2020年2月15日土曜日

2020年2月15日 朝日朝刊33面 ●(ニュースQ3)「内定辞退させて頂きたく」 指南本、完売続出

「就職活動で学生が有利な売り手市場が続く中、企業に入社を断る「内定辞退セット」が人気になっている。手紙の書き方や電話のかけ方を指南するものだが、取り扱う書店や文具店では売り切れが続出。購入者からは「断れてほっとした」という声も聞かれる。」という記事である。
「春の入社が迫るこの時期でも、内定を断っていない学生もおり、売れ行きにつながっているという。」が、「人生で断る機会がほとんどなかったから、どうしたらいいのかわからなかった」という内定式の直前になって泣きながら社長に電話した男子学生の例も紹介されている。
記事では、「お断り」の悩みは大学生にとどまらないとして、本人の代わりに会社を辞めたいと伝える「退職代行サービス」にも言及している。「断れないのは、思いやりのはき違え」「ビジネスは恋愛にも通じます」という銀座の伊藤由美ママの声も紹介されている。「大事なのはいい子ぶらないことだという。」とし、「相手を気遣うことも大事ですが、大切にすべきは自分です」と締めくくっている。

この「内定辞退セット」については、当ブログでも、すでに取り上げたところである。
https://kubonenkin.blogspot.com/2020/01/20200121NY02.html
そんなに追記することもないのだが、この記事の最後の「相手を気遣うことも大事ですが、大切にすべきは自分です」は、間違ったコメントとしか思えない。
「大切にすべきは自分」だからこそ、何もしないのではないか。相手に嫌な顔をされたりして、自分の感情が揺らぐのが嫌だから、何の行動も起こさないのであろう。「相手を気遣う」などとは、まったく無縁である。相手に迷惑がかかることは少し想像すれば分かるはずだが、そんなことはどうでもよいということなのである。
もっとも、内定辞退や退職申出ができないのは、企業側にも問題があると思える。人手不足の中、内定や退職のつなぎとめに過剰に対応している場合も、あるのではないか。
この問題の当事者に考えて欲しいのは、「何もしないことも意思表示」だということである。それは、若者世代での「既読スルー」にも通じるし、シカトによるイジメと同列のものでもある。人生は、決断の連続である。その決断には、能動的な意思表示も、消極的な現状追認も含まれる。その中で、回避的な決定遅延は、結局、消極的な現状追認が続くものであるということである。その結果の責任は、本人が負わざるを得ない。本人が何もしていないつもりでも、実際には何かをしているのが、人間社会というものなのである。

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