2020年2月23日日曜日

2020年2月23日 日経朝刊1面 投信運用 成功時のみ報酬 農林中金系、個人向けで国内初
2020年2月23日 日経朝刊3面 (きょうのことば)信託報酬 保有者負担の固定管理費
2020年2月26日 日経朝刊7面 野村、信託報酬0%に つみたてNISA向け

最初の記事は、「投資信託の販売競争が激しくなるなか、手数料の改革が加速している。農林中央金庫系の運用会社は4月、投資信託の時価を示す基準価格が最高値を更新した時だけ運用報酬を取る商品を発売する。運用成功時にしか報酬を取らないのは国内の一般個人向け株式投信で初めてだ。」というものである。
「通常は投信を購入すると、残高に応じて一定比率を信託報酬(総合2面きょうのことば)として運用会社、販売会社、事務を管理する信託銀行に支払う。農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)が4月に発売する商品は、この運用会社部分をゼロにする。」とのことで、「この投信でも販売会社と信託銀に支払う信託報酬は必要だが、比率は合計で0.3%だ。一般的にアクティブ型投信の信託報酬は計1.5~2.0%のものが多い。」としている。

次の記事は、上記の「きょうのことば」として、信託報酬を説明したもので、「投信を運用する運用会社、販売会社、ファンドの事務を管理する信託銀行のそれぞれの取り分が合算」されており、「国内の公募株式投信の平均では運用会社と販売会社の比率が、それぞれ5割弱を占める。運用会社は成績結果にかかわらず、報酬を固定で受け取ってきた。」としている。

そして、最後の記事は、「野村証券は25日、国内で初めて信託報酬を0%とする投資信託を設定すると発表した。海外株式に投資する投信で、積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)向けの商品。当初10年間、個人投資家はまったく費用がかからずに投信に投資できるようになる。」というものである。この商品では、「野村信託銀行が販売・運用・管理を請け負い、各社が手数料をゼロにする。」としている。

日本での投信の手数料は高いとされてきたが、ネット販売などの拡大により、手数料競争が激化している。背景には、記事のNISAとイデコへの販売拡張の狙いがある。キャッシュレス還元での各社の競争のようなもので、段々と消耗戦の様相を呈してきている。
このような手数料低下については、評価できる点と、首を傾げる点とがある。評価できる点は、従来から高過ぎると言われていた水準が是正され、適正水準に向かう点である。販売手数料は、以前の対面販売からネット販売に移行してきており、引き下げは当然である。ゼロとするのにも、それなりの合理性があるであろう。
また、運用報酬の成果連動型は、当然あり得るものである。成果が上がらなければゼロで、成果が上がった時には多くとるという仕組みは、投資家と運用者とがリスクを共有する仕組みであり、市場経済の中では合理的である。海外では、そのような仕組みも多いようであるから、日本でも、もっと普及すべきであろう。
首を傾げる点は、信託銀行が管理する分の信託報酬である。投信は、販売会社、運用指図者、信託銀行が、それぞれ役割を分担している。その中での信託銀行の役割は、投資資金を管理することで、運用責任は、運用指図者が負っている。販売会社の分の手数料低減、運用指図者の分の成果報酬には、理があるが、信託銀行の資産管理手数料には、水準見直しの余地はあるかもしれないが、ゼロにするいわれはない。記事での野村証券の投信は、「野村信託銀行が販売・運用・管理」としているが、このように3つの機能を一体化させると、利益相反の懸念も出て来る。販売、運用、管理は、それぞれの専門性をベースとすべきものであり、一体化すると効率も低下することになり得る。
このように、投信の手数料競争が激化しているのには、NISAもあるが、確定拠出年金の個人型イデコで、公務員を中心とした加入者が急増していることが背景にあると見られる。一般的には、競争激化によって需給がバランスした適正水準に向かうというのが市場経済の考え方であるが、その前提として独占は排除する必要があり、販売・運用・管理の一体化も、その観点からは問題であろう。日本の投信のコスト関連については、まだまだ見直すべき点が多いように思われる。

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