://note.com/carlos_soichi/n/n1b2b135154de
https://sie-kimagure.hateblo.jp/entry/2018/12/12/190000
最初のリンクの記事は、「今の大学生に2013年頃まで15年ほど断続的に続いた氷河期がどんな感じだったのかを説明すると、早慶大生がビックカメラの店員になるため面接を5回も突破する必要があった。」としている。そんな馬鹿な、と思うかもしれないが、それくらいが当時の状況だったのである。
なお、このような事態に対するハウ・ツーとしては、次が参考になるかと思う。
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishiwatarireiji/20200229-00165305/

ただし、状況は厳しくなるのは確実だと思うが、絶望的になることはない。大事なのは、状況を認識して、自分なりに対応の準備をすることである。「悲観的に準備して、楽観的に行動する」ことがビジネスでの要諦とされるが、これは就活も含めた人生全般に当てはまる。「人事を尽くして天命を待つ」ことも同じ考え方である。
なお、万一にも就活がうまくいかなくても、それで人生を諦めてはならない。長い人生、転機はいくらでもある。新卒一括採用の慣行が瓦解するのは、そんなに遠い将来ではないだろう。今でもそうだが、大手企業でも、AIなど新規分野では中途採用の人材を求めており、そういう人たちの給与が、新卒で入社して社内キャリアを積んだ人よりも圧倒的に高い事例も珍しくないのである。就活の失敗は、失恋に似ているかもしれない。絶望的になっても、また新たな恋のチャンスはある。「日は、また昇る」のである。
学生の本分は勉学であるから、就活で影響を受けることはあるだろうが、きちんと勉学に励むのでなければ、大学にいる意味はないし、就職先の企業でも、勉学を怠けた学生は、すぐにそれと分かるだろう。要は、就活に振り回されずに、自分らしく生きることを忘れないことである。仕事でも何でもそうだが、「一生懸命やったものだけが残って、人生を支える」のである。

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