2020年2月25日火曜日

2020年2月25日 日経夕刊2面 ●(就活のリアル) 志望動機、部署名まで明確に ネットの「模範解答」には注意

就活実務編での、ハナマルキャリア総合研究所の上田晶美代表による説明である。
「志望動機をどう書いていいかわかりません」。3月1日の就活情報の解禁日が近づき、学生からは具体的な相談が増えてきた、というものである。
記事では、「エントリーシート」での「志望動機が学生にとって一番の悩みの種」とし、「ネット上にはたくさんの模範解答」があるが、疑問があるとし、「どんな部署でなんの仕事をしたいのか、それを調べて、ズバッと書こう。」というものである。

言っていることは、正論ぽく見えるが、学生にとっては、むしろ不安が募るのではないか。就活では、業界や企業の研究をする必要があるとして、そのための本も多く出ているが、企業活動についての実際の知識がない学生にとっては、その中の記述を適当に抜き出すのが精一杯で、ネットの情報に頼るのもやむを得ないといったところだろう。
大事なのは、志望動機の前に、自分が何をやりたいのかを、よく考えてみることだろう。と言っても、それが分かれば苦労はない、ということになるのだろうが、やりたい仕事がはっきりしなければ、ちゃんとした志望動機など、書けるはずがない。
記事では、模範解答について、「これで本当に受かったのか」としているが、私から見れば、やりたい仕事の明確でない学生の志望動機など、その程度のもので、内容については企業もさほどに重きを置いていないのだろうと思える。
そもそも、大手企業なら大量に届く「エントリーシート」の内容になど、採用担当者が個別に時間をかけて吟味しているとは思えない。中には、AI利用のように、いくつかのキーワードが入っているかどうかで選別している企業もあるだろう。
大事なのは、「エントリーシート」がパスするかどうかではなく、就活の中で、自分のやってみたい仕事を見つけ、その仕事を行う上で魅力のある企業を選択することであろう。と言っても、「自分のやってみたい仕事」を見つけるのは、簡単ではない。このことは、就活全般を通じてのテーマであり、社会に出てからも、ずっと考え続けていかなければならないテーマと言えよう。
また、やりたい仕事が決まっても、それを行える企業に採用してもらえるとは限らない。ここが大きなジレンマで、その中で、やりたい仕事を代えたり捨てたりして、とにもかくにも内定を取りたいと焦る状況に陥っていく学生も少なくないだろう。特に、友人たちが次々に内定を取っているようなら、その焦りは増幅することになる。そうなると、自分では意識しなくても、目は血走り、表情は明るさを失って、ますます内定には遠くなる。これが、就活に失敗する学生の典型的なパターンだろうと思われる。
まず、考えて欲しいのは、企業の選択は、これまでの学校の選択のような、偏差値とかで決まるものではないということである。本来は学校の選択でもそうなのだが、有名な企業への就職が、必ずしも充実した職業生活につながるわけではない。この点で、大手企業に内定した学生を羨むといったレベルなら、そもそも真剣な就職活動とは言えない。
もちろん、一般的には、大手企業の方が、中小企業よりも給与も高く待遇も恵まれている。そうした企業への就職を最高の結果と考えるのなら、それも一つの価値観であるが、ありていに言えば、そういう企業には有名大学の学生も大挙して押し寄せるので、競争率も高く、入社後に配属される部署にも、大学名での格差があり得るのが実情である。
充実した職業生活とは何か。私は、自分に向いた、やり甲斐のある仕事に出会うことであると、自分自身の経験にも照らして思う。そのためには、まず、自分のやりたい仕事を、よく考えなければならない。もちろん、学生のレベルの経験や知識で、そんな仕事は簡単には見つけられないであろう。私の場合でも、天職に出会えたのは、会社に入ってから大分経ってからである。しかし、考え続ける努力の中にこそ、光明がでてくる。
話を、「エントリーシート」に戻すと、私は、模範解答に準拠して何ら問題はないと思う。そもそも、学生は文章を書く訓練を十分にしていない。記事では、「ある証券会社に対する合格者の解答」について、「「私は金融業界に関心を持っています。中でも証券業界に関心があるのはこういう理由で、その中で御社を受けるのはこういう理由です」と書かれている。このように3段階に分けて書く意図は何なのだろうか。」としているが、そのように定式化した方が、書きやすいだろうし、問題はない。
記事では、上記の解答は、「その会社が第一志望ではない、といっているようなものだ」としているが、「エントリーシート」の段階で、第一志望を絞り込んでいるわけがないことは、採用担当者にも分かり切っていることである。
アドバイスをするとすれば、模範解答に準拠して構わないが、味付けとして、その企業に特有な事を少し加えた方がよい、ということである。その内容は、その企業のホームページや、その企業名で検索した結果から抜き出せばよい。そもそも、その企業のホームページすら見ないで「エントリーシート」を出すようなら、落ちて当然なのだから。

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