2020年3月1日日曜日

2020年3月1日 日経朝刊2面 ●(社説)新卒一括採用の見直しは時代の要請だ

「新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大学生の就職活動にも及んできた。2021年春の卒業予定者向けに企業や就職情報会社が計画していた3月の採用説明会が相次ぎ中止になっている。就活があおりを受けるのは、特定の時期に集中的に選考する「新卒一括」採用の慣行のせいでもある。」とする社説である。
「この採用方式には学生の能力の見極めが甘くなる欠点もある。」とし、「企業はネット活用で情報提供するなど学生の就活にできるだけ支障が出ないようにしてほしい。併せてこの機に求めたいのが、新卒一括採用の抜本的な見直しだ。」とする。
「日本企業に定着しているこの慣行の基盤には、潜在的な能力を持った若者を時間をかけて育てるという考え方がある。一括方式は採用コストを抑えて大勢の学生を効率的に確保する手段だ。」が、「能力重視の採用を徹底するなら一括方式はそぐわない。」とする。
「方向性の一つは、職務を明確にし、求められる技能や知識のレベルも示す「ジョブ型採用」だ。」とし、「新卒一括採用で企業が伸びていたときとは経営環境が様変わりした。その認識があるなら、採用改革にちゅうちょはないはずだ。」と結んでいる。

この欧米での「ジョブ型雇用」の実体については、日経夕刊の連載記事の著者でもある海老原嗣生氏が、次のように子細に説明している。
https://next.rikunabi.com/journal/20180302_t21_iq/
要点は、日本型雇用では職務無限定なので大量の新卒一括採用も可能だが、欧米流の「ジョブ型」というポスト採用では、勤務の変更には本人の同意が必要であり、人事管理はかなり難しいということである。ところが、経団連も上記の社説も、このポスト採用の実体を知らないか、故意に無視しているきらいがある。「ジョブ型採用」で日本型のように自由に異動させれれば楽だが、そうは問屋が卸さないのである。
これでは、採用だけを変えても、うまく行くわけがない。過去にも、採用方式を変えようとした企業はあったが、結局、新卒一括採用類似に戻ってきている。人事管理全般を見直さずに、採用だけいじっても。円滑に機能するはずはないのである。同じ事は、「成果主義」についても言える。
そんな中、好不況の波のたびに採用数が大きく変動する新卒採用で、社内教育によって人材を育成することは至難になってきている。不況になって就職氷河期が到来すると、下働きをしてくれるはずの後輩が入ってこない。この状態が続くと、ずっと下っ端で下働きということになる。一方、好況になって入社した方は、教えを乞う先輩がいないことに悩まされることになる。すなわち、新卒一括採用による社内教育は、前後の社員が継続的に一定数入社することによって支えられているわけである。
新型コロナショックは、リーマンショックのように、新卒採用を直撃するであろう。今年春に入社予定の学生は、まさか内定取消とまではいかないだろう(過去には例もあり、社会問題化した)が、後輩が来なくて下働きの期間が長くなる可能性は十分ある。一方、来年春の入社に向けての就活は、厳しくなることは避けられないであろう。
今、学生が行うべきことは、就活をしながらも、できるだけ勉学にいそしむことであろう。できれば、対外的に通用する資格の勉強などもした方がよい。資格取得は、就職氷河期の学生も必死に取り組んだところである。就活が終われば学生生活をエンジョイし、後は卒業に必要な単位をそろえるだけというような生き方は、そもそも学生の本分にもとるものであり、またも押し寄せる就職厳寒期には、そんなお気楽な気分で対応できるものではない。会社に入ってからも同じだが、学生の間においても、「一生懸命にやった事だけが残って、貴方を支える」のである。

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