2020年2月20日木曜日

2020年2月20日 朝日朝刊10面 (経済気象台)年功制の限界と企業の今後

「日本企業は長年、長期雇用を前提に若い時の賃金を低く抑え、年齢とともに賃金が上昇する仕組みをとってきた。ベースアップや定期昇給といった春闘とは切り離せない仕組みは、年功制を代表するものだが、若年層を中心に拒否感が強い。」とする論説である。
「優秀な人材は年齢に関係なく成果に比例した処遇を求め、外資系やベンチャーに流れる傾向にある。」のに対し、「AI(人工知能)分野の技術者や国際的に活躍できる経営幹部候補を対象に、初年度から一般的な初任給の何倍もの処遇を提示する事例が出てきた。」としている。
そして、「個人的には「終身雇用制」には賛成だが、成果に比例した処遇とセットが条件だ。組織や個人の成果を公正に評価する仕組みが不可欠である。」とし、「今後10年間の日本企業の変化を興味深く見守りたい。」と結んでいる。

「成果に比例した処遇とセット」で、論者が賛成する「終身雇用制」が成り立つものなのであろうか。そもそも、この「終身雇用制」のイメージが分からない。本人が希望する限る雇用を継続するというのでなければ、定年までの雇用を保証するということなのだろうか。しかし、そのような仕組みは、年齢による差別でもあり、「成果に比例した処遇」と両立するようには思えない。
また、「組織や個人の成果を公正に評価する仕組み」が、年功序列に慣れ親しんできた連中が経営者や管理者を占める会社の中で、確立できるのかどうかも疑わしい。そもそも、そんな仕組みがあるのだろうか。実力主義とされる米国でも、いや米国の方が、上司の決定や評価が絶対的であることは、トランプ大統領が、簡単に政府高官などを更迭している状況を考えれば、推察できるであろう。
難しいのは、保護・育成と、専門性発揮とのバランスである。日本の新卒一括採用は、「保護・育成」面では、評価できる点があると思う。しかし、そうした採用方式のみで、変化の激しい状況下で専門家が育っていくとは思えない。育成によって専門家に育つ人もいるであろうが、やはり即戦力として、外部から採用することが必要であろう。そうだとすると、「年功序列」も「終身雇用」も、維持できるはずはない。
例えば、育成社員は10年の任期制、即戦力社員は5年の任期制という契約にして、新陳代謝を図っていかなければ、ドラスチックな変化には対応できないのではないか。退社もネガティブに考えるべきではない。新しい活躍の場への巣立ちとしては、「卒業」という言葉がふさわしいだろう。

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