2020年2月22日土曜日

2020年2月22日 日経朝刊1面 企業の厚生年金、加入逃れ対策強化 雇用保険の情報活用

「厚生労働省と日本年金機構は、厚生年金の保険料支払いを逃れる企業への取り締まりを強化する。2020年度から4年間を集中対策期間として雇用保険の加入者情報を新たに使って、対象の可能性がある約34万件の事業所に適用するよう指導していく。働き手の老後の年金を増やすとともに、加入者の増加で制度の基盤強化につなげる。」との記事である。
「まず加入対象となる従業員らが5人以上いるか家族以外の従業員を雇う法人事業所で未加入を解消する。」としており、「年金機構はこれまで国税庁から源泉徴収に関する情報提供を受け、厚生年金の適用を増やしてきた。」が、「新たに雇用保険の加入者情報を使うことで就業状況を把握し加入義務のある企業をあぶり出す。」とのことである。
「現在、厚生年金の保険料逃れをしている企業は問い合わせに応じないなど悪質の例が少なくない。年金機構はこうした接触が難しい企業への立ち入り検査に向けて専門組織を立ち上げる。」とのことである。

記事の内容は、当たり前のことで、「加入逃れ対策強化」といっても、この程度のことに過ぎないのか、と思う。同じ厚生労働省の所管である「雇用保険の加入者情報」を、これまで有効活用してこなかったことに呆れる。これでは、厚生省と労働省とを、一体化した意味はないではないか。「問い合わせに応じないなど悪質の例」に対する対応も、手緩いのではないか。そこには、年金保険料の納付をお願いする、というような過去の姿勢が垣間見える。
税も保険料も、国民にとっては同列のものであり、国家を維持する上で欠かせないものである。この観点から、税と保険料の徴収を一元化している国も少なくない。次の論文「国税と社会保険料の徴収一元化の理想と現実」には作成日付がないが、参照の新聞記事からして15年ほど前に書かれたものと思われるが、税に関わる立場から、当時の税務大学校研究部の松田直樹教授によるものである。
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/47/matsuda_01/ronsou.pdf
この論文の参照によれば、米国、カナダ、イギリス、アイルランド、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ハンガリー 、アイスランド、アイルランド、オランダ、ノルウェー、アルベ ニア、アルゼンチン、ブルガリア、クロアチア、エ ストニア、ラトビア、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバニアと、非常に多くの国で徴収一元化が行われているそうである。
論文では、徴収一元化が必ずしも万能の解決策というわけではないとしているが、税と社会保険料の今日的位置づけからしても、事務の効率化の観点からしても、徴収一元化をもっと真剣に考える必要があるのではないかと思われる。

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