2020年3月19日木曜日

2020年3月19日 日経朝刊17面 ●新型コロナで内定取り消し 企業、救済に名乗り
2020年3月20日 朝日朝刊9面 内定取り消し21人 半数は宿泊・飲食業 新型コロナ

最初の日経の記事は、 「新型コロナウイルスの感染拡大が企業の採用にも影響を及ぼし始めている。中小企業などで2020年4月に入社予定の学生の内定を取り消す動きが出ており、こうした学生を救おうと採用に乗り出す動きがある。学生優位の売り手市場といわれるなか、新入社員も新型コロナに翻弄される。」というものである。
記事では、救済に名乗りをあげた企業として、眼鏡専門店のオンデーズ(東京・品川)、伊藤忠商事子会社で携帯電話の販売代理店大手のコネクシオ、家電量販店のノジマ、「カラオケパセラ」などを展開するニュートン(東京・新宿)の例が紹介され、就職情報大手のディスコの武井房子上席研究員の「業績に影響が出そうな旅行業界や中国に拠点のある会社で内定取り消しが発生する可能性がある」とのコメントが掲載されている。
次いで、「新型コロナの影響で企業の経営が厳しい場合でも一方的な内定取り消しは難しい」として、労働や雇用の法律に詳しい高仲幸雄弁護士の「安易な内定取り消しは裁判で無効とされるリスクがある」「企業は内定者に一定の金銭を支払って内定の解約で合意を得るなど他の策も検討すべきだ」とのコメントを掲載している。
最後は、「内定取り消しの事例は08年のリーマン・ショック後や11年の東日本大震災後にもあり社会問題になった。」と結んでいる。
関連で、「厚生労働省は18日、新型コロナウイルス感染症の拡大による今春就職予定の学生らへの採用内定取り消しが17日時点で12社20人に達したと明らかにした。内訳は高校生が5社12人、大学生や専門学校生などが7社8人だった。いずれも新型コロナによる業績不振が原因で、宿泊業や飲食業が4社10人となった。」ことも報じられており、「政府は13日に経団連や日本商工会議所などに最大限の経営努力で内定取り消しを回避するように要請している。」ことにも触れられている。

次の朝日の記事は、基本的に同様の内容であるが、「加藤勝信厚生労働相は19日の閣議後会見で、新型コロナウイルス感染拡大の影響による企業の採用内定取り消しが、18日時点で13社計21人にのぼることを明らかにした。厚労省は企業向けの助成金を活用するなどして、企業に内定を取り消さないよう改めて呼びかけている。」と報じている。
時点の違いのためか、日経記事より1人多いが、「21人の内訳は、3月に卒業する高校生13人、大学生ら8人。業界別では、観光客の減少で打撃を受けている「宿泊業・飲食サービス業」が10人で最も多いという。13日時点で同省が確認した内定取り消しは高校生の1人だった。各地のハローワークには企業から内定取り消しに関する相談が寄せられているといい、今後さらに増える可能性がある。」としている。また、「内定取り消しなどを防ぐため、厚労省は雇用を維持した企業で一定の要件を満たした場合に支給する「雇用調整助成金」の要件を新型コロナウイルス対策の特例として緩和しており、この活用を呼びかけている。」とのことである。
関連で、日経記事と同様に、「感染拡大の影響などで内定を取り消された学生について、企業が積極的に採用をめざす動きが出ている。主に飲食店やサービス業といった人手不足が深刻な業界で、この機会に人材を確保するねらいがある。」ことも報じている。
例としては、牛丼チェーンの松屋フーズ、カレー店のチェーンを展開するゴーゴーカレーグループ、うどん店を展開するグルメ杵屋(大阪市)やとんかつ店の平田牧場(山形県酒田市)、総合スーパーのユニー(愛知県稲沢市)、食品スーパーのベルク(埼玉県鶴ケ島市)、眼鏡専門店を運営するビジョンメガネ(大阪市)を挙げている。

内定取消が、いよいよ広がってきているが、一方で、救済に臨む企業も出てきたという記事である。もちろん、そうした企業も、「善意」だけでそうするわけではない。事態が落ち着いたら人手不足が再燃すると考えているのであろう。来月4月入社が取り消された学生にとっては、藁にも縋る思いであろうし、とにかくチャレンジする方がよい。
ただし、来年春入社の就活生にとっては、注意すべき点がある。普通に考えれば、このように手を差し伸べる企業は経営状況が悪くないように思えるが、一点だけ、必ずチェックしておかなければならない点がある。それは、中途退職率である。大量に採用し、大量に退職しているという連鎖になっている場合、職場環境に問題がある場合が多い。
しかし、残念ながら、この中途退職率は、企業の開示義務情報とはなっていない。そのため、実情を把握することは困難である。一つの方法は、ネット上の口コミをチェックすることである。当てにならないものや、悪意によるものもあるので、過度に信用するのは危険だが、一応の企業風土を感じ取ることはできよう。企業側が真実でないと言うのなら、そもそも中途退職率を公表すべきなのだが、勝手に出されている情報も信用できない。
より客観的なデータとしては、有価証券報告書や会社四季報での従業員数と平均年齢が参考になり得る。採用が大量で退職が少ないのなら、従業員数と平均年齢は、基本的には増加しているはずである。もっとも、定年退職者が多い場合には、そうならないので、過去何年かのデータを並べてみる必要がある。
ともあれ、就活では、最低限、志望企業のHPの熟読に加え、有価証券報告書や会社四季報に何度も目を通し、業界他社の状況とも比較するなどの分析努力が不可欠であろう。

なお、上記記事にかかる厚生労働省の関連資料は、次の通りである。
<上記が3月13日の加藤厚労大臣の記者会見で、内定取消(この時点では1名)関連は、以下の通り。記事の19日の記者会見の概要は、まだ掲載されていない。>
記者:今回の感染症拡大の影響で、就職が決まっていた学生さんの内定の取り消しですとか、入社時期の延期といった事態が起きています。それに対しての受け止めと、厚労省として何か企業に要請していくとか、何らかの対応はお考えでしょうか。
大臣:一つは、内定の取り消しがあったというのは確か国会でも申し上げたと思いますが、まだ1件と承知をしております。内定を取り消しする場合には届け出をすることになっていますので。また、そもそも内定取り消しというのはいわば労働契約が成立したと認められる場合については、まさに客観的な合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない取り消しは無効と、これは通常の解雇と一緒でありますから、企業の皆さん方には採用内定の取り消し防止をするため、最大限の経営努力を行うようお願いをさせていただいておりまして、これらについては、経済団体等に対して、今回の一連の雇用調整助成金の特別措置等をそれぞれ周知する際に、重ねてそうしたお願いもしております。また、採用内定の取り消しを受けられた方については、ハローワーク等において学校とも連携しながら新たな就職先の確保に取り組むなど、丁寧に就職支援を行っていきたいと思っております。引き続き、そういった届け出の状況等々に注視をしていきたいと思います。
<上記は、採用内定取消防止に関する企業側への要請と学生側への注意喚起である。>

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