2020年2月29日土曜日

2020年2月29日 日経朝刊17面 (大機小機)新型コロナ、リーマン級だが一過性

「大機小機」の方は、「新型コロナウイルスによる感染症の拡大は日本経済に大きな影を投げかけている(以下これをコロナショックと呼ぶ)。今後、2020年1~3月期の経済の実態が明らかになるにつれて、このコロナショックの深刻な全体像が見えてくるはずだ。」との論説である。
「ショックが日本経済に影響を及ぼす主なルートは次の3つ」として、①サービス輸出(外国人観光客の消費)の減少、②財の輸出の減少、③不要不急の外出が控えられることによる経済活動の萎縮、をあげている。
そして、「コロナショックの衝撃はリーマン・ショック並みとなりそう」だが、「リーマン・ショック級の影響が出るが一過性」というのが、今回のコロナショックの特徴だとしている。
その上で、「今こそ本物の緊急経済対策の出番」とし、「信用保証などで短期的な売り上げの落ち込みが雇用や経営に影響しないように配慮すべきだろう。」と結んでいる。

コロナショックの影響は、広範にわたっており、「リーマン・ショック」になぞらえる議論が多くなっているが、果して、「リーマン・ショック並み」の規模で、「一過性」ということに収まるのだろうか。そもそも、ここでいう「一過性」の意味が、よく分からない。例えば、「リーマン・ショック」は一過性だったとしているのだろうか。東日本大震災ですら、また発生する可能性が少ないということなら、「一過性」になり得る。
影響が長く広範に続くかどうかという点でいうと、コロナショックは、リーマン・ショックの比ではないのではないか。リーマン・ショックは、突き詰めればカネの問題であり、世界中でカネ不足が起きたことによって、金融機関や企業の活動に制約が生じて、経済活動の停滞をもたらした。コロナショックでも世界的な株価の暴落によって、その様相を呈しているが、さらに深刻だろうと思うのは、ヒトの活動にも大きな制約や影響を及ぼしていることである。上記③の外出抑制による消費レベルにとどまらず、生産現場などの供給レベルにも、大きな影響を及ぼしている。
このコロナショックの震源地が中国であったことは、世界経済を牽引してきたとされる中国の社会・経済体制の脆弱性を浮き彫りにしたといえるであろう。中国からの観光客に依存し、中国での生産に依存してきた日本にとって、その影響は、世界中のどの国よりも大きいのではないか。国内での感染蔓延を抑止するためには、早期に中国からの入国を抑制すべきであったと思うが、そうしなかった(今も全面的にはしていない)のには、こうした依存性があったのであろう。結果として、同じく入国規制を行わなかった韓国では感染者が急増しており、検査体制が整わずに十分な感染検査すら行えていない日本では、感染者数の実態把握すら行えていない。
「一旦感染が収まれば、V字回復になるはず」と記事はしている。どのような事態においても、収束すれば、それまでの抑制が解除され、回復することにはなる。しかし、東日本大震災に見られるように、回復したとしても、惨事の傷跡は長く残り得る。未来志向は大事だが、惨事と向き合って様々な対応を行うことは、それ以上に大事であろう。雇用や経営への影響が短期的な「一過性」で済むようには、私には思えない。

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