2020年2月17日月曜日

2020年2月17日 朝日朝刊24面 (職場のホ・ン・ネ)「正規」こそ正しい?
2020年2月17日 日経朝刊5面 (経営の視点)「オブジェ社員」を生むな シニア活性化、企業が左右

最初の記事は、「派遣社員として働いていますが、「就職氷河期世代の非正規雇用」と呼ばれることに違和感があります。まるで「正規」こそが正しいと言われているように感じます。」という40代女性の声である。「政府には「正規」「非正規」を自由に行き来できる社会をめざしてほしいです。」としている。

後の記事は、多摩大学大学院の人事論担当の徳岡晃一郎教授による、役職定年・定年延長のシニア社員についての周囲の評価をヒアリング調査を紹介したものであるが、「明らかに時間内だけ事務所にいれば、たいして頑張らなくても給料がもらえるというオーラを放つ人もいる」「アドバイザー的な役割しかになわず、まるでオブジェのよう」などと否定的な声が大半としている。
記事では、「政府は企業に70歳までの就業機会確保の努力義務を課す「高年齢者雇用安定法」の改正案をまとめたが、これは問題の解決ではなく、むしろ悪化させるだろう。」としている。
その背景には、「日本企業の人材投資は新入社員と管理職に集中」という企業側の側面と、「社外での学習や自己啓発に取り組む会社員の比率は日本は他国に比べて非常に低い」という働く側の意識改革の側面とがあるとしている。

「非正規」という用語は、「non-regular」の訳語であるが、日本では、「abnormal」すなわち異常に近いニュアンスを持たれているように感じられる。政府や学者も、「非正規」という用語を使わないようにしたらどうかと模索したことがあるが、うまく行っていない。もっと言えば、日本では、「正社員」が「正規」であり、中途入社者すら色眼鏡で見る傾向が、まだまだ続いているように感じられる。

「オブジェ社員」というのは、以前の朝日の記事では、「妖精さん」と呼ばれていた。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/01/20200119AA07.html
こちらも、日本の労働慣行から生み出されたものである。すなわち、新卒一括で採用した社員を、当分の間は能力でなく年功的に処遇し、徐々に管理者や幹部候補生を選別し、対象外となった者は飼い殺しにするという「日本型雇用」のシステムによるものである。それでも離職しないのは、年功賃金と定年までの雇用保障があるからで、対象外となれば頑張ったところで見返りはしれているから、そのうち「オブジェ社員」や「妖精さん」になるという道筋である。そして、こういう業績や貢献に見合わない報酬を享受できるのは、「(元)正社員」に限られるという構造なのである。
これで、会社が活性化したら、それこそ不思議である。それでも、日本企業がこのシステムから脱却できないのは、経営幹部がその中で育ってきたからであり、また、業績や貢献あるいは能力をあからさまにする報酬体系への切り替えは、このぬるま湯に慣れた正社員や、彼らがベースとなって構成している企業内労働組合の反発を招くからであろう。
脱却のカギは、公正な評価と処遇にあるわけだが、ぬるま湯システムに慣れた者が管理職になっているのだから、容易ではない。そのうち土台から腐って倒れることになるのだろうが、それが日本での「大企業病」の実態なのであろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿